#13 制限

 気がつくと、額に冷たい感触があった。

 手を伸ばしてみると、濡れたタオルが置いてある。

 スニアか、あいつほんと優しいな。



 ……あぁ、そういえば、呪いが思ったよりエグくて、気失ったんだった。

 ダサいな俺。



『絶対能力制限』アビリティ リミットか。

 『万能者・極』のおかげで、勇者でいれたって言っても過言じゃないのに……。」



【ステータス】も下がるって言ってたな。

 ちょっと確かめてみるか。



「イフォ、【ステータス】見してくれ。」



[ 了 ]



 あの板、いや「ステータスボード」が目の前に出現する。




【ステータス】


《天海奏向》Lv.15


 HP 1

 攻撃力こうげきりょく 1

 防御力ぼうぎょりょく 1

 魔力まりょく 1

 知力ちりょく 1

 俊敏しゅんびん 1

 

『絶対能力制限』により 大幅弱体化



 【状態異常】『絶対能力制限』


 【スキル】 『万能者・極』:状態 使用不可






 ふぅ。

 また1からか。

 結構頑張って上げたんだけどな。


 今回の呪いのせいで、あの森で魔物ディスターバーを狩って、上げた【ステータス】がなかったことになってしまった。

 あと、やっぱ【スキル】も使用不可か。



 落ち着いているように見えるかもしれないが、かなりショックである。

 HPに関しては、250ぐらいはあったのに……。





 ん…?

 なんかおかしくないか?


『万能者・極』が使えないのに、なんでイフォと話せるんだ?


 イフォと話せるのは、『万能者・極』の効果だ。



[ 答 『万能者・極』の起動に失敗したため マスターの「魂」に 能力を移行させることで 対話機能の起動を 遂行しました

  無断で「魂」に干渉したことを 深くお詫びします ]



「魂」自体には呪いがかかってないってことなのか。

 まぁ、イフォが優秀なおかげで助かった。


 あと、俺が許可出さなくても、好きなようにしていいから。

 助かったよ、ありがとう。



[ 了 お褒めに預かり 光栄です ]



 あ、そうだ。

 この呪の解呪方法とかってわかるか?

 わかんなかったら、解析しといてほしんだけど。



[ 現在 『絶対能力制限』アビリティ リミットの解呪方法は不明です

  マスターの提案を承認

  『絶対能力制限』の解析を開始します 

  解析完了の予測ができませんので 進捗があれば その都度お伝えします ]



 あぁ、頼むよ。

 ホント優秀だな。



 ごめんあと一個だけ。

 この状態でも【ステータス】って上げられるのか?

 こんなクソ雑魚のままじゃどうしようもないし。



 少しでも上げられるなら、解呪前に上げておきたい。

 いつ何が起きるか、わからないからな。


 あと、この状態でもスライムとかなら勝てるだろう。

『身体強化』とか使えないけど。



[ 答 『絶対能力制限』アビリティ リミットは の【ステータス】を大幅弱体化します

  そのため その後の【ステータス】は制限されません

  この状態でも レベルを上げたり 新たな【スキル】を獲得したりすることも可能です ]



 なら、よかった。

 また地道に上げとくとしよう。


 解呪したあとのことも考えて、他の【スキル】とかもほしいしな。











 あのあと、今後の計画プランについて考えていると、スニアが部屋に帰ってきた。


 なにやら液体の入った小瓶を持っている。



「はい、これ回復ポーション。

 呪いには効果ないけど、動けるようにはなるわよ。」


「!……回復ポーション。

 ありがたいけど、もらっていいのか?

 高かったりするんじゃ……。」



 この体の痛みや、疲労が回復するなら今すぐに飲みたい。

 でも、このポーションがすごく貴重なものだったりしたら申し訳ない。



「奏向は命の恩人なのよ。

 これくらいさせて頂戴。

 あと、お金は訳あって気にしなくていいの。」


「なら、ありがたく頂戴する。」



 スニアからポーションを受け取り、一気に口に流し込む。


 どこか、サイダーのような味だ。

 でも、香りはミントのような、不思議な味がする。


 ポーションが、空になるまで飲み干すと、経験したことのない感覚が全身に走る。







 簡単に言うと、効果は絶大だった。


 全身の痛みや、疲労は消えた。

 本当はずっと何も食べていなかったため、お腹も空いていたが、それも満たされた。

 どこか、『身体強化』に似たような感覚だな。


 飲んだときの少し痺れる感覚は驚いたが、ここまでのものだとは。



「ありがとう。

 おかげで、もう普通に起き上がれるよ。

 多分全力疾走もできる。」


「良かったわ。

 でも無理は禁物よ。」


「ハイ。」



 先程まであんなに重かった体が、いとも簡単に起こせた。


 ずっと横になっていて、気づかなかったが、この部屋結構広かったんだな。


 ………それに、ここまで回復したならば、魔物狩りにいこうか。


【ステータス】を上げることが、今の俺には一番大事だ。



「スニア、俺レベル上げしてくる。」


「えっ!?」


「大丈夫、ちゃんとここに帰ってくるから。

 呪いのせいで下がった分を少しでも取り戻さないと。」


「……なら、私もついていくわ!

 近場の森にスライムくらいの魔物がたくさんいるからそこにいきましょう!」



 止められると思ったら、一緒に来てくれるみたいだ。

 やっぱいいやつだな。










 スニアの家は、ミンクの門のすぐ前だった。

 すぐ門を出たため、街の中は見れてない。


 まぁ、また今度じっくり回るとしよう。


 そして今、スニアの言ってた森に到着した。

 スライムくらいのがいっぱいいるって言ってたし、ここなら俺でも行けそうだな。



 ちなみに、魔法も『身体強化』も使えないため、スニアに頼んで、片手剣とナイフをもらった。

 こういうスタイルの戦いは初めてだから緊張するな。

 でも、こういう自力で頑張るスタイルも案外楽しそうだな!


 ワクワクしながら森の奥地に進む奏向であった。










 一方、奏向たちが訪れた森の『最深地』メガディープ


 そこには、無数の冒険者の亡骸の上に立つ一体の魔物ディスターバーがいた。









 ー★ー

 こんにちは、てぃらです。

 ここで第一章が終了となります。ここまで読んでくれた方ありがとうございます!

 第二章もぜひ読んでいただけるとありがたいです!


 では、また。

 



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