第十七話 気が付きゃ木曜、相当重要 その2
夕方。
地下室のリビングに俺は訪れた。
「なんだこりゃ」
そこにいたのはソファーに寝転がる日彩。そのソファーに背を預け座っている佐藤。
テレビの前で何やらゲームのセッティングをしている彩海。
キッチンでなにかを調理している咲良。
美少女四人がそこには居た。
「よ~。元気してるかマッツン」
「日彩……こりゃ一体なんの集まりだ?」
「ミズキチとあたしで作ったゲームのお披露目会。まぁゲームって言ってもゲーム制作ソフトで作った簡単なやつだけどね」
「キャラデザとキャラ設定は日彩、声優は亜金、残りは全部私がやった」
彩海は俺に目も向けずに言う。
正直気まずい……賭けとはいえ、あんなことやこんなことをしたからな。
「クッキーできたよ~」
咲良が皿にクッキーを乗せて持ってくる。
「楽しみだなぁ~。全キャラ私が声を担当したんだよ」
「凄いね亜金ちゃん。8キャラもいたんでしょ?」
「うん! でも楽しかった! 結構自信あるよ」
テレビと彩海が持つPCが同期し、テレビにPCの画面が映る。
「はい」
彩海が俺にコントローラーを手渡してきた。
「いいのか? 最初に無関係な俺がやっちゃってさ」
「別にいい。むしろ何も知らないあなたの反応が見たい」
「よっしゃ! じゃあ相手はあたしがやろう!」
俺と日彩はソファーに座り、コントローラーを握る。
ゲームタイトルは『エンジェルズ・バトル』。天使たちが戦う格ゲーのようだ。
PVP(プレイヤー対戦)が選択され、キャラ選択画面に移行した。
キャラは8体。全員女子で、可愛い。これ全部日彩が描いたんだよな……やっぱコイツ、人物絵バリうめぇ。
「あたしはこのサンデーちゃんにしよう」
日彩は黒髪巨乳のキャラを選ぶ。
「じゃ、俺はコイツ……フライデーちゃんにする」
俺は金髪巨乳のキャラを選ぶ。
キャラ選択が終わり、ステージを選択し、戦闘が始まる。
『うりゃ! そりゃあ! やあ!』
適当にボタンを押すと、キャラがパンチやキックを繰り出した。その際同時に聞こえる声は全部咲良らしいが……凄いな。言われないと咲良の声とはわからない。
俺の使っているキャラはおしとやかなタイプ。一方、日彩の方はやんちゃなタイプだ。違うタイプの声を咲良はうまく演じ分けていた。
お互いに操作を確認し、俺と日彩は目を合わせる。
「そんじゃま、始めますか」
「やるからには全力だぞ日彩。ぶっ倒す」
戦いが始まる。
「おら! くらえマッツン!」
「いって! つーかなんだコレ!? ダメージ喰らったら服が破れたぞ!」
「このゲームはダメージを受けるほど服がなくなっていく。最後は全裸」
「なんて下品なゲームだ!」
「全部日彩の提案」
このゲーム性については知らなかったのか、佐藤は顔を赤くして、手で顔を隠してしまった(けど指の隙間からゲームは見てる)。
『やんっ! いたい! やめて! これ以上はっ! やっ! あん!?』
ダメージを負うにつれ、キャラの声がなんか……喘ぎ声みたいになってきた。
この声、咲良なんだよな? そう思うとなんか……。
「ちょ、ちょっと日彩ちゃん。早くとどめさしてよ!」
自分の艶声に耐え切れなくなったのか、咲良が優勢である日彩に言う。
日彩は小パンチや小キックでジワジワと俺のキャラの体力を削っていく。
「まだまだ~。じっくり嬲ってやんぜ」
『あんっ! やんっ!』
「クソ! 手も足もでねぇ!」
「ヒラ君手抜いてない!? さっきより動き悪い気がするんだけど!!?」
『みゃっ!? だめっ……!』
格ゲー――もとい、咲良の羞恥ゲーを夜遅くまでやった。
---
「結局、なんで俺をこの会に誘ったんだ?」
ゲームを終え、地下室から出た俺と佐藤は近くのコンビニに用があったため、二人で街道を歩いていた。
「異性を描くなら異性を知るのが一番。私たちと交流すれば異性を知れる……と思って呼んだのですが、ちょっと予想と違った感じになりましたね……」
「日彩が暴走してめちゃくちゃになったな。途中からただ咲良を辱めるゲームになった」
「……他人事のように言ってますが、平良比さんもノッてましたよね?」
佐藤は「むー」と俺をジト目で見上げる。
「エッチな人は嫌いです」
「……ごめんなさい」
「でも、良かったです。平良比さん、やっと力が抜けたみたいで」
「え?」
「はじめて会った時からずっと、顔に力が入っているように見えました。でもいま、ようやく顔の力が抜けたような気がします」
そう、なのか?
自分ではよくわからないけど。
「……」
確かに、ふざけまくったおかげで、息苦しさが少し――無くなった気がする。
――――――――――
【あとがき】
『面白い!』
『続きが気になる!』
と少しでも思われましたら、ページ下部にある『★で称える』より★を頂けると嬉しいです!
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何卒、拙い作家ですがよろしくお願いします!
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