第3話「絵とプラモと・・・」

和真は放課後、部室へと向かった。ドアを開けるとそこには黄美子と沙苗がいた。


「あれ?他の奴らは?」


「あ〜あいつら来るの遅いんだよね。特に美穂はメンバー探しとかしてるから」


沙苗は携帯を弄りながらそう言った。すると梨沙がゲームを片手に部室へと入ってきた。


「ねぇ、ちょっと。そこに立たれてると邪魔なんだけど」


「あ、すまん。でもどこに座ればいいか分かんなくてさ」


「あたしが使ってるとこの隣にでも座れば?」


そう言って梨沙は定位置へと向かった。ずっと立ってる訳にもいかず、和真は渋々梨沙の隣の席へと座った。だが、そう言えばと昨日の話を思い出し、黄美子に話しかけた。


「そういえばさ、オリジナルのを描いてるんだろ?見せてくれないか?」


急に話しかけられた黄美子は飛び跳ねるように驚き、和真の方へと向いた。


「はぇっ!?あっ、えっと・・・その・・・う、うん・・・いいよ・・・」


黄美子は鞄からノートを取り出し、机の上に広げた。和真は立ち上がり、黄美子のノートを覗き込んだ。


「おぉ、これは・・・凄いな。プロみたいに本格的だ」


「そ、そんなことは・・・」


「いや、実際黄美子はプロだよ。親が絵描いて飯食ってる人だし」


「さ、沙苗ちゃん・・・」


「あ、ごめん、言っちゃだめだった?」


「そんなことはないけど・・・お父さんの絵と比べられるのは恥ずかしいから・・・」


「へぇ、親父さんが絵描きさんなのか凄いな」


「全然凄くないよ・・・私はまだまだだから・・・」


「それで、他にはどんなのがあるんだ?」


そう言われ、黄美子がページをめくると色々なキャラやオリジナルの機体の絵が出てきた。


「ほうほう、これはジャンク・ランスを元にしたやつだねぇ〜」


「うわぁっ!美穂ちゃん!?い、いつの間に・・・」


「うぉっ!お前いつからそこに・・・」


「美穂は神出鬼没だからね〜ウチはもう慣れたけど」


「私はどこにでもいてどこにでもいないという存在なのだ!どやぁ」


「んだよそれ・・・てか、この機体ってジャンク・ランスなのか?」


「そだよ〜?ほら、この辺の部分とかこの特徴的な角とか」


「う、うん。正解」


「ほらね?」


美穂はドヤ顔で胸を張った。


「これってさ、なんか名前とか考えてんの?」


「い、いや、考えてないよ・・・私描くのは好きだけど考えるのは苦手だから・・・」


「そうか、なんか勿体ないな」


「だよね〜だから私も名前付けてあげたいんだけど考えるの苦手なんだよね〜」


「まぁ、別にいいんじゃない?本人が付けたくないかもなんだし」


「わ、私はどっちでも・・・」


「なら無理に名付けなくてもいいんじゃないか?」


「それもそうだね!あっ、そういえば沙苗ちゃんに見せてもらった?」


「何を?」


「ほら、前にも言ったでしょ?沙苗ちゃんはプラモ作りの天才なんだって」


「天才は初耳だな」


「フルスクラッチとかで作ることもあるんだって〜」


「マジか」


「マジだよ〜、まぁ、めんどいからたまにしかしないけどね。黄美子の描いたやつとかフルスクラッチで作ったことあるし。丁度そのジャなんたらのやつあるよ、見る?」


沙苗は携帯を操作して画面を和真に見せた。そこには寸分違わぬ黄美子の描いた物と同じ物が作られていた。


「す、凄いな・・・天才ってのは冗談じゃなさそうだ」


「まぁ、私はあくまでも作るだけだけどね。色とかそういうのは全部兄貴に任せてるから」


「兄妹揃ってプラモが好きなのか?」


「ウチはスプラモ専門だけどね兄貴はプラモ全般って感じ。たまに兄貴に頼まれてプラモ作って小遣い稼いでる感じ」


「最初は小遣い稼ぎに始めたって感じか」


「そそ、そしたら何か物作りにハマっちゃってさ。特にスプラモの機体がウチの心にぶっ刺さっちゃって気付いたら部屋中スプラモだらけ」


「それはまた凄いな」


「両親はプラモにまったく興味無いから頭抱えてたよ、まぁ、勉強はちゃんとしてるし怒られないけどね」


「羨ましいな、俺は勉強してても母親が嫌がるからいつもヘッドホンしながらゲームしてるし・・・ガチャガチャうるさいって言われるから俺の部屋2階になったし」


「大変だねアンタん家」


「それもあってここで気楽にSPLASHが出来るのは正直ありがたい」


「うんうん、ここはゆる〜く気楽〜に出来るのがモットーだから!ま、と言ってもある程度はSPLASHについて知ってる人しか集めてないけどね、えへへ」


「そういえば赤城と渡辺さんと蒼羽さんは漫画繋がりって言ってたけど、どの漫画から繋がったんだ?」


「ん?あぁ、私達は同人誌で出会ったんだよ」


「同人誌?あぁ、絵をかける人がifの世界を描くっていう・・・」


「そそ!私達はいわゆる腐・・・」


「美穂ちゃん!」


「ふごっ!」


黄美子が美穂の口を塞ぎ、美穂が何かを言おうとモゴモゴしているところに律がやってきた。


「うぃ〜す・・・ってなにやってんの?」


「り、律ちゃん!律ちゃんも美穂ちゃんを止めて!」


「なになに?どういうこと?」


「いや、同人誌がって話題で・・・」


「あぁ、私達が腐女子って話?」


「律ちゃぁぁぁん!!!か、和真君!わ、私は違うからね!?私は普通のカップリングが・・・」


「腐女子ってなんだ?」


3人は固まり、何かを耳元で囁きあうと、深く頷きあった。


「和真君、世の中にはね?知らなくていいこともあるんだよ?」


美穂に肩をがっしり捕まれ、満面の笑みでそう言われた和真はただ頷くことしか出来なかった。


「お、おう・・・そうか」


女子の謎の結託力を見せつけられた和真であった。

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