第24話 野草茶・シロップ販売1

 魔ヨモギは一ヶ月ほどで収穫できる。

 お茶の作り方はさほど難しくない。


 野草を洗って数分間蒸す。

 日陰で干す。

 乾いたら、鍋で煎る。

 鍋で煎った茶葉を煮出しする。


「このお茶に、メイプルシロップを混ぜてみたんだけど」


 お茶だけでも美味しい。

 でも、良さのわかる人は味に慣れた人。

 お茶が初めての人には少し苦味が感じられる。


 緑茶でも日本人は砂糖を入れたりしない。

 でも、海外では砂糖を入れることがある。

 ほら、紅茶とかコーヒーのボトルって

 砂糖が入ってるのが普通でしょ?

 あれと同じ。


 それと普通砂糖ってあんまり健康によろしくない。

 でも、メイプルシロップは違う。

 ミネラルが豊富で抗酸化作用も強いという。


 その上に、魔素豊富な森で成長したメイプルから

 とれるシロップはエナジードリンクのような効果がある。

 飲むと元気になるんだ。

 風邪の軽い症状ならば、すぐに治る。

 頭痛、咳、微熱といった症状だ。


 傷口には初級回復役が効くんだけど、

 メイプルシロップは病気の初期症状に効くようだ。


 しかも、当然だけど甘くて美味しい。

 メイプル特有の風味も実に好ましい。


「さすが、大魔導師様のお作りになられた飲料だけありますな」


「ほんと、飲むのが止まりません」


 作ったっていうか、お茶にシロップを混ぜただけ。

 村人にも大好評だ。

 なにげに子猫たちもピチャピチャ舐めている。


 あと、ハンバーガーに合うんだ。

 それもこってりしたのに。

 僕はダブルチーズバーガーを食べつつ、

 野草茶で口をさっぱりさせる。

 いくらでも食べられそうだ。


「これなら、街に持っていっても評判になるんじゃないでしょうか」


 この村は若干の魔素が流れているために、

 商人が敬遠してやってこない。

 だから、物の売買は街に行くしかない。


「ですな。販売してみますか」


「シロップは売らないの?」


 僕が単純な疑問を挟んでみる。


「うーむ、量がないのもありますが、シロップはちょっと怖いですな」


「ええ。このような超高級品を我々のような貧村が作ったとなれば、いろいろと騒動が起きそうで」


 ああ、そうか。

 金鉱を掘り当てたようなものかもしれない。

 メイプルシロップは黄金に等しい値段がつく見込みだ。

 有象無象が群がってくる未来しか見えない。


 ◇


「ラグ様とアキラ様にご援助頂いてきたメープルシロップ入野草茶。とうとう、街で販売する運びとなりました!」


 村人全員が村の入り口に集まり、

 野草茶販売の第一陣を送り出そうとしている。

 街の市場の一角を借りて販売するのだ。


 貴重な現金をもたらすため、

 この販売への村人の期待は大変大きい。


 売り子は村長の子供であるアニタとロベルト、

 そして護衛に二人の村民が付き添うことになった。


 アニタは非常に明るく、元気がいい。

 社交性が高く、売り子には向いているだろう。


 ロベルトは真面目だがちょっと表情が固い。

 売り子というよりもガードマンポジションだな。



 この二人も含めて、この一ヶ月ほどで

 急速に村人たちの魔力・魔法力が向上した。


 村人は村に流れる魔素のせいで半魔人化しており、

 それに合わせて体力は増強している。

 

 でも、魔力はともかく魔法の実力が不足していた。

 そこへラグの指導と車のメニューのおかげもあり、

 僅か一ヶ月程度でも

 みるみるうちに魔力・魔法力を向上させていった。


「野草茶の販売と言い、もう、何から何までお世話になりっぱなしで」


「本当に、私達の大恩人です」


 と会えばくすぐったいようなお礼を述べてくれる。



 街へは馬車で向かう。

 大量の野草茶を載せて。

 一応、部屋付きの倉庫を借りている。

 そこへ野草茶を運び入れる。

 あと、警備担当の猫ちゃんもね。

 カリカリ、チュール増量でやる気マックスだ。


 市場の一角に店も借りた。


「うー、緊張が」


「兄さん、何ブルってるのよ」


「だって、村の期待を背負ってるし」


「売れるに決まってるわよ。だって、ラグ様の野草茶なのよ」


「そこは全然疑ってないっていうか、売れて当然だと思うけど、でも心配なんだよ」


「兄さんって本当に心配性よね」


 うーむ。

 兄のロベルトは妹アニタに押され気味だ。


「とにかく、明日よ!」


「お、おー」


 なんだか情けない掛け声で明日の販売を迎えることになった。


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