第23話 頭部
街に着いたのは昼過ぎくらい。
今日は朝から黒装束の女性に絡まれたものの、今までの中で最速で依頼を達成できたかもしれない。
「これで依頼達成でしたら、私達はEランク昇格ってことですよね? 今日はお祝いですかね!?」
「早く戻ってこられたし、俺はお祝いしてもいいんだが……ジーニアは何か用があるって言ってなかったか?」
「――あっ! 今日は友達がビオダスダールに遊びに来る日でした! うぅ、嬉しい気持ちがピークの時にお祝いしたかったんですけど……」
「別に明日でも嬉しい気持ちは持続しているだろ。せっかくこの街まで来てくれたんだし、しっかりと歓迎してあげてほしい」
「はい、そうさせて頂きます! 明日は絶対にEランク昇格のお祝いをしましょうね!」
まだ依頼を達成していないのだがそんな話をしつつ、俺達は冒険者ギルドの納品受付までやってきた。
ここは美人の受付嬢さんではなく、やつれた感じの男性職員が多い。
納品を受け付けるのはかなりの力仕事だし、美人には優しいだけで冒険者は基本的に気性が荒い人間が多い。
そんなダブルパンチで男性職員のみんながみんな、こんなにやつれた顔をしているんだろうな。
「冒険者カードを見せてもらってもいいですか?」
「ああ。これだ」
「ありがとうございます。……オーガの討伐依頼ですね。討伐したという証明はお持ちでしょうか?」
「頭を持ってきた。確認してみてほしい」
「うえ”ッ? あ、頭を持ってきたんですか!? ……まぁ大丈夫ではありますが、耳とかでも大丈夫なので今度からは耳を剥ぎ取ってください!!」
オーガを生首をあからさまに嫌悪感を示してきた。
やっぱり生首を持ってきたのは、駄目だった感じか。
「ゴブリンと非常に似ているから耳だけじゃ駄目だと思って首ごと持ってきたんだが……余計な気遣いだったか」
「はい、余計すぎる気遣いです! 冒険者ギルドの方で頭の処分をしなくてはいけないので、くれぐれもこれからは耳だけの納品にしてくださいね!」
「次からはそうさせてもらう。今回は申し訳なかった」
強く釘されてしまったが、これは完全に俺が悪い。
全員が全員魔物の頭部を持ってきたら、冒険者ギルドは魔物の頭部で埋め尽くされてしまうもんな。
今回は大丈夫ということだし、素直に謝罪をして二度としないと心に誓った。
「理解してもらえたなら大丈夫です。依頼の方はこれで完了ですので行ってもらっていいですよ」
「完了ということは、この魔物がオーガってことで大丈夫だったのか?」
「……? ええ。オーガですし、そのつもりで頭部を持ってきたのではないんですか?」
「いや、大丈夫ならいいんだ。それじゃ報酬を受け取って帰らせてもらう」
男性のギルド職員から依頼達成の報酬を受け取ってから、俺達は冒険者ギルドを後にした。
やはりこの辺りではレッサーオーガが、オーガという認識らしい。
密かに明日遠征して狩りに行くのを楽しみにしていたため、オーガを倒しにいけないのは残念だな。
これでクリアなんだし、報酬も貰えたから嬉しいはずなんだけどな。
「怒られちゃいましたね」
「俺が頭部を持ち帰ろうと言ったのが悪かった。ジーニアも巻き込んでしまったな」
「いえいえ、謝らないでください! 私もおかしいと思わなかったですもん。それと……オーガで間違いじゃなかったの少し残念でした」
「ん? どういう意味だ?」
「明日、遠征してオーガを倒しに行くのを少し楽しみにしていたんです。だから、少し残念だなと思ってしまいまして」
「……実は俺も同じことを思ってた。平原の先をジーニアと遠征するのは面白そうだしな」
「ふふ、グレアムさんも同じことを考えてくれていたのは嬉しいですね。……もう依頼達成していますけど、明日は本当のオーガを倒しに行っちゃいますか?」
「いや、さすがにそれはしないだろ」
「そうですか? 私は楽しそうですし、やってみたいと思いましたけど!」
そんな会話をしながらジーニアを酒場まで送り、今日は早いながらも解散となった。
パーティを組んでからほとんど一緒に行動しているのだが、ジーニアが話を振ってくれるというのもあるが会話がほぼ途切れることがない。
毎回の如く、こうして酒場まで送ってるんだが、絶対に会話の途中なため別れるのが名残惜しくなるんだよな。
まぁ店前で雑談をする訳にもいかないし、諦めて帰りはするんだが。
後ろ髪を引かれつつも酒場を後にした俺は、酒場を後にして一度宿屋へと戻った。
シャワーを浴びて一度体を綺麗にしてから、外に出かける準備をする。
今日はかなり早めに戻って来られたため、一人でビオダスダールの街を巡るつもり。
これだけ大きな街であり、色々な店や施設があるのに全然回れていなかったからな。
オーガの討伐報酬として銀貨三枚も手に入ったし、食べ歩きでもしようかと考えている。
本当は目に付く店を全て回り、珍しいものを見てみたい気持ちはあるが、銀貨三枚では少々心許ない。
食べ歩きぐらいしかできることがないが、街を見ながら食べ歩きするだけでも十分すぎるほど満足できるだろう。
俺は年甲斐もなくワクワクしながら、ビオダスダールの街に繰り出たのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます