第139話 会遇
リア、トリシア、モードの三人と会った後、再び酒場に戻ってジーニアとアオイと合流。
それから夜中まで飲み明かした。
そして、泥酔したアオイを家まで連れて帰った翌日。
疲れはほとんど取れていないが、今日からいつも通り依頼をこなさないといけない。
まだ寝ていたい気持ちを必死に我慢し、リビングに向かうと……既に起きていたグリーとリア、それからトリシアの三人がキッチンに立っていた。
リア達にはグリーとアンのことは伝えてあるが、こうしていきなり会っているところを見ると、何だか俺の方が緊張してしまう。
内心はそわそわしつつも、態度には出さずに三人に挨拶をする。
「おはよう。リアとトリシアはグリーと顔を合わせたんだな」
「グレアム様、おはようございます。私とリアで朝食を作ろうと思ってリビングに来たところ、既にグリーさんが料理を作っていました」
「あっ、それは言わないで欲しかった……かも」
「早速働こうと思ってくれたのか? 俺は嬉しいし、別に隠すようなことじゃないだろ」
「いや、別に隠そうとした訳じゃない!」
グリーは顔を下に向け、恥ずかしそうにしている。
俺はそんなグリーを見てほっこりしていると、リアがキッチンから離れて足に抱きついてきた。
「グレアム様、おはようございます! 朝食を作ってるから待っててね!」
「ああ。楽しみに待ってる」
頭を撫でてから、俺は言われた通りリビングで待つことにした。
キッチンから聞こえてくるのは、意外にも仲良さそうな会話であり、俺にはツンケンしているグリーも二人に対しては下手に対応している感じがある。
「グレアム様、できた! この卵焼きとベーコンは私が焼いたの! それで、そのフレンチトーストはグリーが作った!」
「両方とも美味しそうだな。グリーも料理ができるんだな」
「お父さんが料理人だったから、少し教わっていたのと……レシピノートを見て作った」
「グリーさんのお父様のレシピノートは凄いですよ。少し見させて頂いたのですが、様々な料理のレシピがビッシリと書かれていました」
「へー、グリーとリアのために残しておいてくれたんだろうな」
グリーとアンのお父さんが料理人というのは初めて知った。
やけに美味しそうな匂いがしているし、レシピ通りに作ったのであれば確実に美味しいだろう。
「そして、コーヒーは私が淹れさせてもらいました。豆は酒場の店主さんから頂いたものですので、きっと美味しいと思います」
「三人とも、朝から作ってくれてありがとう。みんなの分もあるなら一緒に食べよう」
「いいなら俺も食べたい」
「わーい! 私、グレアム様の横に座――」
「駄目です。グレアム様が優しいといっても、今日からは正式に雇い主なのですから。グレアム様が食べ終わるまでは食べてはいけません」
一目散に席に着こうとしていたグリーとリアが、トリシアに軽く説教されてしまった。
世間一般的にはそれが常識なのだろうが、俺としては一緒に食べたい。
一人で食べる料理よりも、みんなで食べる料理の方が美味しいしな。
「気遣いはありがたいが、俺がみんなと一緒に食べたいんだ。だから、ご飯は一緒に食べてほしい」
「トリシアは固いんだよ! グレアム様が良いと言っているんだから、私は一緒に食べる!」
「俺も食べたい……かも。せっかく作った料理が冷めちゃうし」
「むむ……。グレアム様がいいと仰るならいい……のでしょうか?」
「ああ、トリシアも一緒に食べよう。それと、モードとアン、それからアオイはまだ寝ているのか?」
どうせならみんなで食べたいし、ここにいない二人が気になってしまった。
「モードとアンさんは一緒にお風呂に入ってます。いつ出てくるのか分からないので、待たずに食べてしまっていいと思いますよ。それからアオイ様は二階で寝ております。こちらも起きる気配がありませんでしたので、気になさらなくて大丈夫かと」
「なら、アオイは放って置いていいとして……モードとアンが一緒にお風呂? 昨日の今日でそんなに仲良くなったのか?」
「なんか、モードがアンのことを気に入ったみたい! 可愛いって言ってた!」
「仲良くなってるようならいいんだが、アンの方は大丈夫なのか?」
「多分、大丈夫。さっき嬉しそうにしていたし」
そういうことなら放っておいてもいいのか。
仲良くしてくれるのはありがたいからな。
ただ、モードというのは意外だったかもしれない。
クールなイメージが強く、子供は嫌い――なんて言ってもおかしくない雰囲気があるからな。
「そういうことですので、食べるなら待たずに食べましょう。グリーさんお手製のフレンチトーストも冷めてしまいますし」
「確かにそうだな。ここにいるみんなだけで先に頂いてしまおう」
「わーい! 楽しみ!」
リアは俺の隣に腰掛け、トリシアもなに食わぬ顔で俺の隣に座ってきた。
グリーは少し離れた席に着いたのが、なんとなく性格を現しているようで面白い。
それから食前の挨拶を済ませ、早速フレンチトーストを頂く。
元料理人の腕は間違いなかったようで、甘さのバランスが非常に良く、食べる手が止まらない。
それから卵焼きとベーコンの相性も意外に合っていて、甘いものとしょっぱいもののバランスが良い。
そして、トリシアが淹れてくれたコーヒーも美味しく、三人が協力して作ってくれたということも加味されて最高の朝食だ。
会話も弾み、団らんを楽しみながら至高の一時を過ごすことができた。
食べ終わってから、お風呂から出てきたモードとアンからは先に食べてズルいと軽く怒られてしまったが……その怒られたことも含めて、俺は幸せだと強く感じた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます