第73話 王都の冒険者ギルド
その後ギルド長の紹介で軽く街を巡ったあと、やってきたのは今回の目的の場所である冒険者ギルド。
王都の冒険者ギルドだけあって大きさが半端ではなく、 ビオダスダールの三倍は大きい建物となっている。
「うわー……。冒険者ギルドも規格外の大きさですね! 冒険者も強そうに見せます!」
「実際に強い冒険者が多いと思うぞ。ビオダスダールにはAランク冒険者が一組しかいないが、王都には数えきれないくらいのAランク冒険者がいる。Sランク冒険者も十組以上存在していて、更に最高ランクであるSSランク冒険者パーティもいるからな」
「ギルド長はそのことを煽られて、俺の名前を出したんだっけか?」
「それは違う! 将来有望な冒険者がいないか尋ねられ、グレアムさんの名前を出したところを馬鹿にされ……ついカッとなって言い返してしまったんだ」
「私はギルド長さんの気持ちが分かりますよ! 冒険者ギルドでグレアムさんが馬鹿にされていた時、何度ぶん殴ってやろうと思ったか分かりませんから!」
「俺も本当に気がついたら殺しかけていた。グレアムさんの迷惑にならないようにと頭では分かっていたんだがな」
ギルド長もジーニアも血の気の多すぎる。
俺なんか最近村から出ただけのただのおっさんなんだし、好きに言わせておけばいいのにな。
俺のために怒ってくれるのは嬉しくもあるが、トラブルになって危険なことになるぐらいなら大人しくしてほしいというのが俺の願い。
「俺は馬鹿にされるぐらいなら気にしないから、二人も怒らないでいいぞ。ビオダスダールで馬鹿にされることには慣れているしな」
「グレアムさんが寛容な性格だということも理解はしているんだが……本気で尊敬しているからこそ制御が難しい」
「つい怒っちゃうならしょうがないと思うけど! グレアムもジーニアが馬鹿にされていたら怒るでしょ?」
「それは…………怒るかもしれない」
「でしょ? 馬鹿にしてきた奴が悪いんだし、怒るのはしょうがない!」
言われてみればそうなのだが、俺なんかのために怒らないでくれという気持ちはやはり強いんだよな。
「俺が言えたことではないが……各々トラブルを起こさないように注意するってことでいいだろう。馬鹿にされても軽く注意をするに留める――でどうだ?」
「ああ。俺はそれがベストだと思う」
「というか、そんなに馬鹿にされるの?」
「あまり自ら言いたくはないんだが、確実に馬鹿にされる。特にグアンザって奴とシロ爺ってやつはボロクソに言ってくると思う」
「その二人は冒険者なのか?」
「いや、俺と同じギルド長だ。ギルド長は糞な性格な奴ばかりだから、くれぐれもトラブルにならないよう注意してくれ」
ギルド長は二人のことを改めて思い出したのか、あからさまに表情を歪めた。
どんな人物か分からないが、あまり関わらないようにしたいな。
冒険者ギルド前でそんな会話をしてから、いよいよ冒険者ギルドの中に入る。
中も流石は王都の冒険者ギルドであり、受付の数からしてビオダスダールとは格が違う。
奥には酒場のようなものがあり、手前には超巨大な依頼掲示板。
無駄に威張っている低ランク冒険者も少ないようで、非常に治安が良く見えるな。
「中も広いですね! 奥に酒場までありますよ!」
「あの酒場はパーティを組むためにある酒場だ。ギルドの方で仲介をしていて、あの酒場で話をして気が合えばパーティを組むって流れだな」
「ほー、それは良いシステムだ。俺も冒険者ギルドでジーニアを紹介してくれて、色々あったが組むことになったからな。仲介システムにはかなり感謝している」
「うぅ……。あの時のことはあまり思い出したくないのですが、そのお陰でこうやってグレアムさんと組めているんですもんね」
「二人は冒険者ギルドで紹介されてパーティを組んでいたのか。それは初耳だ」
「今も世話になっているし、受付嬢さん様様だ。こういうことを言っていいのか分からないが、受付嬢さんにはしっかりと良い待遇をしてあげてほしい」
「その話を聞いたからには、その受付嬢の待遇はしっかりと上げさせてもらう」
おー、言ってみるもんだな。
散々世話になっているし、これで少しでも待遇が良くなってくれれば俺も嬉しい。
冒険者ギルドを一通り見ながらそんな会話をしつつ、いよいよギルド長室へと向かう。
ギルド長が王都のギルド職員と話を行い、すんなりとバックルームへと通してくれた。
裏側も非常に手の込んだ造りになっており、階段を上がって三階へと向かう。
二階は様々な会議室と、Sランクの冒険者専用の階層になっているそうで、実力のある冒険者にはしっかり好待遇のようだ。
そして三階なのだが、王都にすら一組しかないSSランク冒険者パーティ専用の部屋と、この冒険者ギルドで一番偉い冒険者ギルド長の部屋のみ。
ちなみに王都のギルド長は元Sランク冒険者で、冒険者としても一流。
ギルド長になってからも過去に例を見ないほど、王都の冒険者ギルドを盛り上げているらしく、今じゃ戦力を抱え込み過ぎていて、王都のお偉いさんも頭が上がらない状態となっているらしい。
ギルド長はかなり苦手にしているようだが、俺は会うのが非常に楽しみ。
やけに豪華に造られているギルド長室前に立ち、扉の向こうから返事があったのを確認してから――俺達はギルド長室に入った。
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