第十一話 村上(二)

 黒塀通りなる小径を行く。狭い路地の両側がまさしく黒塀か、そうでなければ黒い板壁の家屋。しかも鍵状に曲がっているから、左右両壁の消失点も黒い壁でどん付きとなるわけだ。

 なるほど。これはたしかに風情がある。地面がアスファルトなことを除けば、画角によっては江戸期と言われても否定できないかもしれない。

 まあそれは言い過ぎだが。


 トイレを借りに寄った観光案内所が、また秀逸。おそらくは古民家の保存管理委託の条件で案内拠点を兼ねているのだろうが、明治期の造り酒屋という建築がとても見応えがあった。あまり客足がなかったと見えて、小一時間の暇を持て余した僕などは格好の餌食、もといお客さんだったのだろう。

 帰り際も、お土産とばかりに幾つかの資料を押し付けられた。いや、有り難くいただいた。


 近隣に温泉もあるようだし、面白いかもしれないバーもあった。

 村上よいとこ、一度はおいで。

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