第21話 昇格試験
冒険者ギルドに入り、すぐにいつもの受付嬢さんの下へ向かう。
最近は飽きられてきたのか、嘲笑されることも少なくなって非常に快適。
「あっ、グレアムさんにジーニアさん! 今日も依頼を受けに来たんですね!」
「ああ、少しでもお金を稼ぎたいからな。今日も依頼を見繕ってもらってもいいか?」
「もちろんです! ……と言いたいところなんですが、今日は依頼を見繕う前に一つ朗報があるんです!」
「朗報? 心当たりが何もないな」
「さっき話していたEランク昇格の件じゃないですか!? そうですよね!?」
「うー……。ちょっと違うので言い出し辛いのですが、似たような感じではあります! 実は、次の依頼を達成できればEランクに昇格できるんですよ!」
おお! もうそろそろEランクに昇格できると聞いていたが、次の依頼を達成すればEランクに昇格できるのか。
今のままでも十分やっていけているが、ランクが上がるに越したことはない。
最近は飽きられて少なくなってきてはいるが、ルーキーと嘲笑されることがほとんどなくなるだろうしな。
「それは確かに朗報だな。受ける依頼はどんな依頼でも大丈夫なのか?」
「いえ、それが決まった依頼があるんですよね……。南の平原に出現するオーガの討伐です。南の平原にはかなりの頻度でオーガが出現するのですが、そのオーガを一匹討伐するという依頼です」
オーガの討伐か。オーガも種類の多い魔物ではある。
レッドオーガにブルーオーガ、その進化種であるフレイムオーガやアイスオーガなんかもいる。
更に進化を遂げると鬼人族というものに変化するみたいだが、俺はまだ鬼人族は見たことがない。
「オーガの討伐ですか……。グレアムさんがいれば討伐できると思いますが、ちょっと怖い魔物ですね」
「ジーニアの認識では危険な魔物か?」
「はい。ルーキー冒険者の半数はオーガに殺されると聞いたことがあります」
「そうですね……。文字通りルーキー冒険者の壁と言われている魔物です。単純な強さもあるのですが群れで行動していることも多く、知能もそこそこ高いことから人間が逆に狩られるケースが多いんです。私としても無理に受ける必要はないと思うので、受けられると思ったタイミングでこの依頼は受けてくださいね」
鬼人族ならまだしも、オーガなら簡単に狩れると思うけどな。
俺が知らないだけで他に種類がいるのかもしれないが、フレイムオーガやアイスオーガよりも、ゴブリンの一種であるブラックキャップの方が断然強かった。
「最終判断はジーニアに任せるが、俺は受けてもいいと思ってる」
「グレアムさんが受けてもいいと判断したなら受けましょう! 私なんかよりもグレアムさんの方が正しい判断のはずですから!」
「そう言ってくれるなら、オーガ討伐の依頼を引き受けようか。受付嬢さん、依頼を受けさせてもらっても大丈夫か?」
「もちろん大丈夫ですが……くれぐれもお気をつけくださいね。ここまで毎日依頼を達成しているのは私も知っていますが、オーガはワンランク強い魔物です。この依頼に関しては特に期限とかもございませんので、無理せずに危ないと思ったら引き返してください!」
「いつも忠告ありがとう。絶対に無理だけはしないと約束する」
受付嬢さんにそう宣言し、俺達はオーガの討伐依頼を受けてから冒険者ギルドを後にした。
ここまで忠告してくれたってことは、本当に危険な依頼なのだろう。
俺自身、そこまで危機感を持てていないのだが……気を引き締めて、オーガ討伐に向かおうか。
「そういえばなんですけど、アイテムとかっていらないんですかね? グレアムさんとパーティを組んでから、回復ポーションすら買っていないんですけど」
「ジーニアが必要と思うなら買ってもいいが、基本的にはなくても大丈夫だと俺は思ってる。回復魔法も使えるしな」
「えっ!? グレアムさんって回復魔法も使えるんですか!!」
「あれ、言ってなかったか? まぁ使う場面がここまでなかったしな」
「絶対に聞いてません! 確か、回復魔法って聖職者しか使えない魔法と聞いたことがありますよ! 元は神父とかってことはないですよね?」
「そんな話を聞いたことがないし、俺は趣味で兵士もやっていた農民ってところだ」
「その強さで趣味の兵士って……ぶっ飛びすぎてて理解が追い付かないんですよ! 何か驚くことがあるときは事前に言ってください!」
久しぶりにテンションのおかしくなったジーニアが見れた気がする。
先に言っておいてくれと言われても、何が普通で何が普通じゃないのかが分からないからな。
「分かった。何かあったら先に報告させてもらうよ」
「絶対ですよ! これからオーガと戦うっていうのに、驚きすぎて疲れちゃいましたもん!」
街から出る間にそんな会話をしつつ、特に買い出しとかもせずに南の平原へと向かった。
道中は特に何かある訳でもなく、あっという間に南の平原に到着。
意外にも南側に北のは初めてであり、このだだっ広い平原を見るのも初めて。
「おー、眺めが良いですね! ピクニックとかしたくなります!」
「確かにピクニックは楽しそうだな。適当に屋台でご飯でも買って、原っぱに座って食べたい」
「いいですね! 寝っ転がってお昼寝とかもしたいですね!」
ピクニックは非常に魅力的。
見た限りでは魔物の数も少なそうだし、時間があれば本当にピクニックをやりにきてもいいかもしれない。
そんな会話をしつつ、今日の目的であるオーガ探しも行う。
気配を探ってみるが……近くにオーガらしき気配はないな。
受付嬢さんが言っていた話では、かなりの頻度でオーガが出現すると言っていたし俺の知らないオーガなのか?
レッドオーガ以下のオーガは見たこともないが、気配の弱い魔物はちらほら感知できているため、これがオーガの気配なのかもしれない。
「ピクニックもいいが、まずはオーガ討伐を考えよう。今気配を探ったんだが、近くにオーガらしき反応は確認できていない」
「もっと奥の方ですかね? 平原にはオーガがたくさんいるって、酒場に飲みにくるお客さんが言っていたので近くにいてもおかしくはないと思いますが……」
「そうなのか? 一応、もう少し範囲を広げて探ってみる」
ジーニアの情報も照らし合わせると、平原にポツポツと感じる反応がオーガなのかもしれない。
一応、範囲を広げて魔物の気配を探ってみると――かなり遠くからではあるが、平原の奥の方に俺の知っているオーガの反応を発見した。
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