第66話 L7になる

 このところ、村のメニュー凌駕プロジェクトに

 合わせて森にいくことが増えた。

 自然と魔物を討伐する機会が増えたわけで。


「ラグ、魔石が随分と溜まったぞ。投入してみるか?」


 しばらくは車に魔石を投入していなかった。

 別段深い意味はないんだけど、

 車のサイズが大きくなるのが心配だったんだ。


 だって、今のサイズは国産乗用車としては最大級。

 幅はギリギリ都内の立体駐車場に入るサイズ。

 長さはともかく、高さは車内で立って歩けるから、

 高速走行が怖い。

 ちょっとした風とかカーブで簡単に転倒しそう。


 この世界では高速道路はないし、

 道は未舗装でガタガタなことが多い。

 馬車に乗ろうもんなら、歩くような速度でも

 お尻がひどいことになる。


 でも、この車の高速安定性は並じゃない。

 多少のガタガタ道でも塗装路のように走れる。

 

 それに街なかの道路は狭いことが多い。

 馬車でさえ通れないような道が多い。


 だから、これ以上の車サイズアップは

 かなり躊躇してたんだ。



「(メニューのグレードアップは捨てがたいで)」


 ラグの言うとおりだ。

 メニューは少しずつグレードアップというかバラエティに富んできている。

 車のレベルを上げるのが楽しみなんだ。


「じゃあ、思い切って魔石を投入してみますか」


「(せやせや、足りんかったらワテのも入れるさかいにな)」


 よし!


『魔石が219個投入されました。レベルアップしますか?』


「YES!」


『パンパカパーン!レベル7になりました!乗員は車の外に出てください』


 久しぶりのお気楽ファンファーレ。

 さて、どうなるか。


『ゴゴゴ』


 低い轟音とともに、車がどんどん巨大化していく。


「いや、ちょっと待て。どこまで大きくなるんだ」


 懸念していたことが目の前で起ころうとしている。

 車は乗用車サイズを明らかに逸脱していた。


「これ、バスコンじゃん……」


 バスやマイクロバスをベースとした

 バスコンバージョン、略してバスコン。

 眼の前の車は多分ト◯タ・コ◯スターだろう。

 しかもロングボディのようだ。

 マイクロバスが元となるキャンピングカーである。

 日本産のキャンピングカーの中では最大級サイズ。


「うっわー、どうすんだよ。運転できるんかな」


 さっそく乗り込んでみる。

 車は長さ7m弱、幅2m以上、高さは約2.6m。

 広さは文句なし。


 車側面から乗り込むと

 室内は 天然素材がふんだんに使われ、

 焦げ茶とクリーム色でまとめられた

 高級感溢れる色合い。


 レイアウトは正面がソファ。

 右側がキッチン・メニュー選択機。

 その奥にトイレ兼シャワー室。

 一番奥がベッドルーム。


 収納棚も豊富だし、キャットウォークも標準装備。

 屋根に抜ける猫用扉付きのサンルーフも2箇所。


 高級化が増したのと、広さに余裕が出た以外は、

 機能については、従来通りだ。

 特にシャワー・トイレは素晴らしい。

 消臭・分解・消音付きで

 シャワーというか清浄魔法は

 さらにグレードアップしたようだ。



 問題は車の運転。


「運転してみると、そんなに大きく感じないぞ」


 これには驚いた。

 乗用車よりも少しゆったりした感覚で運転すれば、

 すぐに車体感覚を掴むことができた。

 しかも、明らかに乗り心地がいい。

 今まででもチートなサスペンション搭載で

 でこぼこ道でも比較的優雅に走行できたのけど、

 これは1枚も2枚も上手になった。

 細かなピッチもなく、

 道への接地感がないというわけでもなく、

 内装同様、高級感溢れる乗り心地になった。


「(ええやんか、乗り心地。気に入ったで)」


「うにゃ」


 猫たちも高評価のようだ。


 ただ、最小回転半径が6.5mある。

 長さも7m弱。

 当然だけど、小回りは効かない。


 街なかでは取り回しは非常にやりづらい。

 その反面、森の中は大きさを感じさせない。

 何よりも開削速度が大幅に向上した。

 密林のような森の中を時速20kmの速度、

 自転車で少し速度を出した程度でバリバリいく。


 今までの開削速度が5~10km程度だったから、

 随分とストレスから開放された。



 銃火器は電動式ガトリングガンになった。

 口径7.62mmの6本の銃身を持つ。

 いわゆるミニガンというやつだな。

 ヘリコプターの扉付近に搭載されてるとか

 シュワちゃんが脇に構えているのがこれ。


 毎分2,000 - 4,000発という単銃身機関銃を

 はるかに超える発射速度を持つ。

 かなり強力な火器だ。



 ※ここからは1日1本の投稿になります。

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