そして、2年後

俺はお嬢様をここから連れて、屋敷に戻った。


「シャルロット!?無事だったか!」

「うん!ルイが助けてくれたの!」

「そうか、ルイ本当に感謝する」


公爵は俺に頭を下げた。


「いえ、大した事ではありません。お嬢様を助けるのは私の役目ですので。なのでどうか頭を上げてください」

「今回の件で借りができた。なにか欲しい物などあるか?」

「そうですね····」


俺は考えた。

今回の件で俺に公爵は借りができた。

そうだな。その借りは、またなにかで返してもらおう。

今欲しい物は無いからね。


「その借りはまた今度にします」

「そうか分かった。借りはそのときに返す。」


でだ。と公爵は言葉を続け、シャルロットに視線を送った。


「シャルロット、なんでルイの腕をずっと組んでいるのだ」


そう····お嬢様は今俺の腕を組んでいる。

ここに連れて来る途中ずっと俺の腕を組んでいた。

もちろん、俺に許可は取ってない。

気づいたら、ね····


「え!?ダメなの!?」


と、自分のやってることに気づいていないらしい。


「取り敢えずお嬢様、公爵様の前ですので離してくれませんか?」


俺が小さく離してくれと伝えると····腕を組む力が強くなった。

どのくらいって?そりゃあ腕がもげそうなくらい····

ってめっちゃ痛い····!!


「なんで?離さなくてよくない?あ、もしかして逃げようとしてる?ねぇ····」


お嬢様の紅い瞳に光が無くなって、その瞳には俺しか写っていなく、吸い込まれそうだった。

俺は、なぜか恐怖を感じた。


「い、いえそういうわけでは····」

「じゃあいいじゃん」

「公爵様の前ですし、一旦離しませんか?

後でいくらでもしていいですから。あと痛いです」

「痛いなら····しょうがないね····」


お嬢様は素直に離してくれた。

お嬢様の言っていることに、いちいち耳を傾けてたら身が持たない。というか痛いならってなんだよ、痛いならって·····もう聞かなかったことにしよ。


「お嬢様は先程の事が怖かったようで、私の腕をに組んでいただけです」


俺が公爵にその事を伝える途中でお嬢様から不満の声が聞こえたが無視した。


「そ、そうか」


公爵はなにか複雑そうな顔をしていた····


そして―――それから2年の月日が経った。

俺は12歳となった。

いや、俺だな。

12歳になると、貴族同士の交流、いわゆる社交界に参加しなければならない。

まぁ俺ではなく、だけどね。

俺は執事ではあるが、子供である。

社交界には執事として参加できないだろう。

というか参加したくない。

理由?それは、お嬢様と少しでも離れたいからだ。

何故かお嬢様はあの事件からずっとやたら距離が近いし、一人の時間がない····

正直キツイから今回の社交界で少しは一人の時間になりたい。


と、そう考えていた時期も俺にもありました。

今俺は公爵に呼び出されていた。

そして、公爵から、


「ルイ。君も執事としてシャルロットと一緒に社交界に行ってもらう」


うん····は?って危うく声に出そうだった。


「な、なぜです?執事と言えど、私は子供です」

「そうなんだが····シャルロットがね、君が一緒に行かないなら行かない、とだだをこねてしまってね····」


マジかよ····そこまで悪化しているのか····

取り敢えずなんとか····って言い返す言葉ねぇわ。


「わ、分かりました····」

「では社交界は一週間後だ」

「はい····」


はぁ。最悪·····


「あ、ルイ!!」


俺は公爵の執務室から離れ自室に戻ろうとしたが、廊下奥から今回の件の元凶の声がした。

俺は歩いていた足を一歩····


「お、お嬢様····」


その瞬間、お嬢様の瞳に光が無くなり、殺気が洩れ出た。


「は?ねぇなんで私を見た瞬間一歩下がったの?ねぇ」

「あ、いえ―――」


逃げようとしたとき、腕を掴まれた。

解こうとしたが力が強くてびくともしなかった。


「なんでまた逃げようとしてるの?おかしいよね、主から逃げる執事なんていないよ?」

「····逃げようなんて滅相もございません。ただ用事を思い出したので····」

「本当に?」

「はい····私は嘘をつきません」


嘘です、ばりばり嘘ついてます。

いやだって本当のこと言ったら殺されそうだもん····

前はあんまだったけど、最近のお嬢様は俺より強く感じる····


「····うん!ならいいよ!許してあげる!」

「そ、そうですか、ありがとうございます」


ほっ、と胸を撫で下ろした。

というか今更思い出したけど、お嬢様って主人公だよね?

なんか性格変わってない?

まぁ気のせいか。


「そういえば、ルイは社交界行くよね!」

「はい、行きますよ」

「やったぁ!ルイと一緒に行ける!」


とても嬉しそうにしていた。

俺なんかと行ってなにが楽しいのやら····


俺は知らなかった····この社交界で主人公ことシャルロットのがさらに大きくなることに····


____________________


何故か代表作より伸びました。

息抜き作品なのに····

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る