第11話「お祭りと思う心」
「ねぇ!みんなでお祭り行こうよ!!」
そう言い出した美穂に女性陣はノリノリでOKを出し、和真は渋い顔をした。何故なら彼はインドア派だからだ。特に夜はゲームをする時間に費やしているから余計に嫌だった。
「ねぇねぇ和真君〜そんな渋い顔してないで〜一緒に行こうよ〜」
「俺は元々アウトドア派じゃないんだよ、それに夜はゲームをしていたい」
「あたしもアウトドア派だけど祭りは年に1度なんだから行きたいじゃん」
「でもなぁ・・・人混みは苦手なんだよ・・・」
「そういうのもまとめて治していくということで!行きましょう!」
女性陣が和真をじっと見つめている。和真はその圧に負けて了承した。
「あ〜も〜分かった分かった!そんなに見るな!」
「やた〜!じゃあ祭りの準備しといてね!」
祭りの日は今から3日後、まぁ、3日なんて直ぐに過ぎてしまうものなのだが。
「と、言うわけで〜、3日後!到着〜!」
「1人で何やってんだ?」
「3日前からテレポート的な?」
「アホか、馬鹿やってないでさっさと回るぞ」
「まだ黄美子ちゃんが来てないよ!」
「はぁ・・・はぁ・・・ご、ごめん!お待たせ!浴衣着るのに時間かかっちゃって・・・」
「ん〜ん!全然気にしてないよ!てゆうかその浴衣超可愛いね!黄色凄い合ってる!」
「え、えへへ、そうかな?」
「そだよ〜、それにぃ、みんなも気合い入れてきてんねぇ〜」
「当然、祭りといえば浴衣でしょ。ウチは全力でいく」
「私は母さんに着させられた」
「あたしも〜・・・」
「黒川の黒い浴衣、似合ってんな」
「なっ・・・」
「え〜私達は〜?」
「似合ってるよ、でも黒色の浴衣なんて滅多に見ないから目に止まったんだよ」
「まぁ、確か黒色が似合うって中々居ないよね〜」
「お人形さんみたい」
「黄美子!頭撫でんな!子ども扱いするな!」
「あ、ご、ごめん・・・つい・・・」
「とりあえず早く回ろうぜ」
「そういえば和真君は浴衣着なかったんだね」
「俺ん家は祭りとか行かないからな、両親は忙しいし、姉貴は基本的に家でダラダラしてるし、俺だってゲームしてるからな。だから浴衣なんてものはない」
「ざ〜んねん、見たかったなぁ〜和真君の浴衣姿」
「何の得があるんだよ」
「ん〜、私得?」
「・・・なんだよそれ」
ひとまず、全員で夜店を回ることにした。定番のたこ焼きやりんご飴、かき氷などを買って食べて話しながら沢山笑って楽しい時を過ごした。そして19時58分になった時、美穂が急に立ち上がった。
「あ〜!忘れてたぁ!」
「な、なんだ!?どうした!?」
「みんなは分かってるよね!?私、先に和真君連れてくから!」
美穂はそういうと和真の手を引いて走り始めた。
「ちょっ!お前!どこ行くんだよ!」
「行けば分かる〜!」
美穂はどんどん山の方へと向かっていく。和真はただ黙って美穂に手を引かれ走っている。そして、山の少し来たところでようやく止まった。
「はぁ・・・はぁ・・・ここに、何があるんだよ!」
「ほら!見て!始まるよ!」
「え?」
その時だった、眩しい色鮮やかな光が見えた後、ドンッ!という体に響き渡る重々しい音が聞こえた。
「・・・花火、か?」
「そう!花火〜!綺麗でしょ?ここから見る花火が1番綺麗なんだよ〜!」
そういう美穂の横顔を和真は見ていた。
「綺麗だ・・・」
「ん?何か言ったぁ!?」
「・・・いや!なんでもない!!」
「美穂早すぎ!」
「さ、流石、行動力の塊だね」
「つ、つらぁ・・・」
「はぁ・・・はぁ・・・インドア派を走らせないでよ・・・」
「あ、みんなぁ!ごめんごめん!和真君にこの景色を見せたかったからさ!」
すると、黒川が美穂と和真の繋いでる手を見て言った。
「・・・ねぇ、いつまで手、繋いでんの?」
和真はハッとして手をサッと引いた。
「あ、気付かなかった、ごめんね」
「・・・いや、別に・・・いい」
花火がみんなを照らす。花火の音が鳴り響く。・・・和真の胸の鼓動をかき消して。
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