#22 「Ⅹ」

「さてと、ブラッドスライムも倒して、レベルも上がったし、スニアを呼びに行くか。」


 

 今回の戦闘は、もしブラッドスライムに俺が負けたとき、スニアの身に危険が及ぶと考え、少し離れた茂みに隠れるように言ってある。

 まぁ、少し離れたっていっても100メートルはあるけどな。


 いち早く先に進まないといけないが、流石にアイツを忘れるなんてほど、俺は薄情者じゃない。



「えーと、たしかこっちの方向だったよな。

 よしっ、呼びに行こ………っ!」



 全身、特に足に激痛が走った。

 こ、これはもしやあれか?


 痛みの正体を確かめるため、少し無理して走ってみる。


 やっぱりそうだ!

 これは、筋肉痛みたいな痛みだ!


 いくら若いといえ、痛みが来るの早すぎない!?


 死んだときの年齢のままなら、17歳だろう。

 でも、前世でもこんな早くなかったような?


 ………あぁ〜!思い出せねぇ。

 もういいや。


 これじゃあ動けねぇし、ちょっと休むか。








 少しして、俺は肝心なことを忘れていたのに気がついた。



「あ!俺スニアにポーションもらってた!」



 隠れる前に、「これだけは」と渡してきたものだ。

 彼女いわく、HPや体力、魔力までも回復できる万能ポーションらしい。


 サラッと渡してきたけど、絶対高いよな……これ。


 前に倒れたときにもらったのもこんなのだったし、どこで手に入れてるんだ?



「でも、これ飲まないと、多分俺このまま動けない。」



 あれから一切体力が回復した感覚はなかった。

 しかも、どんどん疲労感がえげつないものになっている。


 寝返りをうつのさえ、だるく感じてきた。



「…………ありがたくいただきます!」



 そういって、俺はポーションの蓋を開け、一気に口の中に流し込む。



 おぉ!あのときと同じような感覚!

 なんか回復してる気がする!


 実際、もうだるさはないしな。


 そして、5秒も経たないうちに、俺は全回復することができたのだった!


 ありがとうスニア、そしてグッジョブ!ポーション。



 あんなに【ステータス】が上がったので、全回復は難しいんじゃ……と思っていたが、その予想は大きく外れた。

 相当、いいポーションなのだろう。


 体がスムーズに動くし、【ステータス】が上がったのもわかりやすい!


 少し走ってみると、明らかにスピードが違う。

 まぁ、「俊敏」は+1000ぐらいされてたもんな。


 手を抜いてこのスピードなら、ギネスなんて楽勝だな。

 頑張れば車ぐらいは並走できそう。


 ………おっと、こんな素晴らしいポーションをくれたスニアと合流しないと!

 結構な時間一人にさせてるし、早く行こう。


 俺は、スニアがいると思われる方向に体を向けた。

 あそこから移動してないと良いんだが………探したくないし。



 その時だった。



 突然、何者かがこちらに向かって、ものすごいスピードで走ってくる。

 しかも、手にはヌンチャクのようなもの。


 俺は、咄嗟に剣を抜き、攻撃を受け止める。


 攻撃を受けて確信した。

 今の一撃は、確実に命を奪うものだった。



「あれ〜?やっぱ新しい武器だと扱いが難しいな〜。

 でも、不意打ち兼、時間稼ぎにしては上出来じゃない?

 ねぇ、。」



 何だこの女。

 急に襲いかかってきて。


 ………しかも、新しい武器でこの威力だと?

 その言い方だと、使い慣れてる武器だったらもっと強かったっていうのか?


 それに……時間稼ぎって言ったか?


 

 そんな事を考えていると、背後から何かを感じた。



 第六感とでも言うのだろうか。

 気配のような殺気のような。


 俺は、女を突き放し、身をひるがえす。


 俺が元いた地面に氷の刃のようなものが刺さる。



「あ?

 仕留めたと思ったんだけど。

 あと、時間稼ぎとか相手の前で言うなこのアホ女!

 大体、なんでなれない武器で殺しに来んだよ。

 ………まぁ一発目は外しちゃったけど、次は仕留めるよ。」



 木の上に、あの女と同じような服を着た男がいた。

 ………あそこから魔法を打ったのか。


 本当に気が付かなかった。

 いつの間にあんなところに登ったんだ?


 ………でも、本当に危なかった。

 今の攻撃は、相当な威力のものだ。


 我ながらよく気づいたもんだ。


 いや、それよりもだ。



「お前たちは何者だ?

 そして、殺しに来たと言ったか?

 その理由は何だ。」



 ここで怯えてはいけない。

 冷静にそして、少しでも相手の思惑を探れ!


 男が笑って答える。


「俺たち?

 俺たちは〘殺人者〙アサシン

 とある偉大な方のご命令でお前を殺しに来た。

 なんでも、お前みたいなやつが脅威になりうるらしいからな。」


「あ〜!またヴァルが喋ってる!

 ご主人さまに、「ヴァルが敵に情報流してました!」って言っちゃお!」


「はぁ!?ふざけんなよクソ女!

 どうせこれから死ぬ相手に何教えたって一緒だろ!」



 は?

 いまこいつ、これから死ぬやつって言ったよな?


 俺が死ぬ?

 こいつらに殺されて?


 しかもさっきからなんだこいつら。


 急に来て、お前は脅威になるから殺しますだ?


 なんかだんだん腹が立ってきた。



 こっちは第二の人生かけてんだよ!!

 簡単に殺されてたまるか!!!!!



 俺は剣を構え、臨戦態勢を取る。

 そして、相手二人を視界に収め、出方を伺う。



「……お!いいねぇ。

 私達とやるつもり?

 しかも、あの目見てよヴァル。

 勝つ気でいるみたいだよ、あいつ。」


「いくら「C」ファイニストといえど、舐められたもんだな俺達も。」



 二人は微笑みながら言う。



「「これからお前が戦うのは「Ⅹ」ティーンだ。」」











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