ターン3ー7:ストーカーに殺されて魔人になったので彼女の為に復讐を誓う。


「これってさ。マジックマスターズで広く使われているカードが魔術札として扱う事ができるようだな」


 そして発動を宣言したカードの効果の対象となった相手はリアルダメージを受ける事になる能力である事も理解できた。


――みだりにこの力を使う事はしないように気をつけよう。


 さらにそこから自分が得意とする戦術でどのようなアプローチができるのかについても学習をしていき、段階を踏んで自分自身が強くなってレベルアップしてゆくのを心と体で感じた。


――こうしていると、まるで異世界の魔法使い同士が面と向き合ってマジシャンズバトルをしているようにも思える熱いシチュエーション。ふたりの熱き魔法使い達が己のプライドをかけて戦うその様はまるで遊戯にも思える。


 AIで動く仮想的を相手にマジシャンズバトルを幾度なく繰り返してゆく。


「ふぅ、これで全部の技を習得した事になるのか」


 短くて長い大変な練習を終えた俺は、あずさに手渡しで受け取った飲料水のペットボトルの蓋を開けて口をつけて飲み干す。


「そういえば俺の魔人の力をどうやって知ったんだ?」

「パパが残してくれた手記と資料で知識を得たの」


――そういえばあずさの父親は行方が分からないんだよな。


 彼女の説明は一字一句逃さないように耳を傾けて聞くことに。

 あずさの父は失踪する以前から、この世界には存在しない不思議な言語の書かれた古文書や文献、それらにまつわる奇妙な形をしたオカルトアイテムの収集活動をしていたという。

 そしてあずさの父はある事を予見して、幼いあずさに気づかれる形で人目のつかない所に手記を書き残していたという。

 彼女はその内容の一部を抜粋する形で話してくれた。


『魔人がこの世界で目覚めたとき。世界は既に破滅の道を歩み始めている』


 死んだ人間が膨大な魔力の込められた魔道具カードに触れる事で、新たなる生命を宿すと共に邪悪な心と魔の力を持つ人間と生まれ変わる事になる。


――つまりそれが魔人という事か。じゃあ、俺も何らかの理由で魔道具カードに触れた事で魔人になったということになるな。


「それとね。魔人が世界を破滅に導こうとする時に。世界に眠りし勇者の名をもつ5枚のカードが世界を救うっていう話もあるの」


「おとぎ話に出てくる勇者が身につける武器や防具を意味した物なのか? つまりそれは魔王が誕生したのと同時に勇者も目覚めて世界を救う事になるっていう意味合いなんじゃ?」

「勇者物語……確かにしっくりくるね……」


 この手記でたとえ俺が『勇者』である事はまず無い。なんならその話に上がっている『魔王』に該当していると思うからだ。


「あずさのお父さん。心配だな」

「うちのパパは数十年前から行方不明で。今は何処にいるのかな。ママはうちを産んでくれた後に死んじゃったからいないんだよねー」

「俺も前に話したけど。俺も今は親が居ない。片親は生きてるが、何処で暮らしているのかも分からない状況だ」


――最近、風の噂でそれらしき人物が大陸の方へ行ってしまったとか。どうでもいい。


「とりあえず学校いくか」

「うちも必修科目の時間が近いし準備しなきゃ。ダーリンは玄関で待っててね。おめかしするから」

「あいよ。落ち着いてまってるわ」

「一応。念の為にデッキは用意した方が良いよ。よかったらうちのストレージルームのカード使っても良いよ」


 その提案には少し考える。


「持っていかない」

「どうして?」

「初日で全て学んだが。いざマジシャンズバトルをするときにさ。他人を下手に傷つけるような事はしたくないんだ」

「じゃあ、せめてこれだけでも受け取って欲しいな。ダーリンを守ってくれる素敵なカードを1枚。うちからプレゼントするね」


 ニコッと笑いながら指先の手品で取り出してきた1枚のカードを受け取る。


「摩天の鎧……持っていたのか。こんな貴重な最強の防具カードを……」

「これもパパが研究で残してくれた魔道具カードの一枚だね。真の所有者ならそのカードの使い方が分かるらしいから。もしもの時はそれを使うと良いよ」


――ようはお試しでやってみろってか。


 受け取った摩天の鎧のカードテキストを読み解く。


――アーマードマジック『摩天(まてん)の鎧』

【・このカードの発動宣言時。発動者に装備する】

【・このカードを装備しているプレイヤーは一度だけアクションフェイズで宣言されたカードの効果を受けない】

【・この一文を読み解きし者よ。勇者のカードを全て集めよ。世界は滅びに近づいている】


 末尾のテキスト文には何かの暗号に近しいフレーバーテキストが記載されている。


「解読した。あと使い方も一応は理解できたかな」


――実際にこれを使用するような場面には遭遇したくはないが。その時は全力を尽くそう。


 過去に出会ったある人物に教えられ、俺は最後まで諦めずに戦う事を信条としている。


 そしてその後に『摩天の鎧』は姿を変えてアーマードマジック『勇者の鎧(ブレイブ・アーマー)』へと変化した。

 この鎧のカードのように、勇者のカードは一般に流通しているマジックマスターズのカードであるかのように見せるための偽装加工が施されているようだ。


――収集して何になるかなんて判らないが。とりあえず何かの縁だし大事にしよう。

 その後。俺とあずさは大学の講義に出席する為にシェルターを後にした。

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