「願わない」

俺ちゃんにくだらねぇルールは通用しねぇ

「俺ちゃんは例外処理ゲームクラッシャー外々 夕卜そとがい ゆうぼくさ」


突如として現れた彼は、外々 夕卜そとがい ゆうぼくと名乗った彼は、驚いている僕たちを嘲笑うかのように哄笑した。


「ぎゃはは!そりゃあ驚くよなぁ!隠れんぼだってのに見つける側の奴らに会いに行くやつがどこにいるかって話だよなぁ!?ぎゃははははははははははははは!」


「⋯⋯⋯⋯⋯」


「⋯⋯マジかよ、こんな出会いになるだなんて私ですら予測できなかったぜ。まぁこっちとしては会いに来てくれるならありがたいんだけどね?」


それはそうなのだが、如何せんこの状況は僕としては受け入れ難い、理解できない状況だ。

なぜ僕たちの目の前に現れたのか、なぜ僕たちが探していることを知っているのか、なぜ僕たちを見つけられたのか。

僕としてはそれだけが気になっていた。


「あぁ?んなもん単純だよ、裏図書館で調べてからお前らを見つけるまで総当たりしただけだ。実に簡単なロジックだろ?」


「⋯⋯そう簡単にできるようなことじゃないと思うけど、君にはできるんだね」


「それは仕方ないよ虚言廻しチェーンメール、だって彼はあの風紀委員会から完全に逃げ切れる人物だよ?」


「⋯⋯断言できるの?」


「――――断言してやる、俺ちゃんならそれができる」


まるでそれが当然であるかのように、自信過剰と思わせない態度で、自信たっぷりの表情で、夕卜くんは言い切った。


僕はてっきり、風紀委員会が空鳴の部活公認を妨害するために、わざとできない仕事を寄越したと思っていたがどうやら違ったみたいだ。

考えてみれば風紀委員会はルールを敷く集団、それならば彼の能力であるというのは相性が悪い。


「それじゃあお喋りはここまでだ、そろそろ俺ちゃんとの戦いを始めさせてもらうぜ」


夕卜くんはそう言って、臨戦態勢に入る。

眼の前に危険な獣がいるみたいに緊張している。

気がつけば僕は浩一郎さんに渡された金属バットを硬く握りしめていた。

手にしているのは猟銃でもなければ拳銃でもない金属の塊だけれども、それでもこの震えを誤魔化すのには十分だった。


「いや、別に戦うつもりはないよ?」


「えっ」


「は?」


空鳴がいきなりそう言ったので、夕卜くんは間抜けな声を上げた。

そして当然、僕も驚愕する。寝耳に水だしそんなことは聞いていない。

一回たりとも聞いていないし、浩一郎さんからも聞いていない。


つまり空鳴はこの場で思いついたか、それか誰にも教えずにこの考えをそのままにしていたということだ。


「いやだって、ねぇ?あくまでも重要なのはであって捕縛が目的じゃないからね」


⋯⋯それは、まぁ、そうなのか?

一応、なんとなくは理解できるが納得できるかと言えば納得しにくい理論だ。

屁理屈とも言うかもしれない。


「屁理屈も立派な理屈だよ虚言廻しチェーンメール、相手をどうにか説得できればそれは立派な理屈さ」


「まるで詐欺師だね」


「それは君もだろう?」


⋯⋯まぁそれはさておき

僕は夕卜くんに向き合って尋ねることにした。


「夕卜くん、どうしてこんなに規則違反をしていたかを教えてくれると助かるんだけど、どうかな?」


「⋯⋯マジかよお前、この状況で聞くのか?頭イカれてんのか?」


そりゃまぁ、戦わないっていうなら僕としてはそっちの方が良い。

僕という人生は平穏無事に生きて行きたいものだ。

⋯⋯この学園に来ていて今更かもしれないが、それもまた仕方ないことである。


空鳴と僕の質問に彼はこう答えた。


「⋯⋯⋯一つだけ聞くけどよ、


「いやお願い、友達としての」


僕は即答した。

このお願いは規則でもなんでもない、ごくごく自然なだ。

仲の良い友達に文房具を借りるよう頼むみたいな、子供特有のくだらない心情を吐露するかのような、カウンセリングみたいに理論化されていない稚拙なお便りだ。


僕はどんな人間でも話が通じるなら友達になれると思っている。

たとえそれは犬や猫といった畜生生物だとしても、それもまた違った友だちになれると思っている。

それと同時に友達のまま喧嘩したり、仲直りしたり、はたまた殺し合えると思っている。

遍く人類は全て友達だ、話が通じるのならば。


「⋯⋯⋯⋯⋯」


僕がそう言うと、夕卜くんは黙ってしまった。

そしてしばらくして、漸く口を開いて話してくれた。


「⋯⋯⋯しょうがねぇな、じゃあ教えてやるぜ」


「あはは、ありがとう」


「つーか知らねーのかよあの噂、巷じゃその噂で持ちきりだぜ?」


この学園の噂というのは、果たしてどんなものなのだろうか。

七不思議のようなものなのだろうか?それとも都市伝説みたいなものだろうか。

僕がそう考えていると夕卜くんが答えを言ってくれた。


「なんでも願いを叶える願望装置がどこかにあるって噂だよ、文字通りにな」


⋯⋯実に胡散臭い噂である。

今どきの宗教家ですらこんな売り文句は言わないだろう。

もしかしてここの生徒はそういう噂話を真実だと信じ込めるほどに純粋なのだろうか?

それとも僕が疑り深い猜疑心の塊という真実が露呈しただけなのだろうか?


「おいおい、もしかしてだがそんな嘘っぽい噂話を本気で信じているのかい?もしもそうならば僕は憂いを抱かざるを得ないんだけど」


「⋯⋯まぁ信じれないのはわかるけどよ、如何せんこの学園はことがあるからよ」


「そうだよ、私みたいな能力すらあるんだしあっても何でもありだと思うよ?」


節操なしというか、なんというか。

この学園は本当になんでもありなんだなと感じた、少しは常識というものを考えるか配慮してほしい。


「非常識な生徒たちに常識を啓蒙してもねぇ?」


「まぁ、それは僕も同感だけどさ」


――――――――――――――――――――

あとがき

文字数ってどれくらいがいいんですかね、多ければ多いほど良い気がしますけれど。

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