第45話 冒険者ギルドとタイアップ
「本日はお歴々の方にお越しいただきましたが、どうされましたか」
ここはセリア街の冒険者ギルド。
ギルド長の部屋に集まったのは、
ドワーフ村村長、湖畔村村長、第2薬師ギルド長
ローリーローリエ商会会長。
「少々繊細な案件をご相談致したくて」
「なるほど。じゃあ、私だけのほうがよろしいですかな」
「ですな」
人払いをしてもらう。
「これをご覧ください」
「ほう。なんの液体ですかな」
「嗅いでいただくとわかりますが……」
「ふむ……うっ、きっつい臭いですね」
「アルコールです。アルコールの度数が70%ほどあるものです」
「70%?」
「この瓶には500mlの液体が入っています。70、つまり350mlが純粋なアルコールです」
「普段飲んでいるワインやエールですと?」
「大抵は水で薄めていますから、数%といったところでしょう」
「ふうむ。ものが全然違いますが、何か特別な効能でも?」
「消毒に使うのです。例えば、このテーブル。布巾で拭いた程度では汚れが取れません。ところが、このアルコールを使えば、瞬く間に清潔なテーブルになるのです」
「その汚れとは警戒すべきものなのですか?」
「ええ。様々な病気の原因になるんですよ。それが薬師業界の最新の研究成果です」
「ほう。さすれば、傷口にも効くというわけですか?」
「傷口に関してはさらに注意が必要です。実は、傷に効くアルコール溶液も開発しました」
「薬師ギルドの回復薬よりも効果があるのでしょうか?」
「実はですね、そこが繊細と申し上げた理由です。実は私どもは薬師たちの回復薬レシピを完全に再現することに成功しました」
「なんと」
「で、私どもはその回復薬を低価格で提供することができます」
「おお!」
「しかし、回復薬をそのまま出すわけには参りません。争いがおきますから。そこで、この70%アルコールを隠れ蓑にするつもりなのです」
「それは素晴らしい!」
「特級はムリですが、初級から上級まで以下の価格で販売を予定しています」
ドワーフ産消毒薬(傷薬)の販売
初級 普通の傷薬
薬師ギルド価格1000p⇒100p
中級 重傷
薬師ギルド価格10万p ⇒1000p
上級 即座に治療
薬師ギルド価格100万p⇒1万p
1p=約10円
「本当ですか、そんな低価格で販売できるんですか」
「卸し価格はこの6掛です。上記は希望小売価格ですね」
「うーむ」
「さらにですね、今市場で噂の野草茶も提供する用意があります」
「おお、私も愛飲しています。あれは確かに元気が出ますし、簡単な病気ならすぐに治りますね」
「ええ。となりますと、私どもが雁首揃えて冒険者ギルド長に相談に参った理由もわかるというもの」
「なるほど。完全に薬師ギルドと対立するというわけですか」
「薬師ギルドの背後には有力者、王族、貴族、教会と言った支配者層が控えていることが多いです」
「確かに。しかし、廉価であることは非常に魅力的だ」
「それは怪我の多い冒険者だけではありません。薬師ギルドの欲のために、回復薬は非常に高価でした。一般庶民には縁のない薬だったんですよ。それが日常的に使うことができる」
「王国が2つに分断しますね」
「ええ。支配者層と一般市民層と」
「支配者層でも薬師に利権を持たないならば、我々に与する人も多いでしょう」
「ですな。命に関わる話ですからね」
「それとですね、この話の大元には清貧教会と森の守護様が絡んでおります」
「なんと!森の守護様のお墨付きですか!」
「お墨付きというよりも、話の発端です。そして、しっかりとしたバックアップをして頂いております」
「それは心強いですな。そこまで聞いたら話に乗らないわけにはいきませんな」
「まずは、このセリア街。確実に領主と対立します。しかし、庶民はこちら側になるでしょう。争いに発展した場合のことも視野に入れなくてはなりません」
「ふむ」
「この話を公表すれば、王国中が沸騰します。私どもは王国レベルでの増産体制を構築するつもりです。ただ、しばらくは数が揃いません。ですから、王国の冒険者ギルドへの根回しをお願いしたいのですが」
「ああ、しばらくは大変ですな」
「全ては森の守護様のお導きです」
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