大立ち回りの大太刀廻
――――――ずるり
まるで妖怪か幽鬼かと見間違うほどに、ゆらりと這い出た彼女は日本の刀を差していた。
ぬるり――――――
両腕を交差させて力み前のめり気味に倒れ込むような姿勢を取る。
ず――――――ぱっ
そして、刀を抜く。
「――――――っ!」
それの感覚は鋭利な刃物を目に突きつけられたような感覚に近い、己の本能に従って近くにいた空鳴の首を掴んで即座に伏せた。
結果としてそれは最善の行動であり、最も正しい行為であった。
「うわっちょ!?」
頭の上で超高速の何かが横切る。
頭を上げたままだったら首を跳ねられていたと思うほどの高速の斬撃だった。
後ろを見れば直線上にあったものすべてが切断されていた。
まるで漫画のコマ割りのように。
その光景を見た吉兆組の一人が叫ぶように高笑いをし、この学園で特定監視対象生徒になっている生徒を呼ぶ。
「さぁさぁ蹂躙の時間だ二刀流の大剣豪!身の丈ほどある野太刀を振り回す抜刀術使い!戦場を引っ掻き回し、正しく主役の大立ち回り!それ故についた名前が
惚れ惚れするほどに上手い前口上の後に、その味方の名は語られた。
「――――――
栗色の髪をしたややウェーブかかった髪を持つ少女が粉塵の中から姿を表す。
所々に細かなフリルなどがあるその服やスカートは誰がどう見たって戦闘用の服ではない。
だがそれなのに理解してしまう。
感覚的か本能的か、眼前にいる方万 刀刃という少女が圧倒的に強者であるということを。
「⋯⋯あは、こりゃ逃げるしかないねっ!?」
今度は空鳴に首根っこを掴まれて引っ張られる。
引っ張られるというよりも投げられる、といったほうが正しいだろう。
手のように形作られた
僕は空鳴が逃げの一手を即座に取ったこと、そして投げ飛ばされたことに困惑したが、その二択は直ぐに解決した。
「ず――――――ぱっ」
いつの間にか野太刀を鞘にしまっていた彼女が再度斬撃を繰り出す。
空中にいる僕は防御の姿勢を取れるはずもなく体を両断される――――――ことはなく、夕卜くんに抱えられていた。
⋯⋯キープアウトのテープでぐるぐる巻きで縛られながら。
「大丈夫か?大丈夫そうだな、なら一刻も早くここから逃げるぞ」
「空鳴は?そもそもここまで来て帰るのかい?それにあの二刀流の――――」
「あーあーうるせぇな、取り敢えずこの場から離れなきゃろくに会話もできねぇからその後に話すぞ⋯⋯っと!さすがにこの距離でも補足してくるか」
再度襲い来る即死の斬撃。
これには彼も喰らいたくないのかギリギリで回避する。
僕から見てもわかるほどに、二刀流の彼女が繰り出す斬撃は直情的なまでに一直線にしか切断されていない。
これなら回避も容易だろう。
「⋯⋯やっべ、こっちに来てるなあれ」
「本当に言ってる?僕死ぬよ?」
「そうならないようにどうにかすっから安心しろ」
「そりゃありがたい」
「っつーわけで今から投げる、受け身取れよな」
「そりゃ度し難いいぃぃぃ⋯⋯⋯⋯ぐぇ」
⋯⋯今回僕投げられまくっているな?道具扱いにもほどがある。
それはさておき、当然として唐突に投げられれば即座に立ち上がることなどできない。ふらふらと視界がぐらつく中、顔を上げる。
そして僕は驚愕する。
少しでも触れたら四肢が消し飛ぶであろう斬撃を、さながら曲芸か舞踊のように紙一重で避け続ける夕卜くんがそこにいた。
その動きに物理法則など適用されておらず、人体が超えてはいけない規則など簡単に超えている動作。
二刀流の彼女が刀をに斬ろうとしても、既にその場所には彼はいない。
瞬間移動、のようにも見えた。
「大丈夫ですか?一人で立てますか?」
僕が呆けていると浩一郎さんが体を支えて立ち上がらせてくれた。
「あぁ、はい、動けます」
「風紀委員長さんに連絡しました、いまは取り敢えずこの場を離れましょう」
そう言われたので僕は全力でこの場を離れる選択をした。
仲間を見捨てるのように走り去った。
―――――――――――――――――――
あとがき
余談ですが、
見た目だけなら。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます