第68話 領主戦2
「(なんや、何が起きたんや)」
「領館が吹っ飛んだんだ。領主は自爆したのか?いや、待て。あれは何だ?」
吹き飛ばされた領館の跡地から、
邪な気配とともに、魔法陣が浮かび上がってきた。
「(なんや、普通の魔法陣やないで)」
「おい、なんだあの邪悪なオーラは」
魔法陣からは漆黒の霧が吹き出す。
それとともに現れたのは領主だった。
「クハハハ。どうだ、低劣・卑賤のものどもよ。今、私は暗黒の力を得た」
よく見ると、目が赤く光っている。
「(暗黒の力やと?あやつ、黄泉の世界の管理者と契約を結んだのか?)」
黄泉の世界の管理者。
悪魔と言い換えたほうが解りやすいかもしれない。
死の世界を統べるもの。
それが黄泉の世界の管理者。
「ダーク・サクリファイス!」
領主がそう唱えると、
領主を中心に黒いドームが広がっていく。
「(あかん、ワテには暗黒魔法への対応策がない。とにかく、撤退や!)」
「おーい!みんな急いで撤退しろ!巻き込まれるなよ!」
黒いドームは少しずつ半径を広げている。
そして、ドームの範囲内のものは
瘴気を撒き散らし始めた。
ラグでさえも撤退し始めたのを見て、
領館に集まった領民はパニックを起こす。
「わあああ、撤退!撤退!」
ドームは周囲を侵食しつつ、
少しずつ広がっている。
領館はセリア街の中心、少し小高い丘の上に
位置する。
そこがすっぽりと黒いドームで覆われた。
「ラグ、どうすりゃいいんだ?」
「(うーむ。暗黒魔法はな、特殊な魔法なんや。この世界には普通ありえん魔法でな。黄泉の世界の力が現出しとるわけや)」
「つまり?」
「(ドームの中はな、死の世界や)」
「逃げるしか無いってか?」
「(残念やが)」
僕たちは街のリーダーたちにその旨伝えた。
ひょっとしたら街を放棄せざるを得ないことを。
だから、逃げ出す準備を早急に。
街は大混乱に陥った。
気の早いものは着の身着のままで
街の門に殺到した。
それは全く笑えない。
何しろ、ドームから放たれる邪悪なオーラ。
見るだけで神経が耗弱しそうなものであった。
ちなみに僕たちはジタバタしてみた。
ラグはあらゆる魔法で攻撃した。
僕も車搭載の武器をドームめがけてぶっ放した。
しかし、なんの手応えもない。
むしろ、ドームに吸収され、
ドームの拡大に手を貸しているようであった。
「(あかんわ。正攻法ではドームのエネルギーにしかならへん)」
「私がなんとかします!」
そんな混乱状態の中、突然立ち上がったのが、
清貧教会のシスター・ルシーナだった。
「シスター、無理しないで」
「いえ、大丈夫です。暗黒に対しては我が教会の出番です!聖なる力で彼らを滅します!」
おお!
その言葉通り、シスターはドームに近づくと、
両手を前に出し、詠唱し始めた。
長い詠唱のあと、
「セイクリッド・クロス!」
シスターの頭上に巨大な十字が形づくられた。
そして、その十字から
「グギャ、グギャー!」
断末魔の悲鳴とともに、
ドームの結界が消滅していく。
「おのれ、誰だ、俺様の覇業を邪魔する馬鹿者は!」
「(アキラ、今や!ドームのないうちに全力で領主を攻撃や!)」
「まかせろ!」
領主にむかって、ラグは全力魔法を、
僕は車の装備のうちミニガンを全力で打ち込んだ。
「ぐおおお、おのれ、こんな下種どもの攻撃で俺様が……」
領主は攻撃を叩き込まれ、
やがて黒い霧となって霧散した。
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