#28 証明

 何故かあの双子が攻撃してこない。


 先程から、どこか遠い目をしている。



 それに、先程の発言はなんだ?

 本当なのか?



 そりゃ奇遇だな

 わたしたちもだよ

 だから死んでくれ

 わたしたちの存在を否定しないで



 この言葉だけではわからない。


 しかしなぜだか、先程までと打って変わって、彼らは悪い奴らには見えなくなっていた。



 ……俺を殺せなかったら、存在を否定される?

 先程の発言からはそう読み取れる。


 ……俺と同じなら。


 俺たちはお互いに、自分の存在を否定されないために戦っている?


 しかも、彼女たちの言葉が本心でないとすれば?



 俺はとっさに口を開いていた。



「お前らは、どうして俺と同じなんだ?」



 我ながら、言葉がたりなさすぎた。

 でも、そうとしか言えない。

 彼らからは俺と同じような感情が感じられる。



「………それは、俺たちが戦闘民族の子孫として生まれたからだ。」



 あの男、いやヴァルといったか。

 震える声でそう言った。


 声音や表情、先程の発言といい、気持ちいい過去じゃなさそうだ。


 それを見て、俺は一つのことを決めた。



「……あのな、俺〘勇者〙なんだ。」


「「!?」」



 双子は驚いている。

 そりゃそうだ。

 さっきまで殺そうとしてた相手が、急に自分が〘勇者〙だって言い出すんだから。



「信じられないだろうが聞いてくれ。

 ……俺は元々この世界の人間じゃない。

 前世で死んで、転生した。

 俺の経験した絶望は、その前世でのことだ。」



 ……本来、俺が転生してこの世界に来たことは言うべきではない。

〘勇者〙の件も。


 でも、何故かこの二人ならわかってくれるような気がしていた。



「俺は、できるならお前らと戦いたくない。

 殺される理由すら知らないからな。

 そして、さっきの発言は俺と同じようなつらい過去があるってことでいいか?」



 あの女、アズといったか。

 アズは少しつまらなさそうな顔をしながらも、こちらの話に耳を傾け、今は過去について話すかを迷っているようだ。

 うん、顔に出過ぎてる。


 俺の言葉を聞き、ヴァルは苦虫を噛み潰したような顔でこういった。



「……俺たちは、戦争孤児で、今のご主人に拾われた。

 ……でも、そいつは…………ご主人じゃなかったんだ。

 俺たちを…利用s……ゴホッ」


「ゆっくりでいいから落ち着いて話せ。

 もう話してくれるんだろ?

 なら俺はお前たちの味方だ。」

 


 ヴァルは大粒の涙を流しながら、すべてを語ってくれた。


 自分の才能が血筋によるものだと気づき、絶望したこと。

 ある男に、殺人兵器のように使役されるようになった経緯。


 そのどれもが、彼らにとって残酷なものであった。



「……で、なんで俺を殺しに来たんだ?」


「……さっき話した呪い、覚えてる?」



 あぁ、逆らえなくなるやつか。



「あぁ。それがどうした。」


「……その呪いを解くためなんだ。

 格上の相手を倒せば、解呪できるかもしれないって……。」


「……なるほどな。

 ご主人様とやらの命令だけじゃなく、そいつから逃げ出すためでもあったのか。」



 ふと思い出して近くの木を見ると、アズが落ち込んだように座り込んでいる。


 彼女もまた、被害者だ。













 ………よし!決めた。


 俺はこの双子の事情を全て把握し、今後の対応について考えた。

 もう戦う気はなさそうだし、かと言ってこのまま放置というのも寝覚めが悪くなるものだ。


 そんな彼らにできることはただ一つ。





「あのさ、俺の仲間にならないか?」





 この言葉は、同じ絶望を知るものとして、一番彼らにふさわしい「救い」であった。

















 ー★ー

 こんにちはてぃらです。


 3日も休んですいません!

 色々ありましたが、もう元気です!


 昨日と今日のPVが、サボったのもあって、激減してました。

 初投稿の日くらい落ちてました。


 そのせいで、体調も悪いのに、精神面でもやられかけました。


 


 あと、最近応援だったり、フォローしてくださる方は、たくさんいるんですけど、★が異様なくらいもらえないんです。

 なので、「まだレビューしてないよー」って方で、少しでも面白いと思っていただけたら、レビューしていただけるとありがたいです。


 では、また。

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