四人乗りに五人乗るのは割と窮屈
「ねぇ、本当に上手く行くの?」
酔い止め用の飴を舐めている空鳴が不安そうな表情で僕に聞いてきたので、思わず僕も不安になってしまった。
その影響により、僕も言い回しが不安なものになった。
「うん、まぁ、少なくとも成功率の低い作戦ではないと思うよ。生還も可能だろうし」
「てめえら頼むぞ⋯⋯この車
「ようし浩一郎!壊してもいいって!」
「了解しました」
「ふっざけんな!!孔空てめえ!!」
今、僕達は
前回同様、車で行こうと思ったが生憎は真っ二つになってしまったので、風紀委員会の備品である4人乗りの車両を貸してもらうことにした。
⋯⋯4人乗りに5人で乗っている状況なので地味に窮屈だ、付け加えて言うならば体格の大きい万くんと浩一郎さんなので地味と言わずに普通に窮屈だと言ってもいいかもしれない。
「いやーまさか風紀委員長と合同作戦を行うだなんて、俺ちゃんそんなの夢にでも思わなかったぜ?」
「そうそうっ!何よりもこの作戦の発案が
「そうかい?僕どんなタイプだと思われてるの?」
「現場に向かうタイプの安楽椅子探偵」
椅子の意味がないじゃないか。
「アレなんじゃない?車椅子とかねっ!」
「それもうただの歩けないだけの探偵じゃねぇか」
夕卜くんがそう突っ込んだところで、僕は話を戻した。
「それで、ええと、作戦は覚えているよね?」
「孔空と外々と風紀委員長の俺、つまり
「うん、部室で話した説明を覚えているみたいで嬉しいよ」
「へぇ、そんな話だったんだねっ」
「うん、部室で話した内容を忘れているみたいで悲しいよ」
まぁやるべきことをやってくれるのならどうでもいいのだが。
僕がそう言った後に、冗談みたいにわざとらしく笑ったので気の利いたジョークだと思っておこう。
「つっても俺ちゃんも、
「子供騙しといえど騙せるなら問題ないし、相手が子供ならば尚更だ。それにこの作戦の中で最も適任があるのは夕卜くんだろうし」
なにしろ
それに伴う実績もあるし、それに保証できる僕自身の記憶がある
「前回僕を逃がした時、ほぼ唯一時間稼ぎ出来そうなのが君だけだったからね。それに風紀委員長の能力は攻撃を当てるか直接触れないと発動しないらしいしさ」
「⋯⋯⋯⋯どこで知った?」
「知り合いに殺しても死ななそうな化け物がいてね」
「うーん誰かなー?そんな言い方をされても該当者が多すぎてわからないねっ!」
「確かにそうだね該当者第一号、まぁ包み隠さずに話すなら不老不死の先輩だよ。傲岸不遜な態度のね」
「ん、となると品内先輩だね。いくらこの学園といえど不老不死ってのは先輩しかいないからね」
そういって空鳴は酔い止めの飴をもう1錠、口に放り込んだ。
雨といえど薬なので、そうやってぽんぽん食べるようなものじゃないと思うが、最終的に痛い目を見るのは空鳴なので黙ることにした。
ここで夕卜くんが、僕に質問を投げかけてきた。
みんなに伝達した作戦の中でも、意図的に伏せていた部分である。
「でもよ、それだとしても不安が残るなぁ?何しろ相手は俺ちゃんたちよりも遥かに強いバケモンだ。あれが核爆弾だったらこっちは拳銃みたいなもんだしなぁ」
「拳銃ならまだいいね、
「酷い言われようだ」
まぁ確かに、少なくともこの中では僕は最弱だろう。
しかしそんな僕にも少なからずできることはある。
出来ないことが多い僕が、誰にも真似できないと言えるほどの才能。
「話し合えるなら、僕は誰の心でもへし折れる」
まして、子供相手なら余裕だ。
赤子の手をひねるよりも楽だし、虫の頭を捩じ切るかのような残虐性で人の心をへし折れる。
例え相手が友達になろうとしていても。
「でもさぁ、彼女の能力はやばいよっ?それに話し合えるのかすらわかないしー?」
空鳴が言ったその質問は誰もが思っているモノだった。
そもそもあんなに暴走して暴れている兵器のような存在と話し合えるのだろうか?という質問はあるだろう。
「という訳で、ここで僕の推理を聞いてほしい。いいかな?」
無論、拒否されても話し始めるが。
「じゃあ質問の意味ねぇじゃねぇかよ、てめえ」
「虚言廻しは狂言回しだからね、喋るなって方が無理があるさ」
さて、と僕は前に言ってから話し始めることにした。
―――――――――――――――――――
あとがき
風紀委員会の車は警察車両ほどのサイズなので結構キツキツです。
一名くらいトランクルームにぶち込んでもいいんじゃないんですかねぇ。
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