文化祭

俺はお嬢様の様子を見たあと自分の教室へと戻っていた。


「どこに行ってたのですか?」

「お嬢様のところですよ。執事としてお嬢様の様子を見るのは当然ですからね」

「それにしては、そういった行動をとるのは時々しか見ないのですけどね?」

「あはは……」


俺の事をずっと見ているような言葉にゾッとしてしまった。

というより最近ずっとペトラといるように感じてきた。

だからなのかわからないが、日に日にお嬢様の視線がなぜか痛くなってきている。

……いや、気の所為だな。


「劇についてはなにか考えていますの?」

「いえ……というより、まだ決まってもいないので。劇にもし決まったなら考えようかなと。私が出した案なので」

「でしたら、どのような劇にするのか考えないとですね」

「…まだ劇と決まっていないので今すぐは……」

「あら、今ルイ様が仰ったではありませんか。――と」

「そう仰りましたけど……出し物の意見を出すのは明日ですし……」

「まぁまぁ細かいことよろしいではありませんか。決まったとしても、そうじゃなくても先に考えて損はないと思いますよ?」


ペトラはそう言いニコニコとした表情をした。

まぁ確かに劇なんて大掛かりな出し物は先に考えたほうがいいかもしれない。


「そう……ですね。ペトラ様のおっしゃる通りです」

「では、劇のテーマを決めましょうか。私としてはやはり定番な勇者と魔王の物語がいいと思いますね」

「ええと……勇者が姫を救い出すために仲間を集め、魔王を倒すという内容ですよね?」

「ええそうです。やはりあの勇者が姫と再開するシーンはなんといっても感動します」


手を祈るように合わせて、妄想に浸るように目を輝かせた。


「……とても憧れがあるような感じですね」

「ふふ。……では、ルイ様はどんな劇をお考えでしょうか?」

「そうですね……。 パッと浮かばないですね……」


そもそも劇なんて観たこともないから、あまり想像ができないな。

やはりペトラが言っていたものにするか……。


「今決めたほうが色々良かったですが、いきなりは出ないですね。でしたら、王都で開催される劇を見に行ってみたらどうでしょう? 明日は意見を聞くだけですし、中身はまだ期限が長いですので」

「そうします」


劇…か。

確かにこの機に行くのもアリだな。

一人で行くか。

……ああいや俺は執事だからそんな身勝手な行動はできなかったんだった。


「では、待ち合わせはどうしましょうか」

「……なんでペトラ様と行く前提なっているんですか」

「冗談ですよ。私もこれからやらないといけない事が出ましたので、残念ながら行けないのです」

「やはりお嬢様と…ですね」


俺は執事だから一人では行けないがお嬢様となら観に行くことはできるだろう。

まぁ最近のお嬢様と二人きりは色々危ないかもだけれど。


「……羨ましいですね」


ペトラが何かをボソッと言った。


「何かを言いました?」

「いえ、何でもありませんよ」


最後の講義も終わり、それぞれ帰宅することになった。

俺はというといつも通り、校門でお嬢様を待っていた。

数十分待ったところお嬢様の姿視界に捉えた。

だが、何やら様子がおかしい。

凄く不吉な予感を感じた。

遠くからでも分かる負のオーラを纏っている。


……いや、遠く…?


何故かお嬢様はすぐそこにいた。


「……お嬢様どうされましたか…」


そう俺が呼びかけると、もっと不吉な予感は深まった。

どうやら言葉の選択肢を間違えたらしい。


「んー? どうもないなー」


心なしかいつもと違う雰囲気だ。

この雰囲気は何処かで見覚えがある。


「お嬢様、取り敢えず帰りましょうか」

「うん、そうだね。 帰ってから…ね」


俺達は馬車に乗って帰路へと進んだ。

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乙女ゲーに転生した俺が主人公【ヒロイン】の執事になった。主人公はいつのまにかヤンデレ化していた件について。 ふおか @Haruma0000

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