第114話 小恥ずかしい出迎え
大量の魔物の死体の中を歩きながら、サリース達が待っている高台のところへと向かうと、全員が大きく手を振って出迎えてくれている。
この光景を見て、俺は何となくフーロ村のことを思い出しつつ、少し恥ずかしさを覚えながらもサリースに声を掛けた。
「無事に魔王軍を壊滅してきた。他の反応ももうないし、恐らくこれで全て倒し切ったと思う」
「グレアム……! 本当にありがとう! 君たちは王都を救った英雄だ!」
「いやいや! 凄いのはグレアムさんだけで、私達は後ろで見ていただけです!」
「いや、三人共に凄かった! 千を超える魔物の軍が襲ってきたと聞いた時、私はこちらも千人近い被害が出ると予測をしていた。それが……死者がゼロどころか怪我人すらいない! 三人には一生かけて詫びなければならない!」
興奮と申し訳なさが入り乱れているようで、変な感情になっている様子のサリース。
大した魔物がいなかったため、俺はそこまで重大には考えていなかったし、実際簡単に倒すことができたからな。
ここまでお礼を言われることではないと思ってしまうが、ここで謙遜したところで場を白けさせるだけだろうし素直に受け取ろう。
「そんな重く捉えなくていい。サリースには王都を案内してもらったし、待遇も良くしてもらったしな。どうしてもお礼がしたいっていうなら……俺達が何か困った時に助けてくれ」
「それはもちろん助けさせてもらう! それ以外にも色々と――」
「それ以外は本当にいらないぞ。この騒動が起こる前にアイテムもくれるってことだったし、今回のはそのお礼ってことにしておいてくれ」
「…………グレアムは本当に英雄だな」
「俺はそんな大層な人間じゃない。ただの田舎から出てきたばかりのおっさんだ」
俺のその発言に対し、サリースの後ろで話を聞いている冒険者達から感嘆の声が上がり、俺は更に恥ずかしくなってくる。
謙遜したとかではなく、人なりの欲だってあるし、俺は本当に周りよりも少し強いだけのおっさん。
フーロ村のみんなも英雄視してくれていたが、俺がたまたま強かっただけで今回のように全員が戦ってくれていた。
俺の中では同一であり、たまたま俺がより多くの魔物を倒しただけって話だ。
そのためこの空気が恥ずかしくなり、話を変えるべくグアンザの話をすることにした。
「そういえばだが、魔王軍をグアンザが率いていたのは見えていたか?」
「――はぁ? ぐ、グアンザが……魔王軍を!? す、すまない。見えていなかったが……それは本当——」
そこまで言葉を発したところで、気絶したグアンザが板に乗せられていることに気づいた様子のサリース。
板を引っ張っていたジーニアが前へと出て、気絶したまま動かないグアンザをサリースの前に持ってきた。
「ほ、本当にグアンザじゃないか……! ギルド長なのに、ま、魔王軍に寝返っていたというのか……?」
「いや、正確には操られていたってのが正しい。グアンザを操っていた悪魔が魔王軍を指揮していて、俺はその指揮していた悪魔を倒してきたって感じだ」
「そ、そうか……。裏切っていなかったのは良かったが、まさかギルド長であるグアンザが狙われていたとは……。とにかく早急に調べないといけない! グアンザにも起きてほしいところだが――」
「無理だろうな。死んではいないが、目覚めるには時間がかかると思う。顔に水をかけたりは試したが一向に目覚める気配がなかったからな」
「そうか……。何から何まですまない。そして、グアンザを殺さずに救ってくれてありがとう」
またしても深々と頭を下げてきたサリース。
本当にギルド長というのは大変な仕事なんだと、サリースやギルド長を見て強く思う。
「サリースが謝ることじゃない。実際にグアンザは悪魔と何らかの取引をしていたようだし、悪いのは悪魔と取引したグアンザと攻めてきた悪魔だ」
「裏切った訳ではないとはいえ悪魔と取引を……。グアンザからは詳しい話を聞かないといけないな」
「そうしてくれると助かる。それで、この後はどうするんだ? 流石に疲れたから、俺達はすぐにでも王都に戻りたいと思っているんだが……何かやることがあるなら手伝わせてもらう」
「いや、グレアム達はもう王都に戻ってくれて構わない。後処理は私達だけでできるし、もうしばらくしたら王都からの援軍もくるからな。人手は確実に足りるだろうから大丈夫だ」
「そうか。それなら俺達は一足先に戻らせてもらう」
「ああ、改めて本当にありがとう! この恩は一生忘れない!」
もう何度目か分からないお礼を伝えてきたサリースに片手を上げて答え、俺達は先に王都に戻ることにした。
ジーニアもアオイもくたくたのようだし、数日間は王都で休んでからビオダスダールには帰ることになるだろう。
王都で待たせているリア、トリシア、モードも心配だし、とりあえず早めに王都へ戻ろうか。
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