第62話 森の鶏 シルバ・プルムとチキンバーガー

「牛ですか?飼育牛もありますし、森にも魔化した牛がいますが」


 ハンバーガーといえば、

 パテはビーフ100%が定番だ。

 この世界にも牛同等の動物はいる。

 主に農耕用・牛車用に使われている。

 次に牛乳用だ。

 

 が、肉用に使われることはあまりない。

 非常に高価なのだ。

 牛1頭育てるのに餌代が馬鹿にならない。


 では、森にいる牛、魔牛は。

 これが半端なく凶暴なのだ。

 ちょっと湖畔村の人たちの手にあまる。


 やっつけることは可能なんだが、

 強力な魔法を使わざるを得ず、

 そうなると、肉まで焦げてしまったり、

 風魔法でズタズタに引き裂かれてしまう。

 ちょうどいい塩梅にはならない。



「王国で肉といえば鶏ですね」


 前世界同様、鶏は大量に飼育され、

 鶏肉・鶏卵いずれもそこそこの供給量がある。


 しかも、森にも魔素に馴染んだ鶏がいる。

 シルバ・プルムという名だ。

 王国の言葉で森の鶏というような意味である。


 前世の鶏よりも一回り大きく、

 森の生き物らしく雑食性である。

 力も強く、人を普通に襲ってくる。

 しかも群れているので、厄介な鳥だ。


 この鶏は非常に美味であることが知られている。

 鶏肉・鶏卵ともに。

 

 では、普通の鶏を魔化すれば、

 シルバ・プルムと同等の鶏が生み出せるのでは。

 そう言い出した村人がいて、

 その案にのっかることにした。

  

 人間の魔人ができるのならば、

 動物も同じことができるはずなのだから。


 結果は、かなりいい線をいく魔鶏を生み出した。

 シルバ・プルムと同等とは言えないが、

 代替品としては悪くないものができたのだ。



【チキン・バーガーの完成】


 こうして、材料が整った。

 ソースはタルタルソース。

 バンズ ハード系。

 チキンフライ。

 たっぷりレタスとトマト。


 これが湖畔村のチキンバーガーだ。

 特にバンズをハード系としたことで、

 万人受けし辛いかもしれない。


 でも、バンズは主張の少ないもののほうが

 毎日食べるパンとしては向いていると思う。

 いわゆる食事向きのパンといわれるものだ。


 日本人だと砂糖入のご飯とかお茶とか 

 非常に違和感があると思う。

 ハード系パンに慣れてくると、

 日本のパンの甘味に違和感を感じるようになる。


 ハード系のパンは小麦の風味や味を全面に出す。

 逆に言えば、素材の良し悪しや作り手の技量が

 はっきりわかるパンになる。



「めっちゃ美味しい!」


 完成したチキンバーガーをみんなに食べてもらう。


「このチキン、すっごいジューシーね!食べた瞬間にチキンの旨味とパンズの香りが口いっぱいに広がる!」


「パンズも表面はバリバリ、中はフカフカで肉汁がパンに染み込んで最高」


「これはマ◯クを完璧に越えたな」


 そう村長に僕の評価を伝えると、


「いや、それは畏れ多すぎますが……フライドポテトに続き、こんなに美味なものが我々でも作れるとは……」


「だから、いったでしょ。車のメニューは70点か80点の料理だって。たくさんの量を平均的に作んなくちゃいけないから、どうしても味は平均的なものになりがちなんだよ」


「平均ですか。随分と高い平均だとは思いますが」


「でもさ、同等以上のものが村でも作れることがわかったんだから、今後もいろいろな料理にチャレンジしていくよ!」




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