第22話 オーガ
魔物の集落でも作っているのか、大量の魔物の中にオーガの反応を感じるな。
ここまで知った魔物が少なかったということもあり、オーガの反応を感知してに少しだけ嬉しくなった。
「……奥にオーガを見つけたが、距離にして半日以上は移動しないと辿り着かない場所だな」
「えっ! 流石にそんな遠くにいる魔物の依頼ではないと思いますけど、受付嬢さんは期限がないと言っていましたもんね。そのオーガを倒せということなのでしょうか?」
「分からないが、俺の知っているオーガは近くにはいないな」
ジーニアの言っているのことの方が正しいため、近場の魔物の反応があるところに向かってみるのが得策か。
どちらにせよ何の準備をしていない今の状態では、片道半日以上かかる道のりは進めないしな。
「グレアムさんがそう言うのであれば……半日かけて、そのオーガの場所に行ってみます?」
「いや、ジーニアの言っていることの方が正しい。とりあえず近場に魔物の反応があるから、その魔物を巡っていこう」
「分かりました! 魔物の反応がある場所を巡ってみて、オーガがいなかったら一度ビオダスダールの街に戻って準備しましょう。そして半日かけてオーガの反応があるところへ向かうでどうでしょうか?」
「ああ。何の異論もない」
これからの方針も決まったため、早速魔物の反応がある場所を巡ってみることにした。
平原の歩いて二十分ほど、まず一匹目の魔物と遭遇したのだが、明らかにオーガではなかった。
ブルバトラーという名前の牛のような魔物のようで、この魔物も市場に出回っているとジーニアが言っていた。
とりあえずオーガが現れるまではジーニアに戦ってもらい、俺は後方から的確なアドバイスを行っていく。
ブルバトラーの後は、通常種オーク、ベビーデビルと弱い魔物との連戦を挟み、そして、何かを見つけたであろうジーニアが指をさして声を上げた。
「グレアムさん! あれ、多分オーガだと思いますよ!」
指をさした方向に視線を向けると、そこにいたのは土緑色の体をしたオーガ……というよりは通常種ゴブリンを大きくしたような魔物。
俺が見たことのあるオーガとはかけ離れており、多分だがオーガとは似て非なる魔物だと思う。
「あれが本当にオーガなのか? 俺の知っているオーガとは違いすぎるんだが」
「多分オーガだと思いますよ? 実際に見たことはないですけど、私が知っているオーガの特徴と一致しています!」
納得はいかないのだが、ジーニアがオーガというのならこの辺りではこの魔物がオーガと呼ばれているのかもしれない。
こんなだらしない体型ではなく、筋骨隆々で金棒を持っている鮮やかな体色をした魔物がオーガという認識であり、この魔物を無理やりオーガと呼ぶのであればレッサーオーガってところだろうか。
「それならあの魔物を狩って今日は戻るとしよう。あれならジーニアでも倒せると思うがどうする?」
「流石にグレアムさんにお願いしてもいいですか? 短剣では攻撃が通るビジョンが見えないです」
「分かった。なら、サクッと倒してしまうか」
俺は一歩前に出て、いつものように柄を握って腰を落とす。
そして、抜刀と納刀を一瞬で行い――レッサーオーガの首を刎ねた。
生首が宙を舞い、ボトンという音と共に地面に落ちる。
それから体が地面に倒れ、一瞬にして戦闘は終わった。
強い魔物は上のランクの冒険者が倒しているのだと思うが、ここまで弱い魔物しかいないと流石に歯ごたえがない。
久しぶりに全力で戦いたい気分になりつつも、とりあえず任務は達成……ってことでいいんだよな?
「何度見ても惚れ惚れします! 魔物といえど首が落ちるのは気持ち悪いはずなのに、綺麗に見えてくるんですよね。グレアムさんが戦っているところを一生見ていたいです」
「一生は流石に無理だな。体力的に考えても、あと五年くらいが限界だと思う。それより依頼はこれで達成でいいんだよな?」
「大丈夫……だと思います! 討伐の証明とかっているんですかね? コープスシャウトの時は、拡声器代わりになる特殊な魔石を落としたのでよかったんですけど」
「うーん。こいつは特に何か持っているとかでもなさそうだな。耳だけだとゴブリンにしか見えないし、首ごと持って帰るか?」
「首ごとですか!? 流石に……と思いましたけど、思っていた以上に血が流れ出てないのでいけるんですかね?」
「ひっくり返した状態で麻袋に入れておけば大丈夫だと思うぞ」
「それなら……首を持っていきましょうか?」
ジーニアは困惑気味ではあったが、他に討伐の証明になりそうなものがないため生首を麻袋に入れて持ち帰ることにした。
あっさりとし過ぎていたが、これで依頼は達成なはず。
もしオーガではないと言われたら、準備をして平原の奥にいる本当のオーガを狩ればいいだけだしな。
平原に着いて二時間も経っていないぐらいだが、俺達はビオダスダールの街に戻ったのだった。
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