第25話 野草茶・シロップ販売2

 街で個人相手に商売する場合、無税だ。

 その分、市場の店の賃貸料で払うことになる。

 市場以外での売買は公式的には禁止されている。


 また、森の収穫物には税はかからない。

 森は王国の管轄外だからだ。


 だから、市場で賃貸料を越える売上はまるっと

 村の儲けになる。



「へー、湖畔村の飲み物?噂で美味しいお茶って聞いたことがあるんだけど」


 店を出した隣のおばさんが興味を持ってくれた。


「お一つどうぞ。サービスで」


「そう?じゃあ、遠慮なく……え、何、これ。甘いじゃない!すっごく美味しい!」


 その声を聞きつけ、他の店からも注文が。


「これ、甘くて美味しいだけじゃないわね。なんだか、元気が出てくるのよ」



 あっという間に市場の人たちには評判となり、

 すぐに買い物客にも伝染していった。

 数日後には噂が噂を呼び、

 午前中に売りきれるようになった。

 2週間もすると在庫が無くなってしまった。


「えー、もう無くなっちゃったの?」


 一番最初に野草茶を味わったおばさん。

 超お気に入りとなり、

 1日に何度もお茶を購入しにくる。


 でも、ある日は朝飲んで、それでおしまいだった。

 在庫がないのだ。

 販売は一人一杯と決めている。

 だから、まとめ買いもできない。


「追加、早く送って~!」

 

 アニタたちは緊急コールだ。

 村でも一生懸命増産に努力しているが、

 何分、人員も材料も不足している。



「野草茶そのものはいんだよ。割合すぐに増産に応じられるから」


 野草茶は、作付面積を増やす方向で検討している。

 現状では魔ヨモギ畑は約50m四方の面積があり、

 まだ十分な余裕がある。

 野草は一ヶ月もあれば育つからね。


「でもね、メイプルシロップはそういうわけにはいかない。今、挿し木を育てているところ。成長するには半年はかかる。しかも、収穫時期は春先だ。シロップにするのも重労働だしね」


 メイプルの木は挿し木で増える。

 森の植物は成長が非常に速い。

 それでも成木になるには最低でも半年はかかる。


 それと、メイプルシロップにするのが大変なんだ。

 1リットルの樹液からとれるシロップは25cc程度。

 

 ひたすら樹液を煮詰めるのだから、

 時間も労力もかかるし、薪の量も半端ない。


 魔導具の方向で考えてはいるんだけど、

 村人たちにとっては魔石は高額だ。

 森の魔物を討伐するのも大変。


 かといって茶葉だけとか、シロップ抜きのお茶は

 販売しづらい。

 もともと甘いお茶、で販売しているからだ。

 添加物に甘いシロップがある、

 なんてバレるのは困るのだ。


 そうでなくても、甘いお茶、ということで

 大評判なんだから。

 目ざとい人は甘さの原因を推測するかもしれない。



 でも、この評判は村人をおおいに沸き立たせた。


「あっという間に売り切れるらしいよ!」


「甘くておいしいもんね」


「元気も出るし」


 村の現金収入を支えてきたのは、小麦だった。

 重税もあり、小麦だけでは不十分で、

 村の経済は大変苦しいものであった。

 半分栄養失調のような村人が多かったぐらいだ。

 下手しなくても、冬を越せない人が出てくる。

 

 だから、野草茶の成功は村人に

 明るい未来を見させているのだ。

 

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