第111話 災害
大量の魔物がまとまって襲ってきているが、この魔王軍を率いている正体が分かった以上は苦戦はしないだろう。
いくら数を集めようと、所詮は中の下の魔物しかいないからな。
悪魔は厄介だが、見た限りでは上級悪魔って感じでもなかったし、契約のせいでグアンザの体から出られないことも聞けた。
そのことから魔力は大量に残す必要がなくなったため、この目の前にいる二百近い魔物の掃討に魔法を使うことができる。
「グレアムさん、どうやって戦うのですか? 私もアオイちゃんもサポートならできますので指示をお願いします!」
「魔法で一気に仕留めるから――二人は少し距離を取って離れていてくれ。それで魔法を通り抜け来た魔物の対処をお願いしたい」
「グレアムが仕留めきれなかった魔物を倒せばいいんだね! 分かった。任せておいて!」
「何匹抜けてこようが確実に仕留めます!」
二人の頼もしい言葉を聞き、俺は一つ頷いてから魔方陣を展開する。
魔法陣は魔法の威力を増大させるものであり、一定時間その場に留まって魔法を唱える場合には有効なもの。
怪しげに光輝く魔方陣のど真ん中に立ち、俺は大量の魔力を手に集めていく。
唱える魔法は氷属性魔法。
重力魔法でも良かったのだが、より広範囲の魔物を仕留めるには氷属性魔法が最適。
シルバーゴーレム相手に使用した魔法の改良版である――。
「【
平原が一気に凍りついていき、足のついている魔物は動きを止めた。
ただ、まだ足が凍りついただけであり、ダメージとしてはないに等しいため涼しい空気が流れるだけで静か。
先頭に立っていたリザードマンが、首を傾げながら氷を引き剥がして一歩踏み込んだ瞬間――離れていても凍えるような冷気が一気に平原を包み込んだ。
足を氷づけにされていた魔物は一匹残らず氷塊となっており、奥にいた魔物も冷気ダメージで半数近くが倒れている。
ジーニアとアオイには極力被害がないように魔法を使用したのだが、二人は歯をガタガタと鳴らしながら震えていた。
これは……少しだけ威力が強すぎたかもしれない。
「び、びっくりしました。さ、寒すぎます!」
「きゅ、急に冷気が襲ってきたから敵の攻撃かと思った! つ、使うなら最初に言っておいて! 本気で気絶するかと思った!」
二人へのダメージを相当だったようで、後ろから二人の注意をする声が聞こえてきた。
魔方陣を使うなら、【
「すまん、使う魔法の選択を間違えた。強力な魔法は控えるからもう大丈夫だ」
「目の前にいた魔物全てが凍り付けになって死んでいますもんね……!」
「とんでもなさすぎるでしょ! 魔法を抜けてきた魔物がいたら的な話をしていたけど、そんな魔物絶対にいないから!」
氷属性に耐性があるものや、炎属性の攻撃を行えるものは耐えてくるかと思ったんだが……警戒しすぎたか。
一瞬で半数以上、さっきまででいえば一つの軍が壊滅したこともあり、まだ息のある奥にいる魔物が動く気配を見せない。
せっかく魔方陣の用意したのだが、この場に留まることはなさそうだな。
魔方陣をかき消してから、ジーニアとアオイに合図を出して先へと進む。
足元が凍り付いていて歩きにくい中、氷塊となった魔物を横目に進んでいくと、阿鼻叫喚となっている魔物達が見えてきた。
一瞬でやられたことによる恐怖で動けないでいるのかと思っていたが、どうやら冷気ダメージが大きかったらしい。
まだ息のあるもの魔物でも動けない個体が大半であり、無事で済んでいるのは二百匹の内の一割ほど。
そして、その動ける個体の中の半数以上は戦意喪失状態であり、実質的に一発の魔法で二百近い魔物を壊滅させることに成功していたようだ。
「ボッコボコのぼっろぼろ! 魔法一つでこんなことになるものなの!?」
「絶対にグレアムさんが特別なんですよ! 襲ってくる魔物が消えましたし、後はグアンザさんにとりついている悪魔だけでしょうか?」
「多分そうだと思うが、まだ何か奥の手を隠している可能性も――」
俺がそこまで言いかけたタイミングで、先ほどと同じような黒い煙が現れ、その黒い煙からグアンザが出てきた。
呆れたような表情であり、両手を上げた状態で姿を表した。
「いやぁー……。さすがにお手上げですね。まさかあの別れからすぐに会うことになるとは思ってもいませんでした」
降参とも取れる言葉とポーズだが、殺気に満ちている。
この状況でもまだ諦めている様子はなく、まだ勝つつもりでいるようだ。
「降参って感じではなさそうだな。まだ勝つ算段があるのか?」
「ええ。集めた魔物達は所詮、烏合の衆。想定以上に強いですが――私には勝てませんよ」
「大した自信だな。俺も一切負ける気がしない」
グアンザの顔と体でそう宣言されても、いまいちピンと来ないんだよな。
ただ、相手は悪魔であることは間違いない。
負けることはないと思うが……気を抜かずに全力で叩きのめすとしよう。
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