第59話 チェーン店のメニュー凌駕プロジェクト2

 フライドポテトはマ◯クを越えたものを作った。

 それは村人全員が一致する。


「我々が神の召し上がるものを作った……!」


「いや、それ以上でしょ」


「いや、それはあまりにも恐れ多い……」


「謙遜しなくても。あなた達の作ったフライドポテト、最高だよ」


「(せやで。ちょっとびっくりしたわ)」


「ラグ様に褒めていただけるなど、なんたる誉!」


「うんうん、この調子で次はハンバーガーやってみようか!」


「ハンバーガーですか?いや、随分とハードルが高そうな……」


「大丈夫、いけるって」



 まずはバンズからだ。

 バンズはハンバーガー特有のパンのことだ。

 パンズじゃない。

 バンズである。


「小麦の生産だけどさ、肥料を増産してみようと思うんだよね」


「肥料ですか」


「(せや。ワテにも肥料の知識が少しある。それとやな、【農民】である孤児おるやろ、ジョルジって名の。彼も肥料づくりに参加させてみると、ええ肥料ができるかもしれんで)」


 さっそく、ジョルジを引っ張ってきて

 肥料造りに参加させる。


 森で魔ヨモギ畑を造成すると大量の腐葉土が余る。

 腐葉土自体は肥料にはならないけど、

 土の改良にはうってつけだ。

 その腐葉土に穀物のわらや動物のフンをまぜ、

 そこに【農民】のバイオ魔法をかける。



「おおお、これはいかにも良さげな土壌ではありませんか。肥料がたっぷり含まれていそうですな」


 ジョルジがさっそく結果を出した。

 さすが、【農民】の職業を授かっただけある。  

 ジョルジはまだ15歳で農業経験がない。

 それでも、一発目のバイオ魔法で

 これほどまでの肥料を作り上げるとは。

 この土をみた村人たちもびっくりだ。


「いや、森の守護様のお導きに従っただけで、僕はたいしたことは……」


「(謙遜せんでもえーて。今後もさらなる精進を頼んまっさ)」


「へへ、了解しました!」


 ほめられてジョルジも得意げだ。

 天狗にならないよう、しっかり邁進して欲しい。



 さて、小麦増産計画の結果が見れるのは来年だ。

 それまでは街の市場で購入した小麦を使う。


「こんなにたくさん小麦を作っているのに、街から買わなきゃいけないなんて変な話ですね」


「仕方ありません。村で作っている小麦は税としてほぼ全て領主様に納める必要があります」


「肥料が効いたら、増産分は自分たちで使えるようになるからそれまでの辛抱ですね」


 実際、来年の小麦収穫では大豊作となる。

 今までは1haあたり1t程度の収穫だったのが、

 一気に3~5t程度の収穫を記録したのだ。


 まあ、それは来年の話で、

 今は目の前の街から買ってきた小麦。

 小麦に関しては僕も少し知識がある。


 僕は大学のときからずっと一人暮らし。

 しかも貧乏。

 だから、自炊を強いられてきた。

 外食は高いからね。

 

 もちろん、上手だなどというつもりはない。

 難しい料理はしないし。

 でも、こだわりがいくつかあって、

 その一つが米は玄米、パンは全粒粉を食べる、

 というものだった。


 主に栄養の観点からね。

 玄米も全粒粉も栄養が豊富で

 おかずの量を減らせると考えたんだよね。


 玄米も全粒粉もあんまり安くないから、

 なるべく安いのをネットで見つけて。

 いろいろな銘柄を試したよ。


 でね、玄米は精米機を買って5分づきにした。

 流石に普通の玄米はきつかった。


 全粒粉は普通の強力粉に混ぜて使うことにした。

 こちらはCPの問題で。

 格安強力粉と全粒粉を半々で混ぜたんだ。


 ずっと不思議だった。

 格安玄米はそこそこの値段のをいくつか見つけた。

 ところが、全粒粉はあんまり安くないんだよ。

 全粒粉は値段が高めなんだ。


 その理由がわかった気がする。

 全粒粉は手間暇がかかっているんだ。



 コメには玄米と精米がある。

 表皮(米ぬか)の部分を取り除くかの違いがある。

 そして、表皮には栄養分が詰まっており、

 玄米は健康にいいとされる。

 でも、食感や味は精米に劣るとされている。


 これが小麦にも言える。

 小麦から表皮(ふすま)を取り除くかどうか。

 取り除かないのが全粒粉だ。

 表皮に栄養が詰まっているのは米と同じ。

 食感や味が劣るのも同じ。


 食感は少しパサパサになりやすいのと、

 味は少し青臭い。


 ただ、日本の全粒粉はさほど癖が強くない。

 ふすまを加熱処理し、微粉砕しているからだ。

 そうしてふすま特有の青臭さと食感の悪さを

 補っている。

 という記事をネットで読んだことがある。


 逆に言えば、これが全粒粉が高価になる理由。

 僕はそう考えている。

 違うかもしれないけど。



 そして、僕はこの世界にきて初めて、

 小麦のふすまの青臭さに驚いたのだ。

 雑草の臭いがするのだ。

 決して『匂い』じゃない。

 ましてや『香り』でもない。


 なるほど、日本の製粉会社がふすまを処理する

 その理由が納得できた。

 この世界の全粒粉は玄米より臭い。

 少なくとも僕には。


 

 だからといって、ふすまの栄養分を捨てるのは

 非常にもったいない。

 だから、僕もふすま処理をしてみることにした。


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