#21 途中経過
「え?倒したのか……?」
辺りにもうスライムは一体もいない。
”一体もいない”すなわち、これ以上分裂はしないということ。
よって、ブラッドスライムは全滅した。
「勝った!勝ったぞ。」
先程の意味不明の現象のことよりも、今は勝利を噛み締めたい。
こんなクソ雑魚ステータスでもできるんだ!
俺は、ついガッツポーズをしてしまう。
しかし、全身の疲労がすごく、肩を上げるのも精一杯だ。
約300体のブラッドスライムを倒した。
全力疾走や、【スキル】の使用による疲労が限界を超えていた。
あそこまで動けたことすら奇跡だったのかもしれない。
「………でも、ほんとにあの斬撃なんだったんだ?」
あのとき俺はもう動ける状態ではなかった。
それだけ体力の限界を迎えていたということ。
つまり、あの斬撃が新しく獲得した【スキル】だとするならば、それを発動する体力はもう残ってなかった。
なら、なぜあの極限状態であの攻撃ができたのか。
思い返しても、全くわからない。
[ 答 マスターは戦闘中に
また 戦闘中に『剣技』を発動していたため 私が 『斬撃』を『剣技』に合成しました
よって 元々発動していた『剣技』の一部となった『斬撃』を発動することができました ]
イフォの言ってたことが本当なら、辻褄が合う。
『剣技』は元々発動してたし、その効果の一部になったのなら、あのとき『斬撃』を発動できてもおかしくない。
イフォが即座に判断してやってくれたんだろう。
流石だな。
「なるほど、ありがとうイフォ」
[ お褒めに預かり光栄です
また 今回の戦闘で【ステータス】が大幅に上昇しました
確認しますか? ]
「お!まじか!
たしかにいっぱい倒したし、めっちゃ上がってるんじゃ……
早く見して!」
[ 了 ]
目の前に【ステータス】ボードが現れる。
【ステータス】
《天海奏向》Lv.16 ⇒ 47
HP 585 +582
攻撃力 691 +689
防御力 490 +487
魔力 843 +842
知力 984 +978
俊敏 1006 +1002
『絶対能力制限』により 大幅弱体化
【状態異常】『絶対能力制限』
【スキル】 『万能者・極』:状態 使用不可
『回避行動』『剣技』
………………ん?
えーと、見間違いかな。
俺は目をこすって、再度【ステータス】ボードに目を向ける。
…………うん、現実だった。
何この数値!?
いやいや、ちょっと待て!
レベル47!?
16からだぞ!?
あと、なんだこの上がり幅!
+1000以上があるってどういうことだよ!
しかも、呪いが消えたわけでもないのに………。
これで大幅弱体化って、呪い弱くない?
いや、実際呪いのせいで苦戦したし、そんなことはないんだろう。
でもおかしいだろこれは!
いくら300体倒したと言っても、上がりすぎ!
[ 今回の戦闘では 敵モンスターの個体数や そもそもの群れの大きさからも経験値を獲得しています
先程マスターが殲滅した群れは推定「B」ランクであったため 大幅に能力上昇しました ]
「B」!?
そりゃあんな苦戦するわけだ。
クソ雑魚【ステータス】でホントよく頑張ったな俺。
………しかし、こんだけレベルアップしたのはいいが、未だに体が動かない。
「イフォ、こんなにHPとか上がったのになんで体力回復しないんだ?」
[ 答 レベルアップ前の疲労度は レベルアップ後にリセットされません
あくまで 最大体力が増加しただけであり 体力回復の効果はありません ]
なるほど、上限値は上がったけど、体力自体は回復しないから休めよってことか。
………まぁ、一旦スニア呼ぶか。
何もできんし。
とにかく!レベルアップ最高!
一方その頃、森の入口に2つの人影が近づいていた。
「こんな森に
「ご主人さまが言ってたんだからいるんじゃない?」
女が答えるが、どこか適当なように聞こえる。
「……まぁ、ぱぱっと殺して帰るか。」
「あ!わたし、新しい武器の威力試したーい!」
それを聞き、男は微笑みながら言う。
「じゃあ早く行こうぜ。
「C」に勝って、俺らの実力を認めさせてやる。」
黒い服装の男女は森の中に消えていった。
しかし、迫りくる新たな危険に奏向が気付くわけもない。
呪いの効果によって。
また、それは彼らの思惑通りなのであった。
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