第67話 受諾


 これは確かに面倒くさい頼み事だな。

 他の冒険者よりも俺の方が上と豪語したのがより面倒くさくなってそうであり、できることならば行きたくない。


 ただ、何度も言うようにギルド長には世話になっている。

 今回のゴールドゴーレムも希望額以上の金額で売却してくれたし、頼みを聞いてあげるのが筋というものだろう。


「本当に面倒くさいが、ギルド長には世話になっているしその頼みを引き受けよう。善行、善行と言っておいて、身近にいるギルド長の頼みを面倒くさいから断るってのは違うしな」

「――ッ! ……ありがとう。グレアムさん、本当にありがとう!」


 俺の手を握ると、ブンブンと力強く振ってきた。

 あそこまで動揺しているギルド長を見たのは初めてだったし、未だによく分かっていないが、ここまで感謝しているってことは相当ピンチだったみたいだな。


「気にしないでいい。その代わり魔物の素材の売却や、孤児院については今後とも手伝ってもらうぞ」

「もちろん全力で手伝わせてもらう! 雑用から何でも言ってくれ。俺は一生グレアムさんには頭が上がらない」

「そんな気負わなくていい。王都についていくってだけだからな」


 心境としては王都に観光に行く感覚。

 ビオダスダールで十分だと思っていたが、せっかくだし王都にも行ってみたい。


 王都へ行ってお土産でも買ってから、一度フーロの村に戻るのもありかもしれないな。

 村のみんなに顔を見せると約束していたし、二人がいるから大丈夫だと思うが……魔物に襲われていないかも普通に心配。


「いや、今回は俺のミスで招いたことだ。この恩は一生忘れない」

「まぁギルド長がそう思うなら勝手にしてくれ。……ということだから、俺はしばらく王都に行くことになった。二人はどうする? 残って依頼をこなすでもいいと思うぞ」

「何を言っているんですか! もちろんついていきます!」

「私もついていく! 王都には単純に行ってみたいし!」

「なら、結局三人で向かうことになるのか」


 これまた付き合わせて悪い気持ちになるが、二人共に超がつくほど乗り気だからいいのか?

 一人で王都を回るのも楽しそうだったが、女性へのお土産は女性に決めてもらった方がいいだろうし、ついてきてくれるのは色々な意味で心強い。


「二人もすまない。アオイは結構名が知られているから色々と絡まれると思うが、適当にいなしてほしい」

「慣れてるから大丈夫! それでいつ出発するの?」

「正式な時期はまだ決まっていないが、数週間以内だと思う。日程が決まり次第、すぐに連絡させてもらう」

「分かった。それまでは普通に依頼をこなすとしようか」


 そろそろDランクに昇格できると思うため、依頼をこなしてDランクに上がっておきたい。

 一応三人パーティだし今のままでも十分ではあるんだが、なんとなくの目標として王都までにはDランクに到達するを目標に掲げようと思う。


「それでは三人とも、本当に申し訳ないがよろしくお願いする」

「ああ。それじゃまた」


 ギルド長と別れ、俺達はギルド長室を後にした。

 さて、ここからだが……何をしようか。


 もう少し孤児院について話すと思い、今日は完全オフにしてしまっているため暇。

 王都へ行く準備を整える時間にしてもいいと思うが、まだ日程も決まっていないのに準備は流石に時期尚早すぎるか。


「グレアムさん、これから何をするんですか?」

「まだ決まっていない。……いや、ベインのところに行ってくる。魔法について話すって約束したし、ついでに王都に行く件も伝えてくる」

「ベインのところで魔法談義か……。面白くなさそうだから私はパス!」

「私は暇ですし、グレアムさんについていこ――」

「ジーニア、暇なの? なら一緒に買い物しようよ! この間は私を除け者にして二人で買い物に行っていたんだし、今日は私に付き合ってほしい!」

「あー、いいですね! 買い物しましょうか!」

「それならここでお別れだな。明日は普通に依頼をこなすから、いつもの時間に酒場で集合で頼む」

「はーい! 何か面白そうなものあったら買っておくから!」

「ああ、なかったらいらないからな」


 そんな会話をしてから俺は二人と冒険者ギルドで別れ、一人で旧廃道に向かった。

 


 二人がいないということもあり、全速力で飛ばしたことであっという間に旧廃道に到着。

 俺が近づいてくるのが分かったのか、ベインは旧廃道の入口までやってきていた。


「グレアム様、やっと来てくれたんですね!」

「前回から一週間ちょっとしか経っていないだろ。今日は色々な報告も兼ねて遊びに来た」

「それは楽しみです! 私の方からも一つご報告があるのですが……ヘストフォレスト、それから南の平原に私のしもべを配置致しましたので、魔物の統治の方は盤石でございます」

「それはありがたいが……奥についてから話そう」

「申し訳ございません。先走ってしまいました。それでは奥までご案内致します」


 ベインの案内で旧廃道の奥まで案内してもらうことにした。

 毎度思うのだが……せっかく容姿が整っているのに、だらしない笑みを浮かべているのが本当にもったいなく思ってしまうな。


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