#27 偽の才能

 ご主人さまに事が全てバレた日から、僕たちの生活は急変した。


 『絶対服従』の呪いをかけられ、ご主人さまに逆らうことは不可能となった。


 もう、意志のない兵器みたいなもんだ。


 そして、俺たちはまるでそのために訓練をしていたとも言わんばかりに、殺しの仕事を強制された。


 もともと戦闘民族の子供だったことと、英才教育によって、そこらへんの実力者にも負けることはなかった。


 死なないために殺すんだ。




 わたしは復讐のチャンスを失った。


 呪いのせいで殺しの仕事を強制され、まるでもののように扱われた。


 本当はあの男への怒りしかなかったが、呪いの効果は絶大で、自分の意志ではどうしようもなかった。


 そして、いつかくる復讐のタイミングを待つために、わたしは『従順な兵器』を演じた。


 この腹の中で煮えたぎる怒りを隠して。




 殺しは気持ちのいいものではなかった。


 俺たちには直接関係のない赤の他人を殺す。


 しかし、途中からアズはご主人さまに従順になった。


 殺しを難なくこなし、ご主人さまに仕える。


 復讐はもうやめたのだろうか。


 ……俺は、この才能にしか意味がない。


 そう考えると、酷い絶望に襲われた。




 ご主人さまの信頼を取り戻した頃、私はヴァルに復讐についてもう一度話した。


 今度はバレないように対策してある。


 この期間で私は成長したのだ。


 あの男を殺すために。




 もう一度復讐についてはなされた。


 最初は乗り気じゃなかったが、ご主人さまは俺たちを見ていない。


 俺たちの才能しかいらないんだ。


 俺はあの人に従うだけで、存在を否定されているような感覚に陥る。


 なら、こんな生活が続くより、逆らって死のう。


 そう考え、アズに協力することを決めた。




 まずは、あいつを殺せるようになる。


 ただ返り討ちにされるのなら、今攻撃を仕掛ければ良い。


 私は死にに行くわけじゃない。


 ここから解放されるために戦うんだ。


 この怒りに囚われた空間から


 わたしたちは、「Ⅹ」という階級ならあいつを殺せるのではないかと考えた。


 そう考え、無心で殺しを続けた。




 双子だったこともあって、俺たちは相性が良かった。


 二人の才能が掛け合わされているような、そんな戦闘だ。


 でも、その才能は仮初め。


 そう考えると辛かったため、無心で復讐に向けて殺しを続けた。


 全てはこの空間から解放されたかったからだ。


 この絶望に囚われた空間から。




 その後、わたしたちは「Ⅹ」になった。


 そんなとき、「C」を倒すという任務がわたしたちに与えられた。


 「C」とは、規格外の力を持つもの。


 「C」に勝てたのなら、あいつにも勝てる。


 そう確信して、ヴァルとともに殺しへ向かった。




 やっとこのときが来た。


 この『偽の才能』でもできることがあるって証明してやる。


 「C」を殺し、俺の力を認めさせる。


 俺はずっと、俺自身を見てほしかったんだ。




 あいつに復讐するには、まずこの呪いをとかないといけない。


 


 「C」に勝ち、この呪いを解き、あいつを殺す。


 やっとこの怒りをぶつけられる。










「「このときのために、戦闘民族に生まれたのかもな」」

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