第15話 魔法の練習3

 僕はその後ラグから他の水魔法を教えてもらった。

 機嫌よくやっていたら、そのうち気分が悪くなってきた。


「(ああ、魔力が無くなってきたんや。ちょっと休憩やな。また明日やろうか。甘いもん食べとき)」


 残念ながら、魔法の練習は今日は終わり。

 疲れたから『クッキーエスプレッソフラッペ』を

 おやつに食べたんだよ。


 コーヒードリンクベースにホイップクリームと

 クッキー、コーヒーソースをトッピングした

 シャリシャリ食感が絶妙なフラッペ。


 火照った体に冷たさが心地よい。


「あれ、気分の悪いの治ったぞ」


「(ああ、ワテゆーたやん。車のメニュー食べると魔力回復するって)」


「効果てきめんだった」


 それだけじゃない。

 僕、強くなってる気がする。

 数字に出せるわけじゃない。


 でも、例えば500mlコーラを持つ時。

 以前よりも随分と軽く感じる。

 森の樹の実をジャンプして取る時。

 ピョーンとジャンプして驚くことがある。


 そういえば、と思い僕は車の拳銃を外してみた。

 初めてこの拳銃を片手で構えた時、

 手がブルブル震えた。

 かなり重かったんだ。


 今はまるでおもちゃのように軽々と扱っている。

 弾を発射しても手がブレないし、

 手首が痛くない。



「(魔素に慣れてきたからかもしれんな。でも、普通はそない簡単に魔素には慣れんけどな)」


 魔獣は魔素を体にとりこんだ獣。

 体力が5割増しから倍以上になるという。

 そういえば、転移してきたばかりの頃は

 魔素酔していたけど、最近は全然そんなことない。


「僕って、魔人になってきたってこと?」


「(まあ、そういうことや)」


 おお、衝撃。

 いつのまにか、僕は進化?していた。


 後日、少しずつはっきりしてきたんだけど、

 車の食事には魔素を体に馴染ませる効果がある。

 つまり、普通の人を魔人にする効果がある。


 村の人たちも魔素慣れしていて、

 体力自慢していた。

 じゃあ、村人もひょっとして魔人か?


「(たぶんそやろな。森の近くに居を構えるんは、普通の人間にはできひんで)」



 その晩の食事はいつも以上に豪勢になった。

 僕は

 倍てりやきマ◯クバーガー

 倍てりやきチキンフィレオ

 倍チキチー(倍マ◯クチキン チーズ)

 ポテナゲ特大

 マ◯クシェイクストロベリー

 ホットアップルパイ


「(ぎょーさん、注文したな)」


「流石に今日はヘトヘトだよ」


「(確かに魔法使いすぎると腹減るし、回復には車のメニューもってこいや)」


 そういうラグも

 炙り醤油風 ダブル肉厚ビーフ

 炙り醤油風 ベーコントマト肉厚ビーフ

 チキンマ◯クナゲット15ピース

 マ◯クシェイクチョコレート

 マ◯クフルーリー超オ◯オクッキー

 マ◯クフロートコーラ

 を注文して


「(今晩はこのくらいでかんべんしといたるわ)」


 などと意味不明なことを言う。



 結局、その後の一ヶ月の間に

 色々な初級水魔法を発動した。

 その中で

 ウォターボール(水球)

 ウォーターランス(水槍)

 の2つを攻撃魔法として練習を重ねた。


 そして、風・土魔法も発動できるようになった。

 しかし、火魔法はなかなか覚えられなかった。


「(火魔法はな、ちょっと特殊なんや。まあ、焦らんと練習しとき)」


 でも、駄目かもしれない。

 風・水・土は結局同一の魔法のような気がする。

 それぞれ気体・液体・個体であって、

 元は同じ物質だ。

 単に与えられている熱量が違う。


 ところが、火は化学変化だ。

 劣等生だった僕の限界を迎えたかもしれない。

 イメージできないのだ。


 もっとも、火魔法ができなくても十分満足してる。

 元の世界の人なら魔法の一つでも、と思うはずだ。

 少なくとも僕はそうだった。

 これだけでも、この世界に転移した甲斐がある。


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