俺は一体、何を撃ったんだ。

今日も無事、狩りを終えることができた。

俺の敵は、熊、狼、鹿、それと人間。

俺は密猟者である。

森の闇に紛れて、影を捉え、撃つ。

そして皮を剥ぎ、肉を削ぎ、生きる糧にする。

これが俺のライフスタイルであり、何人たりとも邪魔できない俺の生き甲斐だ。

まだ人を撃ったことは無いが、このままこの生活を続けるなら遅かれ早かれ、そういうこともあるだろう。

覚悟はある。

覚悟はあった、はずだった。


その日、その影は、明らかに大きかった。 

熊にしても大きい。有に2mはあるかという巨体。

狩りごたえがありそうだ。

心と銃を踊らせながら、まずは手始めに一発、脚に打ち込んでやった。

すると、

その大きなものは、

大げさなくらいに倒れ込み、動かなくなってしまった。


拍子抜けだった。

そもそも急所は外したつもりだったんだ。

せっかくの熱をどう冷ましたものか、

今日はあと二、三匹くらい狩っていくか、

そんなことを考えながら、その大きなものに近付くと。

それは、子供の死体だった。


「要するに、それは、僕になった、ということらしい」

意味がわからず、しばらく呆然としていた。

俺は、

俺は、子供を撃ったのか?

そんなはずはない。俺が撃ったのは2mはある大きな何かだったはずだ。

いや、ああ、影しか見えていなかった。

そのことに思い当たると、その考えを裏付けるかのように、2mくらいの、熊のようなシルエットをした木が倒れ込んできた。

しかし、さっきまで、そこに木はなかったはずだ。

そちらに一瞬気を取られ、子供の死体の方に視線を戻すと、

そこには何もなく、

後ろから、大きな影が差した。

そうだ。

最初から、太陽は俺の背の側にあったのに。

あそこに立つ何かが、影に見えるはずが無かったのに。

俺は一体、

「別に僕じゃなくても良かったんだろう。ただ、そいつが外を見回したときに、一番はじめに目についたのが僕だった、というだけで」

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