第59話 ゴーレムの性質
驚きの連発でごちゃごちゃになった話を一度整理し、ベインの周りでに起こったことを全て聞き出した。
流れとしては、ベインに名付け→今の状態に進化→魔王軍幹部ボルフライの到来→旧廃道の掃除→現在という感じ。
一応全て把握できたものの、ベインの能力についてはまだ知りたいことが山ほどあるのだが……。
ここは一度飲み込んで、本来ここに来た目的である東西南北の長の話をしよう。
「ここからようやく俺たちの話になるんだが、一週間ほど前にベルセルクベアを倒した」
「おお! 流石はグレアム様です! もうベルセルクベアをお倒しになられたのですね!」
「魔王軍の幹部を倒していた相手に言われてもって感じだが……。とりあえず耳を剥ぎ取ってきたから、本当にベルセルクベアなのか確認してくれ」
俺はベインに見せるべく剥ぎ取ったベルセルクベアの耳を取り出し、ベインに手渡す。
じっくりと確認した後、力強く頷いた。
「間違いないありません! 確実にベルセルクベアです!」
「そうか。間違いではなかったことが確認できて良かった。それともう一つ、このままゴールドゴーレムも倒そうと考えているんだが、何か情報があれば教えてほしい」
「ゴールドゴーレムですか……。わざわざグレアム様のお手を煩わせなくとも、私が倒してきますよ? グレアム様のお陰で力をつけましたし、恐らく私でも倒せますので!」
胸をトンと叩いてそんな提案をしてきた。
以前までの俺だったら、即決で任せていただろうが今は話が変わったからな。
倒した際の素材もほしいということもあって、俺が倒したいという思いが強い。
「いや、ゴールドゴーレムは俺が倒したい。ベインの提案もありがたいんだけどな」
「そうでしたか。そういうことでしたら、私が持っている情報を全て渡します! まずゴールドゴーレムは北に聳え立つ山——『マルクスマウンテン』を棲み家にしております!」
マルクスマウンテンというと、確か【不忍神教団】と出くわした北の山岳地帯を進んだ先にある山。
依頼で北の山岳地帯にはよく行っていたが、マルクスマウンテンまでは行ったことがない。
「なるほど。マルクスマウンテンにゴールドゴーレムがいるんだな」
「はい! ここからは簡単にゴーレムについてを説明させて頂きます! ゴーレムは鉱石を主食とする、岩のような材質で人の形をした魔物でございます」
通信種のゴーレムに関しては、北の山岳地帯で【不忍神教団】を守る際に戦った。
フーロ村の付近ではミリオンゴーレムもたまに出現していたことからも、割りと戦闘経験はある魔物。
「ゴーレム懐かしいですね! グレアムさんの力が本物だと、ゴーレムとの戦闘を見て確信した記憶があります!」
「それは私も! 拘束されながらテントの隙間から見てたけど、物理攻撃が効かないとされているゴーレムをぶった斬ったんだもん! そのからくりを知るために粘着したんだけど……本当に種も仕掛けもない実力で斬り裂いてたんだもんなぁ!」
二人は懐かしみながら、当時の心境を漏らした。
そこまで昔の出来事ではないんだが、色々ありすぎて昔のことのように思えてくるのは不思議。
「グレアム様は戦闘経験がおありでしたか! それでしたら私からの説明なんていりませんでしたね」
「いや、気になるから聞かせてほしい」
「本当ですか? なら、続きから話させて頂きます! ゴーレムは食べた鉱物によって形態を変化させる魔物でして、マルクスマウンテンには銀鉱石がたくさんあることから、シルバーゴーレムの群れになったと言われています」
へー。全く知らなかった情報だ。
つまり金鉱石を食わせればゴールドゴーレムに、ミスリル鉱石を食わせればミスリルゴーレムになるってことか。
何だか面白そうだし、一体くらい飼ってみたくなる。
「あの……一つ気になったんですけど、鉱物しか食べないのなら、なんでゴーレムは人を襲うんですか? 特に理由はなく、魔物だからって理由でしょうか?」
「それもありますが……ゴーレムが襲うのは大抵冒険者であり、質の高い貴金属を待っているから襲っているのだと思います。ゴーレムにとって、人間が持っている剣や防具は最高級の食材ですからね」
「何か面白いな。深く考えたことがなかったが、ちゃんと行動理由があるんだな」
まさに魔物だから分かることだろう。
こういう話は好みのため、非常に興味深いし面白い。
「そうなんです。……ただ、そのためゴーレムは滅多に他の魔物を襲うことはしないんです! だからマルクスマウンテンには、シルバーゴーレム以外にも厄介な魔物が無数に住み着いておりますので、くれぐれもお気をつけください! まぁグレアム様には余計な心配かと思いますが」
バーサークベアの群れは魔物を追いかけ回していたが、シルバーゴーレムはそういうことをしない。
だから、他の魔物も多く住み着いているって感じか。
そこまで期待していなかったのだが、予想以上の情報を得ることができた。
このベインの情報を踏まえ、明日のゴールドゴーレム討伐に挑むとしようか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます