悪役令嬢

そして一週間が経った。

俺、お嬢様で現在馬車に乗っている。

公爵は別の馬車に乗っていた。


「うぅ····行きたくないなぁ〜」


お嬢様がそんな言葉を吐いた。


「前までは、ノリノリでしたよね」

「そうなんだけど····社交界って異性と踊ったりするのよね····」

「そうですね····もしかして踊るのは苦手ですか?」

「うん····まぁそんなとこ」


珍しい····お嬢様は大抵のことは完璧である。

頭も良く、魔法においてもそこらより強い。

流石主人公ってとこだな。


そう会話を繰り広げていたら、いつの間にかその目的地へと着いた。

俺は先に馬車から降りて、お嬢様の手をとり

エスコートするように馬車から降ろした。

そして、馬車から降りたとき眼の前には、

白いレンガを壁とした大きな屋敷がそこには建っていた。


「大きいですね」

「そう?家の方が大きいと思うけれど····」


それはそうでしょうね!とツッコミそうになった。

その後少し遅れるように公爵も馬車から降りた。


「では、中に入ろうか」


公爵が足を進めた。

俺達も足を進め、中に入った。

中に入ると、外と同じ色をした壁に囲まれ、

真ん中には赤い絨毯ジュウタンが引いている。

天井も広く、明かりとしてシャンデリアが吊るされていた。

そして、貴族のお偉方が沢山いた。

その貴族達から一気に視線がこちらの方へ向いた。

お嬢様の身分というのも、貴族としての位は高い。

なぜこの貴族の執事になれたのか今でも疑問でしかない。

そうして視線を浴びる中、周りとは雰囲気が違う一人の男性がこちらに近づき、公爵に挨拶をした。


「こうして会って話すのは初めてですよね」

「あなた様は····ロイド・マーシル様ですか?」

「よくご存知で」

「ご存知というより、この国ではあなた様を知らない人は居ませんよ」


まさかこんな早い時期に出会うとは····こんなイベント無かったぞ···

この人は誰か、

ロイド・マーシル。王国の血縁者であり、次期国王である。

と、それは俺にとっては重要ではない。

最も重要なのは、その息子の方だ。

その息子は、この世界【あるれい】の攻略対象キャラだ。

その親がここに来ているということは····


「そうだ。私の息子を紹介しよう」


そして、周りとは雰囲気の違う少年がこちらに来た。


「初めまして、私は、アレク・マーシルと申します。以後お見知りおきを」


【あるれい】の攻略対象の一人。

アレク・マーシル。

金髪の短い髪に緑の瞳。

顔立ちは整っており、魔法の才能もある。

いわば、イケメンだ。

といっても攻略対象全員イケメンだけどね。


「シャルロット、君も」


お嬢様は、片足を斜め後ろの内側に引き、もう片方の足の膝を軽く曲げ、背筋は伸ばしながらスカートの裾を両手で軽く持ち上げた。


「初めましてアレク様。

私はシャルロット・レヴィアと申します。会えて光栄でございます」

「いや、こちらこそ丁寧に挨拶をありがとう」

「挨拶も済んだことで、私達は他の貴族方に挨拶をしてくる」


と公爵は言った。

公爵とロイドは向こう側へと向かった。

そのとき、アレクが俺の方に顔を向けた。

いや向けんなよこっちに···イケメン過ぎて眩しいんだわ····


「そちらの執事は····」


おっと····ロイドは俺のことを普通の執事と思っていたから俺に自己紹介を求めなかった。

だから、アレクも俺に言葉を向けないと思ってたんだが·····

攻略対象と無闇に関わるのもいけないな。


「いえ、私はの執事ですのでお気になさらず」

「ただ····ねぇ····」


アレクは不思議そうに俺を見ていた····

····待てよ?これはチャンスではないか?

お嬢様とアレクがこのまま話し合い、向こうに行ってくれれば、俺一人の時間ができる。


「アレク様。無礼を承知ですが、お嬢様と一曲踊ってはどうでしょう」

「え?」

「ふむ、確かにそれはいいな」

「ちょ―――」

「ではお嬢様、私はあちらの方で待っているので、どうぞごゆっくり」

「執事殿感謝する····行こうか、シャルルお嬢」

「は、はい····」


よし!無理やりおせたぞ!!

やっぱりゴリおしは正義だわ。


····さてどうするか。

あまり貴族とは無闇に関わらない方がいいよな。

取り敢えず端っこに····って····!

俺の眼の前に人に押され転びそうな少女がいた。

俺はその少女の方に走った。

そしてそのまま体を支えた。


「大丈夫ですか?」

「あ、ありがとうございます」


少女が体勢を整えたので俺は手を離した。


「次からは周りに気を付けた方が良いと思いますよ。では····」


俺はそう言いこの場から離れようとしたら、


「ちょ、ちょっと待ってください!」

「なんでしょう?」

「助けてもらったのにお礼をしないのは····」

「いえ大丈夫ですよ。当たり前のことをしただけなので」

「じゃ、じゃあ名前だけでも」

「そこまで言うのなら····良いですよ。

私はルイ・アルデヒドと申します」

「ルイ様····ですね」

「様は別に付けなくても····身分的には私が下でしょうし····」

「いえ、様は絶対付けます。絶対に」

「そ、そうですか」


圧が凄い····


「では····私はペトラ・ラミレスと言います」

「ペトラ・ラミレス美しい名前で―――」


え?ペトラ・ラミレス?

ペトラって····あのの?

まじ?

俺は唖然としていたのだった。


――――――――――――――――――――


沢山の方々読んでいただきありがとうございます。

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