#5 記憶、そして出会い

「結構快適なもんだな。」


 俺、天海奏向あまみかなたは今、空を飛んでいる!

 ついに、魔法が使えるようになったんだ。

 次は……武器とか防具とかもありそうだし、探してみるか。

 宝箱とかあんのかな?


 ちなみに、『飛行ウィンド』の操作性は、結構練習したこともあって、もう完璧だ。

 頑張れば、車よりは早く走れそう。




 空を飛んでいて、気づいたことがある。

 それは、俺の転生前の記憶が断片的に消えていること。

 例えば、名前は覚えているが、年齢は覚えていない。

 前世でのゲームなどの知識、というか一般的(?)な知識はあるが、家族がいたかもわからないくらい、日常生活に関する記憶がない。

 どこに住んでいたのかも。

 どうやって生きてきたんだ俺。 


 簡単にまとめると、自分の正体に紐づく記憶が殆ど消えている。

 ……イフォ、なんでか分かるか?



[ 記憶の喪失は 転生時の影響によるものだと考えます ]



 なるほど、どうにかして思い出せない?



[ 答 何かしらのきっかけで 思い出せる可能性は ゼロでは ありません ]



 じゃあ、現時点ではどうしようもないか。

 地道に思い出していこう。

 最低限の知識はあるし、なんとかなるだろう。



 ……というか、お腹が空いて仕方がない。

 まだ、種一つ食っていない。

 何が食えるのか、わからんのよな。



[ 答 毒の有無や栄養分などは  『万能者・極』の能力である 『解析スコープ』を使用することで 判別が可能です ]



 うん、もっと早く言ってほしかった。

 また体力が切れたら、次は食材探しだな。







 しばらく飛んでいると、平野が見えてきた。

 森が終わってる!


「やった!森を抜けれたぞ!」


 喜んだのもつかの間。

 やっとのことで森と平野の境目を渡ろうとした瞬間、すぐ近くから悲鳴が聞こえた。



 下を見ると、人間が魔物ディスターバーに襲われている!

 しかも、あいつはたしか”アシッドスパイダー”ってやつだ!




 その時、俺は反射的に魔法を発動していた。

 

 手のひらに炎が生成され、浮遊する。


 その後、俺はアシッドスパイダーに向かってそれを発射する。



 ぼっ じゅぅぅぅぅぅぅぅわぁぁぁぁ



 見事命中し、跡形もなく燃え尽きる。

 俺は、すぐに襲われていた人のもとへ移動した。

 すると、木の陰でうずくまっている女性が一人。


「あの…、大丈夫でしたか?」


 女性はこちらに気づき、驚いたように顔を上げる。


 ここで一つ訂正しよう。

 この人、女性というよりかは、美少女って感じがする。

 アイスグレーの長髪をなびかせている。

 目は大きく、顔は小さい。


 ……簡単に言おう。絶世の美少女だ。



「あれ、アシッドスパイダーは?」


 美少女が尋ねてきた。


 そりゃそうか。

 目の目にいた敵が一瞬で消えたんだから。


「そいつ、もう倒したんで安心してください。」


「え?」


「ん?」


 なんか驚かれた。嘘だと思ってんのか?

 そんなに俺弱そうなの?

 …ちょっとショック。


「いや、アシッドスパイダーってB級の魔物よ!?」


 ん?B級?

 そんな階級みたいなのがあるのか?



[ 答 魔物には 個体の強さごとに S〜Fまでの 階級が設定されています

  スライムはF アシッドスパイダーはB級です ]



 それじゃあ、Bってことは上から3番目!?

 あいつ以外に強いのか?

 何もしてこないザコ敵だと思ってたんだが。

 個人的にはFランクだがね、アシッドスパイダーくん。


「まあ、でも倒せたんで……。」


 ぽかんとする美少女。

 そんなにすごいのか?

 まあいいや、それより初めての人間だ。

 仲良くしないと!


「俺は、天海奏向。よろしくな。奏向って呼んでくれ。」


「あの、えーと、スニアよ。奏向、さっきは助けてくれてありがとう。」


 スニアっていうのか、というかやっぱ日本人じゃなかった。



「珍しい名前ね。あと、どうしてこんな森にいたの?」


「あの………色々あってこの森から出たことがないんだ。俺さ、街に行きたいんだけど、どこにあるか知らない?」



 嘘だ、前半は。後半はホント。

 転生とか言っても信じてくれなさそうだし。



「……え!?この森から出たことがない!?

 ほんと何者なのあなた?

 えーと、街?

 街なら、この道を進んだ先にあるわよ。要塞都市ミンクが。」


「ミンクか…。というか要塞都市って言ってたけど入れるの?警備厳重だったりしないの?」


「大丈夫よ。

 奏向は命の恩人だもの、街まで案内するわ。」


「ありがとう!助かるよ。」



 俺は美少女スニアと共にミンクという街に行くことになった。

 やっと人間に会えたし、目的も達成した。

 どんなところか楽しみだ。











 スニアは驚いていた。


 中級の冒険者でも、半数以上生きて帰ってこれないこの森から出たことがないという。

 加えて、B級の魔物を簡単に倒す。

 普通はもう少し手こずる……いや、一撃はおかしい。

 17歳の自分と同じぐらいの歳の少年に、そんなことができるとはありえないと思う。


 …いや、もしかしてこの人が〘予言の英雄〙なのかもしれない。

 この世界を、で救ってくれる、そんな英雄なら……。





 ー★ー

 二話連続でこんにちはてぃらです。

 今回、出てきたスニア。

 初ヒロインとしてこれからも活躍していくと思うんですが、皆さん気になりませんでした?

「アイスグレー」ってどんな色だよ!?

 ってね。(なってないなら良いです。)

 多少は違いますが、参考として、この小説のキャッチコピーの色をこの色にしたので、ぜひ見てみてきださい。

 この色の理由までわかったあなた。

 近況ノートも見てくれて、考察もできるすごい人なんでしょう。


 ほんとそれだけ、では、また。

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