第61話 バンズ
さて、僕は米なら玄米五分づき、
小麦粉なら強力粉と全粒粉半々を使用する。
米は圧力鍋で炊飯した。
では、小麦粉は?
関西出身の僕としては粉モン大好きだ。
たこ焼き、イカ焼き、お好み焼き、手打ちうどん、
そして製パンだ。
製パンは家で毎日行うようになって、
オーブンも30リットルサイズで
最高温度が300℃、発酵機能付き、
スチーム機能付きを購入した。
ちょっと高価。
貧乏だから自炊を始めたのに本末転倒だ。
でも、効果抜群だった。
特にサイズは大切だと思う。
熱をまんべんなく行き渡らせるため。
焼きムラができにくくなるんだ。
酵母菌にも凝り始めていた。
サ◯(赤)インスタントドライイースト。
これが僕の愛用のイースト。
これは安くて発酵力が安定して強い。
使ってる人、すごく多いと思う。
でも、イーストの臭いが気になり始めたんだよ。
どうやら、イーストの保存が悪かったみたい。
だから、暇があるときは自分で酵母を作ってた。
いわゆる天然酵母だね。
サ◯の酵母も天然もののはずなんだけど。
乾燥酵母は天然酵母とは呼ばないみたいだ。
作るのはそんなに難しくない。
徹底的に熱殺菌した(これ大事)容器などの道具
レーズンまたは適当な果実
砂糖
最初に必要なのはこれだけ。
材料を容器に入れてあとは1日一回蓋をあける。
それだけで夏なら1週間程度で酵母ができる。
あと、温度は梅雨時ぐらいが一番いい。
温度は28℃ぐらい、湿気は70%ぐらい。
ただ、真冬でも時間はかかるけど発酵する。
発酵中に白カビや青カビが浮いたら失敗。
作り直し。
だから、徹底した道具の熱殺菌が必要になる。
酵母菌を増やすには、上記で作った酵母に
100%果汁を入れて再発酵させる。
常温で発酵させて、冷蔵庫で保存する。
これで2週間ぐらいは保つ。
さて、製パンに酵母を投入するには。
製パンにはいろいろなやり方があるけど、
僕がよくやるのは、ストレート製法。
材料を一度に全部入れて製パンする。
ちょっと膨らみにかけるけど、
その分、素材が生きるって言われている。
他にも中種・湯種・オートリーズ・
低温長時間発酵あたりが有名な方法だ。
低温長時間発酵は夏場によくやる方法。
夏はね、過発酵がよく起きる。
それを防ぐのにちょうどいい。
僕がたまに行うのは、宵種法。
中種法の一種で、材料の半分をこねて
一晩寝かす、という方法。
時間はかかるけど、割と時間調整がききやすい。
中種法はストレート法よりフワフワに焼き上がる。
その分、小麦の風味が薄くなるとされる。
だから、ココアとか混ぜたパンに向く。
「できました!」
【料理人】の職業を授かったジェシーが
上気した顔でパンを持ってきた。
彼女も孤児院のメンバーだ。
持ってきたのはいわゆるフランスパン。
バターや砂糖を使わないハード系のパン。
ただし、形はハンバーガーのバンズ。
見事なきつね色だ。
焼きムラがない。
少しだけ冷ましてパンをちぎって
口にいれる。
「外はパリパリ、中はふんわり。甘味もあってめちゃ美味しいぞ!」
その声でみんなの手がパンに伸びる。
「ふわふわみっちりで美味しい!」
「これ、私達が作ったのね?」
「パンが白いって新鮮」
王国では小麦の表皮(ふすま)を取らない。
まさしく、全粒粉が小麦粉となる。
その分、気を付けないとパンがパサつく。
表皮は水分吸収が遅く、水分量が必要となるため。
さらに、青臭い。
これは僕たちのようにふすま処理をしないと
逃れられない。
色も茶色い。
僕たちはある程度表皮を脱色しているため、
小麦粉が白いというかクリーム色になる。
一般的には全粒粉を焼くと茶色っぽくなる。
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