第60話 マルクスマウンテン
翌日。
昨日は旧廃道から戻った後、今日の準備を行ってから解散。
そのため準備は既にバッチリであり、まだ日が出ていない中、俺は宿を出て二人が待っているのであろう酒場前に向かった。
「グレアムさん、おはようございます! 今日は山登りからのゴールドゴーレムの討伐。ハードな一日になりますが頑張りましょうね!」
「ジーニアは元気そうだな。対するアオイは……随分と眠そうだが大丈夫か?」
「昨日、ちょっと遅くまで新技の練習をしてたからちょっと眠いだけ。日が出てくる頃には目が覚めて元気になってるから大丈夫」
「ギリギリまで自主練していたのか。キツかったら残ってもいいんだからな。今回は善行だし、一銭も手にはいらないんだから」
「残るわけないじゃん! このために仕上げたんだし、絶対についていくよ!」
両手を強く握り絞め、絶対についていくという強い意志を見せてきたアオイ。
気合いが入り過ぎて空回りしないか心配だが、まぁフレイムオーガやベルセルクベアと同じぐらいの強さの魔物なら大丈夫だろう。
……ちなみにだが、ギルド長も誘ったのだが、今日は抜けられない会議があるとかで来られないらしい。
感情の起伏が激しい分、鬱陶しさもあるんだが、それ以上に知識の豊富でいてくれると非常に助かる。
道案内から魔物の情報、近くの水場まで地形から読み取って見つけてくれていたしな。
来られないのは残念だが、当のギルド長が俺たち以上に残念そうにしており、行けないと分かった時はこの世の終わりみたいな顔をしていた。
冒険者ギルドを横目に見ながら、ギルド長の絶望した表情を思い出しつつ……。
軽い雑談を交えながら、俺達はマルクスマウンテンを目指してビオダスダールの街を出発した。
街を出発して北に進むこと約四時間。
この間通った北の山岳地帯を抜け、マルクスマウンテンの麓まで辿り着いた。
「ふぅー、やっと山の麓まで来れましたね! ここからが本番なんですよね?」
「ああ。ベインが言っていたように、この先からヘストフォレスト以上に強い気配をいくつも感じる」
「やっぱりそうなんだ! ちなみにだけど、ゴールドゴーレムの場所はもう分かってる?」
「気配は……山の中から感じるな。どっかに抜け穴のような場所があって、その先にいるんだと思う」
「頂上とかなら分かりやすかったんですけどね。まずは抜け道を探すところからですか!」
頂上は頂上で、ゴールドゴーレムに匹敵する気配を持つ魔物がいるのが気になる。
飛行しているようだし単体だから、ゴールドゴーレムではないことは間違いない。
この魔物は帰り際に俺一人で見に行って、今後害を為す魔物だと判断したら討伐しよう。
そんなことを考えながら、マルクスマウンテンの登山を開始した。
ヘストフォレストと同様に人が踏み入れる場所じゃないためか、進むのも一苦労。
歩ける場所を探しながら進み、剥き出しの岩場を落ちないように気をつけながら急斜面も登っていく。
「ほんっときっつい!! 足場もボコボコして歩きにくいと思ったら、急にどろどろになったりするし!」
「襲ってくる魔物も鬱陶しいですね! 平坦な道ならもっと楽に倒せるはずなんですけど!」
「どうする? 道中の魔物は俺が倒そうか? このままじゃ、シルバーゴーレムの下に辿り着く前に体力を使いきってしまうだろ」
「大丈夫!」
「大丈夫です! 道中の魔物は私とアオイちゃんで倒します!」
「そういうこと! 帰りは頼むことになるの目に見えてるし、行きは絶対に私たちで倒す!」
息を切らしながらも、声を張り上げてそう言い切った二人。
気合いが入っているのは伝わるが、このままでは倒れかねない。
休憩できそうな場所を見つけ次第、休憩を挟んでパンクしないように注意しなくちゃな。
登山を開始して約三時間。
中腹まで登って来ることができたが、ここからの抜け穴探しが大変となってくる。
ここまでは先ほど宣言した通り、ジーニアとアオイの二人で道中の魔物を倒している。
制限時間もあるため全員で抜け穴を探している余裕はないと判断し、二人を安全な場所で待機させ、俺一人で抜け穴を探すことに決めた。
「二人はここで待機していてくれ。俺が抜け穴を探してくる」
「うぅ……。ここまで来たら見つけ出したかったですが……日が暮れてしまいますもんね」
「悔しいけど抜け穴探しまでは無理かぁ……!」
「無駄に大変なだけで地味な作業だし、全員で苦労する必要はない。それじゃ行ってくる」
残念そうにしている二人を置いて、俺は猛スピードでマルクスマウンテンを駆けていく。
片腕なのがちょっと不便だが、無属性魔法の【
二人を連れていた時の数十倍の速度で移動しながら、俺はあっという間に抜け道を見つけることに成功。
後は待機させている二人の下に戻り、この抜け道まで案内するだけだ。
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