第13話 魔法の練習1
【魔法の練習1】
「この世界に僕の居場所を作ること」
そのためにいろいろやってみよう。
まずはこの世界に慣れること。
というか、僕の目が輝くできごとがおきた。
村人が手から水を出している!
「(アキラよ、水魔法やないか。そない不思議か?)」
ラグに言わせると、たいていの人間が水魔法を使えるという。
というか水魔法を使えて当たり前らしい。
そういや、ラグが以前言ってたよね。
「(人間でも魔法を使うやつはぎょーさんおんで)」
って。
目の当たりにすると、驚くどころじゃない。
ラグ曰く、自然と魔法が使えるようになるらしい。
水ほどじゃないけど火魔法も使える人は多い。
火魔法は見栄えがいいので人気がある。
風と土はぼちぼちらしい。
ただ、使えるといっても初歩レベルで、
水魔法なら顔を洗う程度、火はチャッカマン、
風ならそよ風、土なら小石ができる程度、
そんな感じらしい。
レベルでいうと初級の初級。
この世界では自然と魔法が使えるようになる。
いわば呼吸のように。
そして、庶民レベルだと何の疑念もなく
魔法を使っていくんだという。
だから、手から火が出ても
チャッカマン止まりで、それ以上にはならない。
みんな、そういうもんだと思っている。
中級レベルに到達している人もいる。
そういう場合も、生まれながらの才能、
と周りは捉えるらしい。
この辺の感覚も不思議だよな。
もっと魔法の威力をマシマシにって考えないのか。
僕なら火魔法ゴー!ってやりたくなるけど。
土魔法で地割れを!とかさ。
「でもさ、僕ってこの世界だととんだ劣等生ってこと?」
「(属性魔法についてはな。あのキャンピングカーなるものを所有してる時点で規格外の存在ではあるが)」
「ひょっとして、僕も修練して魔法を使えるようになるんだろうか?」
そりゃ、熱いよ。
魔法を使えるようになるなら。
ラグが魔法を使ったときは凄すぎて自分がどう、
などとは思わなかったけど、
この世界は本当に魔法が当たり前みたいだ。
だったら、僕でも。
「(あのな、アキラにも魔力は備わってんで。ただな、それを自分で感じてコントロールすることが肝心んなんや)」
「僕にも魔力ある?」
「(せや。かなり強い魔力やがな、まるでコントロールできておらん)」
「えっ、強い?そんなことわかるの?」
「(ワテは人とか魔物の魔力の強さを感じることができるんや。うーん、まずはな魔力を感じることからや。でもな、普通は魔力は自然と感じてくるもんなんや。修練とかせんでもな。大人になると遅いかもしれんが、チャレンジしてみるか?)」
「もちろん!」
で、僕はラグの指導のもと、魔法の修練をすることとなった。
まずは、魔力を感じることから始める。
誰でもが魔力を持っているという。
人間でも動物でも。
ただ、僕は転移者だ。
どうだろう、と疑問に思わなくもなかった。
実際、魔力に見当もつかない。
「(お腹の下辺りにな、温かいもの感じんか?それが魔力の大元なんや)」
下っ腹に注意を促していくと下痢したり。
そんなことを1週間ほどやってみた。
朝昼晩にそれぞれ1時間ずつ。
でも、なかなか感覚がつかめない。
「(うーん、難しそうやな。ほならな、ワテの手に触ってみ。魔力を流すから)」
僕は右手でラグの肉球あたりを握る。
「(どや?暖かいもん感じーひんか?)」
そう言われると、微かに空気が暖かくなったような。
「(せや、その感覚や。よっしゃ。休みつつ何回かやってみるで)」
その練習をまたもや1週間ほど繰り返す。
「ラグ、暖かさが僕の腕に移ってきたぞ!」
「(ええやんけ。次はワテのヘルプなしで腕を暖かくしてみ。それができたら左腕、右足、左足に感覚を移していくんや)」
そこからは加速度的に全身に暖かさを感じるようになった。
「(ほな、最後行くで。下っ腹を暖かくするんや)」
「おおお、わかるぞ」
「(よっしゃ、感覚を掴んだら、次はその温かいものを全身に駆け巡らせるんや。それこそ、指の先とかにな)」
これが魔力のコントロールなんだと。
まだ魔法は使えないけど、副次的に肩こりとか
目の疲れが癒やされるようになった。
「ラグ、体中が暖かくなってなんだか体が周囲に溶け込むような感じなんだけど」
「(ああ、それが魔力コントロールの最終段階や。その感覚を練習すれば、大気の魔素を取り込めるようになるで)」
この訓練も数日続けた。
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