第4話「赤城美穂の秘密」

体育の授業中、風間達が小声で話しかけてきた。


「和真、和真」


「んだよ、授業中だぞ?山下に見つかったら外周走らされるぞ」


「そんなことどうだっていいんだよ!なぁ!お前らもそう思うだろ!?」


「そうだぞ和真、お前だけ美味しい思いをしやがって!」


「ぼ、僕は怒られるのやだから黙っとく・・・」


「臆病者め!俺達は行くぞ!」


「そうだそうだ!和真!俺達はお前を許せない!」


「なんで俺が大罪犯したみたいになってんだよ」


「大罪だよ!お前は大罪人だよ!クラスのマドンナといい雰囲気になりやがって!」


「どこがだよ」


「毎回赤城さんに呼ばれて一緒に部活行ってるだろ!」


「しょうがないだろ、呼んでくるんだから」


「彼氏か!」


「違うわ」


「っておい、あっち見ろ!赤城さんが!」


和真が言われた方を見てみると離れた場所で授業を受けていた女子達の中で赤城だけがこちらを見ていた。そして、和真に対して笑顔を向け手を小さく振っていた。


「赤城さんが俺に手を振ってくれたぞ!」


「いやいや!俺だって!!」


「おい、風間、津川、お前ら外周10周回ってこい」


「ほら、馬鹿みてぇに騒ぐから・・・」


風間と津川がハムスターのように外周を回っているのを和真は哀れな者を見る目で見ていた。そして放課後、赤城と一緒に部室へと向かった。そしていつものようにグダグダと時間を過ごしていた時、和真はふと気付いた。


「そういえばさ、赤城はどうしてそんなにSPLASHに詳しいんだ?」


「ん〜、知り合いに詳しい人がいるから私も詳しくなっちゃったって感じ」


「ふぅん?」


そして、部活が終わり、赤城は家へと帰宅する。


「ただいま〜・・・ふふっ、ただいまパパ」


赤城は父親が映る写真を大切そうに見ていた。


「私ね?今日も楽しかったよ・・・」


「おーい、パパが仕事で部屋からあんまり出てこないからって死んだみたいな扱いするな〜泣くぞ?」


「あれ?パパ、もうお仕事終わったの?」


「おう!SPLASHの新作書き下ろしたぜ!」


「じゃあ私にも見せてよ!」


「それはだめだ、いくら娘と言えど見せることは出来ん、発売まで我慢するんだなぁ」


「えぇ〜・・・あ、そうだ!パパ!私ね?またお友達が出来たの!」


「へぇ〜次はどんな子を・・・」


「男の子なんだけどね?すっごくゲームが上手なの!あの梨沙っちを軽々と倒したんだよ!」


「男・・・だと?」


「うん、男の子」


「だ、駄目だぞ!?パパはまだ許さんぞ彼氏なんぞ!」


「彼氏じゃないよ〜まだ」


「まだ!?」


「だってぇ、未来のことなんて誰にも分かんないし」


「まだってことはお前、気があるのか!?」


「いや?ないよ?・・・まだ」


「またまだっ!」


「もうパパ、そんなことばっかり言ってると美穂に嫌われますよ?」


「だってママ!美穂に彼氏が出来るかも知れないんだよ!?」


「別にいいじゃない、出来たら出来たで。美穂が選ぶ子なんだから悪い子じゃないでしょうし」


「うぅ・・・クソザコナメクジメンタルの俺にそんなこと言わないでくれよ・・・自分の娘が盗られるって想像するだけでしんどいのに・・・」


「盗られるって、そんな大袈裟な」


「まぁ、美穂の人を見る目は信用しているが・・・もし、もしだな、彼氏が出来たとしたら・・・すぅーっ・・・ふぅーっ・・・心の準備をだな?」


「分かった分かった、彼氏が出来たからってすぐ家に連れてきたりしないから」


「それは絶対にやめてくれ・・・心臓に悪い・・・」


「あはは!はいはい、分かったよ〜」


「ほら2人とも雑談はその辺にして、ご飯出来てるから食べちゃって」


「はぁい」


こうして赤城家の1日は終わる。

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