第49話 グリフィン襲来 キャンピングカーがレベル6になった

 薬をめぐって大騒ぎをしているころ、

 湖畔村の近くでは別の騒動がおこり始めていた。


 グリフィンが観測されたのである。

 それも1体ではない。

 集団でだ。


 グリフィンはグリフォンとも呼ばれる。

 鷲の翼と上半身、ライオンの下半身を持つ。

 鷲の部分は金色で、ライオンの部分は白色。

 鋭い鉤爪で牛や馬をまとめて数頭掴んで飛ぶ。

 魔狼よりも2ランクほど獰猛な魔物だ。


 強い魔物は普段、森の周辺には棲息しない。

 人目につかない森の奥地にいるのだ。

 そのような存在が人の住む場所で観測される。


「(魔狼のときにも言ったことやが、やっぱり森の奥で異変が起きとるな)」


「強い魔物が出現しているっていうやつ?」


「(うむ。それか、環境の異変で魔物が住めなくなっとるか)」


「ラグ、よく森の奥に出かけてるんでしょ?」


「(確かに狩りに行くけどな、ここんとこ魔物がおらんようになっとるのは確かや。けどな、原因を探ろういうても、森ってのは広大なんや)」


「逆にいえば、広大な森でも周辺に行かざるを得ない何かがおきてると」


「(せやな)」


「村を襲ってきたらどうしよう」


「(あほか。ワテが速攻でやっつけてやるわ)」


「いける?」


「(ナンベンもゆーとるがな。ワテは森の大賢者様やて)」


「あのさ、ラグの強さはよくわかってるんだけど、そろそろ車をバージョンアップさせたいなって」


「(強い武器がほしいか?)」


「うん。ラグだけにおんぶに抱っこってのもあれだし」


「(うーむ、せやな。質も量も大切やしな)」


「それとさ、ここんとこ猫が増えたから車が手狭になってるし、食事メニューのバリエーションが増えるかもよ」


「(うむうむ、それは大事や。よっしゃ、魔石を投入するぞ)」


 ◇


 ラグの魔石を投入して、

 キャンピングカーはレベル6に進化した。


 縦横に関しては、レベル5とあまり違わない。

 大きく違うのが高さ。


 レベル5の車はバンコンと呼ばれるタイプ。

 改造前の車の原型が保たれている。


 レベル6はキャブコンと言われている。

 これぞまさしく『キャンピングカー』。

 元の車を大きく改造して、

 運転座席の上にも居室が張り出している。


 これは高さ方向が両者では全然違うからだ。

 バンコンでは車内を中腰で移動する。

 キャブコンでは立って移動できる。

 この差は大きい。


 レイアウトは、入り口を入るとソファ。

 これはベッドにも変身する。

 

 入り口の横にはキッチン。

 もちろん、メニュー設備も鎮座している。


 奥に行くとベッド。

 常時、猫に占領されているのだけど。


 さらにリアはトイレ&シャワー。

 車内からは入れない。

 一旦外に出て後部から利用することになる。



 これはバンクベッドと呼ばれる部分だ。

 引き出しのようになっているので、

 就寝時に引っ張りだして簡単にベッドへ早変わり。


 耐熱・耐寒・耐物性も向上した。

 外気温にあまり影響されない車だった。

 今は冬だけど、エアコンなしでもさほど寒くない。

 

 下手すると暑いぐらいだ。

 だって、猫まるけになってるからね。

 子猫は常時10匹、成猫は最大10体はいる。

 だから、冷房をかけることになった。


 ああ、猫まるけでも彼らは排泄をしないし、

 抜け毛もない。

 体臭もない。

 だから、1日のうち何度か大運動会になるのと

 ご飯時になると大騒ぎになること以外は、

 まあそんなに大変じゃない。


 車の高さが伸びてキャットウォークも充実したし。

 猫たちは高いところ大好きだから。

 だから、狭い車の中でもなんとかなってる。



 武器については、いよいよ本格的なものがついた。

 12.7mm機関銃だ。

 どうみても、米軍のM2だ。

 ブローニングM2重機関銃

 1933年に信頼性や完成度の高さから21世紀に入っても世界各国で生産と配備が継続されている。おそらく銃の歴史上の最高傑作じゃないだろうか。



 さて、グリフィン。

 徒党を組んでやってきた。

 結果をいえば、瞬殺。

 ラグの魔法とM2で。


「グリフィンなる魔物は始めてみました」


「(森の最深部におるような魔物や。普通はこんな森のはずれになどやってこんはずやけどな)」


「やっぱり、森の奥ではなにか起きてるのでしょうか」


 村長さんたちも不安そうな顔をする。


「(もう疑いないと思うで。ただ、何が起きとるるかはさっぱりやけどな)」 


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