第68話 報告会
旧廃道の奥まで辿り着いたのだが、いつの間にかに立派な家が建てられていた。
ベイン曰く、自分の下僕に建てさせたとのことらしい。
「ささ、お座りください」
「ほー、内装もしっかりしている。たった一週間でこんな家を建ててしまうなんて凄いな」
「アンデッドは不眠不休で働けますし、グレアム様のお陰で魔力が大幅に増幅しましたので、より強力なアンデッドを生み出すことができるようになりました。これぐらいの作業なら一週間で行えますよ」
アンデッドを生み出すということは……。
横に侍らせていたゴーストウィザードとかは、ベインが作成したアンデッドだったのか。
「アンデッドって便利なんだな」
「ええ、とても便利です。不眠不休で働けて食事もいらない。グレアム様も人手が欲しい時は遠慮なく私に言ってください。私が作成したアンデッドをいつでもお貸し致しますので!」
孤児院を建ててもらったり、孤児院の事務員として働いてもらうことも一瞬過ったのだが、街の中にアンデッドを入れることはできないから無理だろうな。
それにアンデッドの魔物が働く孤児院とか、完全にホラーハウスでしかない。
「ああ。必要になった時は遠慮なく頼ませてもらう」
「ええ、いつでも言ってください」
それから出されたお茶を頂き、旧廃道とは思えないほどもてなされた後、ようやく話が始まった。
「俺からベインへの報告なんだが、マルクスマウンテンにいたシルバーゴーレムの群れを倒してきた。ゴールドゴーレムの存在も確認済みで、こちらも既に討伐してある」
「流石はグレアム様。心配はしておりませんでしたが、相変わらずの手際の良さに感服致します」
「お世辞はいらない。それよりもマルクスマウンテンにもアンデッドを配置するのか?」
「お世辞なんてとんでもございません! 私の本心からのお言葉でございます! グレアム様は――」
「本当にいいから、質問に答えてくれ」
即座に称賛の言葉を遮ると、ベインは残念そうに頬を膨らませた。
ジーニアがやったら可愛いと思えただろうが、ベインがやっても鬱陶しいとしか思えない仕草。
「はい。他の場所と同じように配置しようと考えております。何か問題でもございましたか?」
「いや、シルバーゴーレムの死体を残したままだから、アンデッドを配置するなら触れないように言っておいてほしい」
「分かりました。絶対に触らないように言いつけておきます!」
これでシルバーゴーレムの死体はしばらく放置しておいても大丈夫なはず。
お金も必要だし、本来なら今すぐにでも運び出したいところだが、マルクスマウンテンからビオダスダールまで運ぶのは大変だからな。
ベインがアンデッドを配置するのを待ってから、可能ならアンデッドに運び出してもらいたい。
無理だったとしても、俺に手を出してこないアンデッドが配置された後の方が楽だろうし、ここは待ち一択。
「それからもう一つ、マルクスマウンテンでの報告がある。山の頂上付近にゴールドゴーレムと同等以上の魔物の気配を見つけたんだが、ベインは何か心当たりはあるか?」
「マルクスマウンテンの頂上に強い気配ですか? …………いえ、ちょっと把握しておりませんね。そもそもマルクスマウンテンには比較的強い魔物がいるものの、シルバーゴーレム以上の魔物は住み着いていないはずですので、ゴールドゴーレム以上の魔物が住んでいるということはありえません」
ベインでも把握していない魔物か。
こうなってくると、やはり優先して倒すべきは頂上にいた魔物だったな。
「なら、何かしらの目的でマルクスマウンテンに来ていた魔物ってことか」
「ええ、恐らく。グレアム様目当てか、ゴールドールドゴーレム目当てか。どちらにせよ……魔王軍が関わっていそうな感じがしますね」
「魔王軍だと思った理由はあるのか?」
「単純にそれだけ強い魔物がこの付近にいないからですね。それと幹部であるボルフライが戻らなかったことで、その原因を探りに来た魔物の可能性が高いと思いました」
なるほど。
飛行できる魔物だったし、調査のために来た魔物ってのは合っていそうだな。
……本気であの時に仕留めておけばとどんどん後悔が増していく。
「そう考えると逃がしてしまったのは大きいな。仕留めておけば良かった」
「別に気にすることはございません。私の方でも探りを入れておきますし、ゴールドゴーレム程度ならグレアム様をどうこうできるとは思えませんので」
「それはそうだが……魔王軍が厄介なことは身を以て知っているからな」
何度も何度も交戦した俺だから分かることであり、本気の魔王軍というものは非常に厄介。
できれば目をつけられたくないというのが本音。
「とにかくご報告ありがとうございました。私が徹底的に調べておきますので、何か分かり次第ご報告させて頂きます。それで他にご報告はございますか?」
「いや、その報告で最後……あー、そうだ。数週間後から王都に行くから、ビオダスダールを離れる。その間に変なことがないか見張っておいてくれ」
「……へ? お、王都ですか!? いつから、どれくらいの期間行ってしまわれるのですか!?」
「それは分からない。報告はそれぐらいだから、後は魔法談義でも行おう。まずは魔法の打ち合いからか?」
「まだ話は終わっておりません! グレアム様、どれくらいの期間いないのかお教えください!!」
うるさいベインを受け流しつつ、魔法の打ち合いへと移行していく。
飛行していた魔物については後悔が残るが、今更考えたところでどうしようもないため、次の動きがあるまでは考えなくていいだろう。
それからベインと魔法についてを話し合いながら、互いに互いの魔法を見せ合うことで、意外にも充実した時間を過ごすことができたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます