第118話 懐かしの街


 サリースと別れた後、出立に備えて早めに宿に戻って就寝。

 そして、予想していたよりも長く滞在してしまっていた王都を離れる日の朝を迎えた。


「うー! ようやくビオダスダールに帰ることができるんだね! 王都に来る前は、ビオダスダールがこんなに恋しくなるとは思ってなかった!」

「それはみんな同じだろうな。俺もビオダスダールに戻りたいってなると思ってなかった」

「私もですね! 恋しくなるほどビオダスダールに住んでいた訳ではないのですが、やはりそれだけ王都が都会過ぎたってことでしょうかね?」

「それもあるだろうし、王都で色々とありすぎたってのもあると思う」


 三人で王都の街並みを見ながらそんな感想を言い合っていると、ギルド長と共に少し遅れて宿から出てきたのはリア、トリシア、モードの三人。

 三人は久しぶりに宿から出たからか、日の眩しさに目を細めている。


「前々から伝えていたが、ここからは長旅になる。三人とも大丈夫か?」

「大丈夫だよ! グレアム様がいれば何も怖くないから!」

「私とモードも大丈夫です。改めてですが……私達を救ってくださり本当にありがとうございます」

「お礼は散々聞いたから大丈夫だ。それより、きっちりとビオダスダールでは働いてもらうためにも、三人を無事にビオダスダールに着くことが重要。だから、何か体調に変化とかがあればすぐに言ってくれ」

「分かりました。ご迷惑をお掛けしないためにもすぐにご報告させて頂きます」


 奴隷という立場もあり、遠慮してしまう三人だが、これで何か少しでも異変があったら言ってくれるはず。

 本当であれば、奴隷ではなく仲間として迎え入れたいところだが、三人の境遇を考えるとそれはまだ難しく、ゆっくりと心の壁をなくしていくつもり。


 とりあえず……これでいつでも出立することができる。

 本当ならば交流戦を行った冒険者や、悪魔に操られていたグアンザと話したかったところだが、時間がないのが残念。


 特にグアンザとは色々と聞きたいこともあったが、サリースの話によればまだ目を覚ましていないらしい。

 死んではいないようだからいずれ目を覚ますだろうが、流石に目を覚ますまで待つことはできないからな。


 落ち着いたら挨拶に行かせると言ってくれていたし、話を聞くのはその時まで気長に待つしかない。

 僅かな後悔を残しつつも、俺達はサリースの手配してくれた馬車に乗り込み、王都を後にしたのだった。



 途中で街を経由しつつ、馬車に揺れること約二日。

 馬車の中でリア、トリシア、モードの話を聞いていたから退屈はしなかったが、座り続けるのは意外と辛い。

 流石にそろそろ着いてくれと願っていると、経由地から卸者を行ってくれているギルド長が大きな声を発した。


「グレアムさん、ビオダスダールが見えてきたぞ」

「やったー! ようやく着いたー!」

「休憩を多く挟んだからか、行きよりも長く感じたな。ただ、みんな無事に戻ってこられたのは良かった」

「ですね! 早く店主のカイラさんに戻ってきたことを伝えたいです」


 ギルド長からの吉報を受けて盛り上がっていると、入門のための手続きも終わったようで街の中へと馬車は進んでいった。


「もう降りて大丈夫だぞ。長旅、本当にご苦労様」


 ギルド長の許可が出たため、俺達は馬車を降りた。

 もはや懐かしいしを覚えるビオダスダールの街並みが広がっており、伸びをしながら全身で帰ってきたことを実感する。

 王都に比べると人の数も賑やかさも奇抜さもないのだが、辺境育ちの俺にとってはこれぐらいの方が安心するんだよな。


「やっぱり王都と比べると田舎だね! そこがいいんだけどさ!」

「そんなに長い期間じゃないのに懐かしく思えますね!」


 懐かしさに浸っているジーニアとアオイとは違い、かなり警戒した様子で馬車から降りたのはリア達三人。

 三人の生い立ちを馬車の中で聞いた限り、警戒するのも無理はない。


「ここが私達がこれから住む街なのですね」

「ちょ、ちょっとだけ怖い……」

「何かあっても俺が守るから大丈夫だし、王都に比べたら治安だって良い。俺を信じられるかの問題になってくるが、三人の安全は俺が保証する」

「グレアム様を信じる! リアのことを守ってね? その分、頑張って働くから!」

「私もグレアム様だけは信じることができます。どうか何卒……よろしくお願い致します」

「私はグレアム様になら裏切られてもいい。この命は助けてもらったもようなものだから」

「何度も言うが俺は裏切らないし、三人には絶対に幸せに暮らしてもらう」


 俺が三人の目を見ながらそう断言すると、安心したように頷きながら笑ってくれた。

 ようやく自然に笑えるようになった三人からまた笑顔が奪われぬよう、俺が全力で守らないといけない。


 今から酒場にいき、ビオダスダールに戻ってきたことをしっぽりと祝いたいところだが、まずは三人の寝床の手配からだな。

 それから孤児院の件を進めていき、早急に働く場所も与えたい。

 戻ったばかりだが、俺はこれからのことを思考しつつ……新しいビオダスダールの生活に胸を躍らせたのだった。




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お読み頂きありがとうございます。

第118話 懐かしの街 にて第三章が終了致しました。


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