第22話 ガーディアン魔猫

 魔ヨモギの栽培が始まってから数日後だった。


「(アキラ、今までワテの関わってきた魔猫の一部を連れてきたで)」


 なんと20匹もの魔猫を連れてきた。

 僕の車の前で勢ぞろいしている。


「(奴ら野生種でかなり凶暴やけどな、村人には手を出さんように言ってあるから大丈夫や)」


 ほんとかよ。

 野生種らしく、どの猫も目つきが悪い。

 森の生物はどれも凶暴な奴らばかりだったし。

 それに魔猫は大きい。

 柴犬程度の大きさはある。

 体重は10kg近くありそうだ。

 足もかなり太い。


「(ワテの言う事きかんような猫はこの森にはおらんから安心せーや。それにな、みんなカリカリとかチュールに興味しんしんなんや)」


「安心できるって?」

 

 僕は疑いながらも大きなお皿をいくつか用意して、

 カリカリを投入する。

 ああ、猫たちは目がランランとしている。

 皿に目が釘付けだ。

 ヨダレたらしてるやつもいる。


「じゃあ、食べていいぞ」


「ウミャウミャウミャ!」


 大騒動だった。

 まるで漫画のように砂塵が舞ってたりする。


 なんの相談もなく突然魔猫の集団が現れて、

 村人たちも心配そうに遠巻きに眺めている。



「アキラさま、大丈夫なんでしょうか」


 村長が恐る恐る尋ねてくる。

 いや、それは僕が聞きたいよ。


「ラグがいうには、村のガードキャットになるそうです。村に防御結界を張って防衛してくれますし、各個の戦闘力はかなり高いそうです」


 物理的戦闘力に関しては、魔狼と同程度らしい。

 魔狼は武装した人間数人分に相当する。

 魔狼・魔猫ともに攻撃魔法を持たないが、

 魔法防御力が高く、アンチ結界魔法を持っている。


 ちなみに、村人は普通の人間の5割増し程度の力がある。

 魔素に慣れたために魔人化しているからだ。


 僕もそうだ。

 りんごだと簡単に握りつぶすことができるし、

 垂直跳びは1mを楽に越える。



 朝昼カリカリ、おやつチュール、晩は缶。

 魔猫には子猫と同じ食事にした。

 食事担当は村人にやってもらう。

 

 数日後には野性味をなくした魔猫が

 村のほうぼうで日向ぼっこしているようになった。

 顔つきも日に日に柔和になっていく。

 中には腹を見せて寝ているやつも。


 

 ラグが言うには魔猫は一定数以上には増えない。

 10年程度生きると子猫に生まれ変わるらしい。


 これは他の種族も同様で、途中で死ぬようなことがあっても、

 しばらくすると生まれ変わるんだという。


 僕たちは今まで数多のゴブリンとか魔狼とかを

 退治してきたんだけど、

 奴らもしばらくすると復活するということだ。


 少し安心できるのはむやみに数が増えないことか。

 理由はわからないが、魔物の数は制限されている。


 ただし、ごく稀に異常発生することがあるという。

 スタンピードというやつで、

 局地的なバランスの偏りがおこるんだと。


 そんなときの魔物は狂戦士化して大暴れする。

 ただ、数日も経たずに沈静化し、

 多くの魔物は消滅するんだという。


 この村にも対策用の地下室が掘られてある。

 スタンピードが起きた場合は、

 その地下室で数日をやり過ごす。

 村は半壊しているので再建が大変なんだけど、

 それでも人員に被害が出たことはないらしい。


「魔猫も騒動に巻き込まれて凶暴化しないのか?」


「(大丈夫や。ワテがコントロールするさかいにな。というかな、ワテの周囲で凶悪化したことは一度もあらへんで)」


 うーむ。

 ラグを信用するしかない。


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