乙女ゲームの主人公
「こらシャルロット、少しは自重しなさい」
「ごめんなさぁい」
「元気があることは、とても良いことだと思いますよ」
「そう言っていただいて、ありがとうございます」
親たちが楽しそうに会話している間、俺は固まっていた。
「ルイ、ぼーっとしてどうした」
「あ、いえ何でもございません。ただシャルロット様に見惚れていただけです」
「へ?」
何故かシャルロットは頬を赤らめていたが、それどころではない。
少し、冷静になろう。
今は10歳ではあるが、
シャルロット・レヴィア、【あるれい】の主人公であり、長い金髪に紅い瞳の美少女だ。
性格的には明るく、誰とでも仲良く出来る。
とまぁ色々完璧な存在なのだが····
【あるれい】のストーリーでは、主人公の執事なんて居なかったはず····
俺が転生したことによって少し変わっている?
いや気にしててもしょうがない。
どちらにせよ、この主人公の執事になるのだ。
「では、改めて宜しくお願い致します。お嬢様」
お嬢様呼びは慣れないな。
「よ、よろしくね!ルイ!」
そうして、自己紹介が終わり、執事としての仕事内容、部屋などを教えてもらった。
俺の親は、シャルロ――お嬢様のお父様、公爵と少し会話し、帰った。
「ルイ、執事として仕事をちゃんとこなしなさい」
「はい」
――それから数日が経った。
執事としての仕事を俺は完璧にこなしていた。
そして今、俺はお嬢様を起こそうとしている。
「お嬢様。朝でございます。起きてください」
「むにゃ〜····ま、まだ····10分後に起こして〜····」
お嬢様は朝が苦手のタイプだ。
「それ毎回言ってますよね」
「ん〜?そんなこと····いってないにゃぁ〜」
というか····可愛くてつらいんだが····
なんだよ、むにゃむにゃって、現実で言う人初めて見たわ!
っといけない、早く起こさねば、
「お嬢様?起きないとあのこと公爵様にいいますよ?」
「はっ!!起きたっ!起きたからそれはお父様に言わないでぇ!」
「では、いつも早く起きれるようにしてください」
「そ、それはぁ〜····ちょっ、ちょっとぐらいなら寝ても····」
「駄目です」
「そ、そんなぁ〜ルイ酷いよぉ····」
これは、決して虐めてるわけではない。
朝の苦手を克服させるためだ。
「はいお嬢様、髪を梳かすのでそこに座ってください」
「うん、分かった····」
俺はお嬢様の髪を梳かした。
それから朝食をとった。
「お嬢様、大事な用事があるので先に失礼しますね。代わりはメイドがしますので」
「用事って?」
「秘密です」
ええと聞こえたが、言っても面白いことではないので言わなかった。
そして俺は一度部屋に戻り、動きやすい服装に着替え、剣を片手に持ち、外に向かった。
用事とは、剣の修行だ。
これだけは執事になったからと言っても外せないことだ。
剣を握ってから結構な時間が過ぎた。
「今日はここまででいいか」
俺は汗をとるために、部屋に戻り体を拭いて、いつもの服装に着替えた。
そして、お嬢様の方へと戻ろうとしたが、
お嬢様が居なかった。
そう思っていると、屋敷の廊下奥からメイドが走ってこちらに来た····
「ルイ様!お、お嬢様が攫われました!」
「攫われた!?どういうことですか?!」
「じ、実はお嬢様はルイ様の用事を見ようと外に出てしまい、その隙に攫われてしまったのです····」
それって俺のせいじゃないか····!
ま、まずい····
とういうか、こんなイベントあったか?
取り敢えず、公爵の話を聞かなければ····!
「公爵様はどちらに」
「執務室におられます」
俺は急いで執務室に向かった。
そして執務室の扉をノックした。
中から声がしたので中へと入った。
そうすると、公爵は冷や汗をかき、冷静を保っているように見えるが、かなり焦ってそうだった。
「公爵様、誠にすみません。私の不注意で····」
「いや····君のせいではない····私の警戒が甘かったようだ····」
「そんなことは····」
謙遜しあってる暇はない····
どうすればいいか、考えなければ····
「公爵様、お嬢様の居場所はわかっていますか?」
「ああ、一応な、シャルロットの右腕に付けているブレスレット、あれは発信機のようなものだ。しかし今、兵を動かすことが出来ない。
動かすには国王への手続きが必要だからな····」
兵を動かせないのか····
でも居場所が分かっている····なら····
「それなら私がお嬢様を助けに行きます」
「無理だ、相手は我々からシャルルを攫った奴らだ。相当の腕前の持ち主だろう」
「だからと言って、ここで指を咥えて待ってろってことですか?私には無理です」
これは、俺のせいで起きたことだ。
しかも主人公が攫われたとなればもっとまずい。
主人公はこの世界において、とても重要な存在なのだ。
だから絶対に酷い目にあわせてはいけない。
俺は公爵に鋭い目をおくった。
「····分かった。シャルロットの居場所を教える。だがくれぐれもヤバかったら退け、いいな」
「はい、ありがとうございます」
俺は公爵からお嬢様の居場所を教えてもらい
助けに向かった。
そうして俺はお嬢様が捕らえられている所に着いた。
ボロボロの屋敷の中に地下があった。
その地下に行くと、薄暗い広場へと繋がっていた。
そして、その広場には数人の男と、縛られているお嬢様が居た。
「誰だ、ガキか?」
男達の一人が喋った。
「今すぐお嬢様を開放してください」
「するわけねぇだろ?こいつはいい金になる。しかも見た目もいい」
ゲス共が····俺はこういう奴らが大嫌いだ。
「お嬢様を開放しなければ····」
俺は、虚空から剣を出した。
「しなければ?なにがあr―――」
その刹那シュンと風を斬る音と共に、男一人の頭が落ちた。
「こうなります」
俺は殺気を出し、そいつらを睨んだ。
「クソガキがっ!!」
なにか喚いていたゲスに、
俺は剣を素早く構え、地を蹴った。
「なっ!?消えた!?」
「後ろだ」
奴が振り返った瞬間、俺は剣でそいつを斬った。
「化け物か!?貴様は!」
生き残っているゲス共は魔法を打ってきたが
それら全てを避けた。
そのまま、一人、二人、三人と斬り捨てた。
そうして最後の一人を斬った。
「はぁはぁ、疲れた····」
流石に動きすぎた····
取り敢えず、お嬢様の安全を確認しないと····
「お嬢様、ご無事でしょうか」
お嬢様は気絶していたが徐々に目を開けた。
「ル、ルイ?た、助けに来てくれたの···?」
「はい、当然でございます。私はお嬢様の執事なのですから」
そうすると、お嬢様は涙を流した。
「ルイィ゙ィ゙!!ありがとぉ!!」
それから、お嬢様が泣き止むまで時間がかかった。
「ルイ····ルイはずっと一緒に居てくれるよね····?」
「はい、お嬢様がよろしければ」
俺は最大限の演技を見せた。
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