お嬢様の静かなお怒り

玄関先の広いフロアのど真ん中で、お嬢様が立っていた。


「今日は随分と遅かったね? ルイ?」


また、これかよ……



……

………



「それで? ちゃんとした言い訳は考えられたかなぁ? ル、イ?」


只今、俺はお嬢様の部屋で正座をしている。

眼の前には俺のお嬢様こと、シャルロットが暗い表情で腕を組みながら立っていた。

ただ救いなのは、前ほどのヤバさは無かったことだ。


「遅れてしまいすみません、お嬢様…」

「お嬢様を放ったらかしにする執事がどこにいるだろうね?」

「…………」

「で? なんで遅れたのか説明してほしいのだけど?」


はてな、が多いのは気の所為だろうか。


「……ペトラ様と文化祭についてお話をしていたところ、長く話してしまったせいか外はすっかり暗くなっていたので見送りをしようと――――」

「うんうん、正直に話してくれて私としては嬉しいよ」


お嬢様は縦に顔を振った。

そして暗い表情がだんだんと元に戻っていった。

どうやら許してくれたらしい。

何に対してかは知らないけど。


俺がホッと息をついたとき、ふと思い出したことがあった。


「そういえば、お嬢様は文化祭誰と回るおつもりですか?」

「おや? ルイは私が誰と回るのか聞きたいのかなぁ?」


先程の表情とは180度違い、ニヤニヤとした表情で俺に言葉を返した。


「…そうですね」

「それは勿論、ルイとだよ」

「そうですかレオン様……と……」


え?


「え? なんでレオン?」


何故だ? ストーリーが違う? どうして…

いや…前にもこんなことは何回もあった。

ただ、今回は大イベントの文化祭だ。

なのに、そのイベントがレオンではなく俺に?

そもそもなんで俺が……


「あ、いえ…レオン様と仲良さそうでしたので、てっきり文化祭は一緒に回るのかと」

「はぁ、そうだよね周りからは仲良さそうに見えるよね。…でもそんなこと全然無いから!」

「そ、そうですか」

「あ、でも文化祭一緒に回らないかと聞いてきたけど断ってやったよ」


ふふん、と顔をニコっとさせた。


「ですが何故執事の私と周るのでしょう? 私と周るより他の方々と周っては如何でしょうか?」


この発言が失言だったのか、お嬢様の顔がみるみる変わっていった。


「なんで? なんでルイと周っちゃいけないの? ………もしかしてあの女?」

「い、いえそういうことではなく。いつも一緒にいるのですから、年に一回しかない文化祭ではご友人と一緒にと思いまして…」

「だからだよ。年に一回しかないからルイと周るの。それともルイは私と周りたくないの?」

「いえぜひご一緒に周らせてください」

「はいっよろしい」


また表情が戻った。


「あ、すみませんお嬢様、時間ですので仕事の方をしてきますね」

「うん」


俺は少しの冷や汗を掻きながらお嬢様の部屋から出たのだった。




――――――――――――――――――――


短いですが許してさい。

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乙女ゲーに転生した俺が主人公【ヒロイン】の執事になった。主人公はいつのまにかヤンデレ化していた件について。 ふおか @Haruma0000

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