#23 Ⅹ²

「「お前が今から戦うのは「Ⅹ」ティーンだ。」」



 ……目の前の二人が「Ⅹ」!?

 確かスニアの言ってた階級では、一番上だったよな。


 全身の血の気が引いていくのがわかる。


 俺はまだ「Ⅹ」の実力を知らない。

 その無知が故に怖いのだ。



「でも、さっきの任務こなして昇格したばっかなんだけどね〜。」


「バカ!そういうのは言わないほうが良いんだよ!

 余裕ってもんがなくなるだろ!」


「………ヴァルってそういうのこだわるから、ご主人さまに怒られるんじゃない?」


「………余計なお世話だ、クソ女。」



 あたかも、俺がこの場にいないかのように言い合いを始める二人。


 ………本当に「Ⅹ」なのか?

 こいつら、俺と同じくらいの歳だよな?



「でもお前ら、俺を殺しに来たんだろ?

 そんなくっちゃべってていいのか?」



 すると、俺に気づいた二人が再度微笑みながらこちらを向く。



「あぁ、そうだった。

 で?俺たちに勝つんだったっけ?

 「C」ファイニストくん。」


「は?

 最初からそう言ってるし。

 あとなんだよ、「C」って。」


「お前は世界の脅威になるんだよ。

 アズと俺はただ派遣されただけ、それ以上は知らない。」


「まぁ、わたしたちはただ殺すだけだから!」



 そういうながら、アズと呼ばれる女がこちらに向かってきた。

 先程よりも遠かったためか、ヌンチャクを余裕を持って受け止められた。


 でも、こんな華奢な体ではありえないようなパワーだ。

 まるで何かに押しつぶされるような重みがある。


 しかし、そんな事を考えている場合じゃない。


 俺は、女と一緒に横に飛んだ。


 予想した通り、俺の元いた場所には男が放ったと思われる魔法が。



「はっ!

 一回見てんだよその攻撃は!」


「……だから何?」



 そう言うと、男は先程とはちがい、大量の氷の矢を作り出した。

 なんともつまらそうな顔をしながらも、ゆうに100は越えるであろう数の矢が、こちらに飛んでくる。



「っ!

 当たったらやばい!」



 なぜかは分からないが本能で感じる。


 実際、スピードはあるが、この程度の攻撃、一、二本ぐらいなら余裕で耐えられるだろう。


 でも、この矢はそれだけじゃない。


 おそらく、その後にもなにか効果がある。



「おぉ!よくわかったな。

 俺の魔法は、当たった敵を弱体化する効果があるからな。

 これが俺の【スキル】『弱体化』デバフだ。」



 やはりか。

 でも、その効果まではわからない。


 俺が今かけられている呪いのように、【ステータス】自体が下がるのか。

 それとも、状態異常として、凍ったりするのか。


 分からない以上、当たること=死であることも考えながら戦わなければいけない。



「そして、わたしの【スキル】『追撃』と『強靭』。

 『追撃』は自分より状態が悪い相手に強くなるの。

 『強靭』は私のそもそもの【ステータス】が上がる。

 だから、いまのあんたにはうってつけね!」


「は?

 俺今そんなに状況悪くないだろ。

 2対1とはいえ、善戦してる方じゃないか?」


「お前、もっと酷いハンデがあるだろ?」



 男が笑いながら言う。



「お前は呪われてる。

 それだけで十分不利だ。」



 ……忘れていた。

 たしかに、この呪いがなかったら、もっと【ステータス】が高かったかもしれないし。


『万能者・極』が使えないのはふつうに状況悪いわ。




「そしてもう一つ。

 もしヴァルの攻撃に当たれば、私の【スキル】の効果はより大きくなる。」


「なんたって、その名の通り弱体化するんだから、状態はもちろん悪化だ。」



 害悪コンボじゃねぇか!

 こんなの所見で喰らってたら終わってたんじゃないか?



「ふつう、戦力は足し算だよね?

 わたしたちは二人とも「Ⅹ」だから、「Ⅹ」+「Ⅹ」と思うんじゃない?」


「でも俺たちは違う。

 かけるんだよ。

 俺らのスキルがあれば、足しただけじゃ足りねぇ。」


「「さぁ、絶望しろ。

 掛け合わされば「C」にすら届くんだよ。」」




 何かが俺の中でプツンと切れたような感覚がした。











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