7 湖畔村の躍進

第51話 孤児たちの成長1

「やったー!今日はハンバーガーの日だ!」


 教会の職員や孤児たちは

 毎日エナジーバーと野草茶を摂取している。

 そして、不定期的にハンバーガーとかのメニューも食べてもらう。


 孤児たちの一番人気はハンバーガーだ。

 それも倍ビッグマ◯クのようなパテが4枚のやつ。

 さすがはファストフード中のファストフード。

 子どもたちには味がわかりやすいのかもしれない。


 倍シリーズだと僕は倍てりやきチキンフィオレ。

 倍量サクサクチキンを甘辛てりやきソースで絡め、

 レタス倍量がはさんであるもの。


 ラグはマ◯クだと炙り醤油風 ダブル肉厚ビーフ。

 2枚重ねた厚みのある100%ビーフを、

 香ばしい炙り醤油風のソースで引き立てたもの。


 子猫たちはずっとキャットフード。

 異世界の魔物だから地球の猫とは違う、

 とわかっていても、

 なんだか気持ち悪くて人間の食べ物は与えにくい。


 でも、大人の猫、生後半年ぐらいになったら

 僕たちと同じメニューを解禁し始めている。

 毎日じゃないけどね。

 初めてマックを食べる子猫の食いつきぶりは凄い。

 涙流してんじゃないか、ってぐらい、

 ウニャウニャかぶりついている。



 で、不定期に車メニューを与えている教会職員と孤児たち。しばらくすると、変化が起こり始めた。


「(アキラ、教会の人たちな、魔力が強くなってんで)」


「ああ、それは僕も感じるよ」


 僕もラグ同様、人や魔物の魔力を感じれる。

 魔力が強くなっているのは僕や魔猫も。

 ラグでさえ、魔力の増加を感じるという。


「(村人と同じやな。魔力コントロールの訓練のあと、魔法を覚えてもらうか)」



 ということで、教会の人たちを集めて

 魔力コントロールの講義に入った。

 講師は僕である。

 ラグから授かった方法をみんなにも試してみる。


 この世界ではみんな魔法が使えるのに、

 魔力コントロールの訓練をしない。


 いや、魔導師と呼ばれる人たちはするらしい。

 しかし、方法は秘密にしてしまう。

 門外不出の技とでも思っているようだ。


 そして、庶民レベルだと魔力コントロールをする、

 という意識さえない。

 魔力を使えて当たり前だからだ。

 

 呼吸みたいなものだ。

 普通、呼吸はできて当たり前。

 呼吸の仕方にコツがあることさえ気づかない。

 庶民の魔力が低い理由の第一がここにある。


 神様扱いのラグと僕の指導。

 教会の人たちは、実に真剣に取り組んでくれた。

 そして、早いと即日、遅くとも1週間ほどで

 効果が現れた。

 どんどんと魔力が強くなっているのだ。


「ああ、なんて素晴らしい世界……!」


 あの大気に溶け込む感覚は独特だ。

 実に悠然としたうららかな気持ちになる。



 さて、魔力を強化したところで、

 魔法を覚えてもらうことに。


 庶民が魔法を使えない理由の2つ目が、

 適切な指導を受けないことだ。

 学校で勉強しないと、なかなか学力は向上しない。

 まれに独学でも大丈夫な人もいるが、

 そういうのはほんの僅かな例外であろう。

 魔法にも同じことがいえる。


 この指導はラグを通じて行う。

 ラグの言葉はすぐにみんなに馴染んだ。

 ここは僕と違う点だな。

 ラグの念話通りに魔法を詠唱すると、

 あっという間にみんなが新しい魔法を覚えたのだ。


 魔法の強さは魔力に比例する。

 そして、高度な魔法を発現できるかは知力による。

 

「中級魔法が使えた!」


 段々と、高度な技を使えるようになってきた。

 近所迷惑になるので、

 魔猫が教会の庭に結界ドームを張って、

 その中で訓練を行う。


「(アキラ、こりゃ近いうちに郊外で訓練せなあかんな)」


 魔法の規模や威力が増大するにつれ、

 結界ドームでは狭くて追いつかなくなったのだ。



 この訓練は長期にわたった。

 数カ月後に強力な中級魔法を唱える人も出てきた。

 

 特に、回復魔法士。

 今までは強めの初級回復魔法しか唱えることができなかった。


 中級回復魔法は実質的に回復魔法士の頂点に近い。

 これ以上はいかなる怪我をも瞬時に治癒する

 上級魔法士になる。

 上級魔法士は王国にも10人ほどしかいない。


 さらなる上、特級魔法士となると、

 体の欠損をも治してしまう。

 神の御業といってよい。

 このレベルだと王国にいるかどうか判然としない。


 

「俺、モンクになったぞ!」


 ある日、子供の一人が大騒ぎし始めた。

 彼は朝目が覚めたら、職業が発現していた。

 モンクは武闘派の僧侶のことだ。

 自然と少林寺拳法のような武術を身につけていく。


 僕たちの持ち込んだ食品や訓練の成果は

 魔法関係以外にも及んだのだ。

 自然と祝福を発現する子供が出てきたのだ。


「職業って、教会が授けるんじゃないの?」


 通常、祝福は12歳になって教会にいき、

 そこで祭司より祝福を授かることになっている。


 そして様々な職業、通常ならば剣士とか村人とか、

 或いは剣聖、魔導師などの特級職業を発現する。



 シスターたちもこの現象には大騒ぎだ。


「実は……教会が職業を授けるのではなく、すでに発現している職業を顕にするのが教会の職業授与なんです」


 シスターが述懐する。

 いやいや、そうだとしても教会側も困った事態だろ。

 これは秘匿しなくちゃいけない。

 この世界の教会システムが壊れてしまう。



 そうした教会側の混乱をよそに、


「騎士になったぞ」

「狩人になったぞ」


 その日から次々と子どもたちには職業が発現した。

 そして、


「回復魔法士になったぞ!」

「剣聖になったぞ!」

 

 などと上級職業を身につける者が出始めた。


「やった!商人になった!」

「オレは農民だ!」


 前述したことがあるが、

 王国においてもっとも喜ばれる職業、

 それが商人と農民だ。

 金持ちが約束されるからだ。


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