第71話 女神に祝福された街
清貧教会には激震が走った。
清浄の女神降臨したと思ったら、
シスター・ルシーナが本当の清浄の女神で
ラグと僕が天界の住人、
そして極めつけは主神のご宣託があったことだ。
「一応、王都の清貧教会にことの成り行きは報告しますが」
「うむ、信じてもらえんでしょうな」
信じたくとも、
教会の勢力図が激変する可能性がある。
「しかし、私達はこの目で奇跡を見た。もう引き返せまい」
「本部が信じないのなら、セリア街の清貧教会は独立してはどうですか」
「ああ!そうじゃの。シスター・ルシーナは現人神であらせられる。しかも、清浄の女神だ。御本尊がここにおられるんだから、ここが清貧教会の聖地であることは間違いがない」
もう一つ、激変していることがある。
シスター・ルシーナの奇跡の魔法で
命を救われたセリア街の住人たちだ。
彼らはこの目で奇跡を見届けている。
そして、ルシーナこそが本当の女神である、
ということが伝わり、
続々と信徒の申込みにやってきているのだ。
清貧教会はかなりマイナーな教会である。
王国的にも信者の数は多くない。
つまり、セリア街の清貧教会は教会でも
突出した信者数を獲得しつつあるのだ。
「女神様に拝謁して確信しました。清貧教会の聖地がここにあることを」
これは王都からやってきた清貧教会本部の
幹部連中の言葉だ。
シスター・ルシーナの清浄なるオーラを見た瞬間
彼らは雷に打たれたように地面にひれ伏したのだ。
あまりの神々しさに畏れおののいたのである。
そして、シスターの数々の特級神聖魔法の秘技。
そもそも、神聖魔法は人が扱える代物ではない。
成功したとしても命を落としかねないような、
非常に危険な魔法なのだ。
更に、セリア街にまきおこる教会への熱狂、
幹部たちも奇跡を信じざるを得なかったのだ。
「この教会に現人神であらせられる清浄の女神様がおわす上に、主神様のご宣託さえもたらされたという。もう、清貧教会の本部はここに移転しましょう」
「そうですな。異議はありません。どっちにせよ、信徒申込みの行列を処理するために人員を送り込む必要があります」
ただ、少し困ったことがある。
セリア街には清貧教会以外にも
宗派の違う教会がある。
その神官たちもこぞって
清貧教会に移籍を希望しているのだ。
彼ら神官達は自分の目で神の奇跡を見届けている。
しかも、他宗派とはいえ、主神は同じである。
その主神がご宣託を賜われた、というのは
信じられないような出来事なのである。
ただ、この街の外から見れば
つまり、他宗派の幹部から見れば、
とても納得できない動きではある。
今後、軋轢が深まることが容易に予想される。
もっとも、ラグなどはもう一度主神様に
ご宣託してもらえればええ、
などと罰当たりなことを考えていたのだが。
さて、領主戦により
領主の館を中心に街の3分の1が破壊された。
これにより、一時的に街の機能がストップした。
しかし、ローリーさんら街のギルドの中心者が
早急な災害救助体制を構築、
あっという間に街の機能を回復した。
何しろ、この世界は魔法の世界。
インフラとか建設関係にはめっぽう強い。
主に土魔法であっという間に整備されていくのだ。
そして、セリア街は災害救助体制が
そのまま街の行政部門に繰り上げとなった。
ギルド主体の共和制に移行したのだ。
王国側としては認めざるを得なかった。
このようなケースでは勝ったもの勝ちなのだ。
しかも、あの強大な領主を倒したのだ。
セリア街の実力を認めざるを得ない。
更に、女神が現出しているとか、
主神様のご宣託があったとか、
信じられないような出来事が報告されている。
セリア街は、アンタッチャブル。
王国はそう判断した。
街は王国から半独立した自治都市となる。
王国に対しては
兵士を出すかわりに戦費を出す形で決着。
あくまで王国の一員として留まることになる。
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