第12話 村発見3
泊まっていけ、という村人の申し出を断り、
僕たちは数日間、村の郊外に留まることにした。
子猫の面倒もあるしね。
それと、長時間車の外に出るのは怖い。
その数日間でこの世界のことを村人から学ぶことにした。
村人は気さくで素朴な人ばかりだ。
話していてホッとするっていうか。
この村は王国の一角らしい。
王国の名前はフローレンス。
王国内の伯爵様の統治する領にあるんだと。
村の名前は『湖畔村』だそうだ。
この世界は文明の発達が日本ほどじゃない。
よくわかんないけど、産業革命よりもずっと前だ。
中世後期ぐらいなのかな?
転移前の世界の歴史に当てはめて適当に推測する。
村に至ってはほぼ完全自給自足みたいだ。
自分の土地、という感覚がないみたいで、
みんなで耕作してみんなで収穫して、みたいな。
そんなんでよく揉め事がおきないな、と思うけど、
自分の土地があったらあったで揉め事はおきる。
日本の農村でも難しいっていうよね。
村民と接していて感じるのは、やけに体力があるな、ということ。
実際、村民は体力自慢が多いという。
「私どもの能力は王国随一なんですわ」
と村長さんが自慢している。
これは後ほどわかるんだけど、
実際、村民は体力が高かった。
村は森に近接しており、
村人たちは日常的に森に入り込む。
浅いところ限定だけどね。
体が魔素に慣れているせいだ、
とラグは推測している。
それはよくわかる。
僕も一ヶ月ぐらいで魔素に馴染んできたんだけど、
体力が増してきているのを実感する。
体力自慢はいいんだけど、貧窮してるのが明らか。
村の家はさほど貧相ではない。
周りは木に囲まれているし、村人も体力自慢だというし。
でも、ガリガリな人が多い。
顔色の優れない人も多い。
一目で栄養状態が悪そうに見える。
僕の車はほぼ無限に食べ物を作り出す。
村人に配ろうか、と悩む。
ケチっぽいと思われるかもしれないけど、
無料ってのはあんまり良くないと思う。
こんな車に乗ってる僕が言うのもなんだけど。
喜ばれるのは最初だけで、
続けてると依存心ができてしまいがちだ。
でもね、村人の状態はちょっとまずいように見えた。
だから、しばらくエナジーバーを配ることにした。
1日1本。
それだけでも、顔色が良くなってきた。
特別体調の悪そうな人にはハンバーガー、
或いはリポ◯タンDだ。
「ありがとうございます!」
「神々のお召し物……」
などと祈りを捧げつつ食べている。
村人の僕とラグへの敬意は天元突破してる。
やめて欲しいとは思うけど、
仕方がないこととして受け入れている。
命の恩人に近いものがあるからね。
実際、喜んでいる顔をみると嬉しいし。
それにしても、ようやく森を脱出できた。
森の外には地球人と変わらない人が住んでいた。
住民もいかにも善人って感じだ。
こちらに転移してきてから、ずっと緊張してきた。
ようやく体から力が抜けていくのがわかる。
猫たちがいるとはいえ、
ずっと暗い森に囲まれての生活だったから。
僕の次の目標は。
「この世界に僕の居場所を作ることかなあ」
いつまでもキャンプ生活はできない。
いや、キャンプはたまにするから楽しいんだ。
キャンプが生活になっても楽しくない。
それはここ一ヶ月の森での生活で実感している。
ラグたちがいたから耐えることができた。
一人ぼっちだったらどうなってただろうか。
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