第32話 セリア街に入場した2
「それでしたら薬師ギルドにも行ったほうがいいですね。あと、商人ギルドにも」
ローリーさんがそう助言してくれる。
「厳しいのですか?」
「厳しいと申しますか、各ギルドの守備範囲が結構重なっておるんですよ。あとですね、特に物を作る場合には案外ギルドが細分化されております」
「ほう?」
「薬師ギルドは細分化されておりませんが、食堂ですと、10程度のギルドに申請する必要があります」
「10もですか?加盟は義務なんですか」
「事実上の義務ですね。入らないと、まあ様々な困難が」
「ああ、妨害されると」
「まあ、そんなところです。それからですね。大きな声で言えないのですが」
「はあ」
「薬師ギルドというところはかなり厳しいギルドでして」
「そうなんですか」
「アキラ様の薬なんですけど、ものすごい効能を示しましたよね」
「ええ。僕も驚いてます」
「あれ、間違いなく薬師ギルドがくいついてきます」
「くいつく?」
「最低でもレシピを示せ、ぐらいなことは言ってきます」
「はあ?」
「公共のなんとか、とか理屈をつけてですね、普通に言ってきます。まごまごしてると、無料奉仕させられますよ」
なるほど。
野草茶と同じことがおきるわけだ。
「ですので、薬の販売はちょっと繊細なんですよ」
「では、どうすれば」
「うーん、正直申し上げれば、アキラ様の薬はあまり人の目にさらさないほうが……」
「やっぱりそうですかねえ。効きすぎますもんね」
「ええ。お金がお入用でしたら、私が個人的に購入させて頂きたいのですが」
「いえ、対価は不要ですよ。お世話になってますからね。いくつかお譲り致します」
「いや、それはいけません」
「私には討伐金とかが手に入るわけですよね。大金が必要というわけではないですから」
「いやいや、アキラ様は軽くおっしゃいますが、バランスが取れません。薬はいかほどとお考えですか?」
「うーん、1000pぐらい?」
pはペルナ。
王国の通過単位で円と似たような価値だ。
キズぐすりマ◯ロンだしね。
「はは、何をおっしゃいます。100万pは下りませんぞ」
「は?」
「あの薬の示した効果。最低でも上級回復薬ですね。上級回復薬が一つ100万pなんですよ」
「おお!」
マ◯ロンだぞ。
500円ぐらいで買えるやつだぞ。
「ですので、そのようなものをおいそれと無料で、というわけにはいかんのです」
「はあ」
その後いろいろと応酬があり、
マ◯ロンは50万pの値段がついた。
「50万pでもお得なんですがね。アキラ様、市場価格を壊してしまうと薬師ギルドが出張ってきますよ」
まあ、言わんとする事はわかる。
前世でも価格破壊者は買うほうには有り難いけど、
売る方にはたまったもんじゃない。
それとだ。
マ◯ロンとかリポ◯タンDとかありえない効能を
示している。
車の食べ物もそうだ。
地球のものが供給されるのも謎なんだけど、
たかがマ◯ロンとか思わないほうがいいかも。
それにしても、ローリーさんはまっとうな人だ。
なかなかの人格者のようで感心した。
日本でだって、無料で受け取る人、多いと思う。
無料配布すると、それが当然と思う人も出てくる。
しかも利益を優先させると思われる商人なのに。
今後は彼によく相談することにしよう。
その後、盗賊の討伐費と傷の治療費ということで
合わせて50万pほどの実入りになった。
100万pもあれば、しばらくは大丈夫だろう。
食費とか宿泊費とかゼロだしね。
ちなみに、回復薬は公示価格として、
初級回復薬 1000p
大抵の切り傷ならこれで治る。
安価なのは、庶民にも行き渡るように、
ということで王国法で決まっているから。
中級回復薬 10万p
重傷レベルの傷ならこれ。
上級回復薬 100万p
どんな怪我でも一瞬で治る。
ただ、部位の欠損とかはムリ。
特急回復薬 1000万p以上
部位の欠損を治す。
なんだそうだ。
でも、ちょっと高すぎないか?
ちなみに、1p=日本円の約十円程度の価値だ。
初級回復薬でも千p、つまり1万円程度する。
決して安いものじゃない。
ギルドの資格証明証はすぐに発行してくれた。
個人のバイオデータを読み込むもので、
指を合わせると光り輝く。
これは前世地球の文明度を遥かに越えている。
さすが、魔法世界というわけか。
あと、窓口の女性は3か所とも大変眼福だった。
美人揃いで得した気分になる。
この街の人は、地球だと東欧或いは中央アジア?
欧州とアジアの中間みたいな見た目だ。
バタ臭い日本人みたいな感じ。
僕はどちらかというと濃い顔なので、
なんとか街に埋没している。
黒目黒髪も珍しくないし。
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